第19話 出来ることと出来ないこと

 「いや、今アールヴから聞いた知識をアンナちゃんに喋るってことだよ。別にそれなら問題ないだろ?それとも、それもダメなのか?」

 「んー、ダメかどうっかって言われると、多分そこまでは決まってねーから大丈夫だとは思うんだけどよ……。ただ、お前がそれをあのねーちゃんに伝えれると思ってんのか?」

 「今聞いた知識をそのまま伝えるだけなんだからできるだろ?難しいか?」

 「んー、まーできなくはねーと思うんだけどよ。俺なら多分、聞かねーと思うぞ。それに魔法が全く使えないお前が、ちょっとかじったこと言って無駄な争い事になる可能性ってのも考えられるしな」

 「そーだよな。それも考えられるか……どうせ一緒に来てくれって言っても……」

 「行く分けねーだろ!」


 アールヴはそう言うと、不貞腐れたように自分のベッドの中に入ってしまった。


 「ちなみに、アールヴ」

 「なんだよ。まだ話あんのか?さっさと、あのねーちゃんのとこに行って話をしてくればいいだろ!」

 「いや、なー。最初、アールヴが倒したモンスターいたよな?あの青い蛙」

 「あー、いたよ。それがなんだよ」

 「あいつを倒すときも、お前は属性の攻撃とか、魔法とか使ってたのか?」

 「全くつかってねーよ。って言うか、俺がそこまで本気だして戦うと色々とあるからな」

 「それなら、アンナちゃんも別に魔法を使えなくても関係ないんじゃないのか?」

 「お前と二人で、モンスターを狩りに行くってことか?」

 「え?二人で?」

 「そうだろ、勿論!最初にお前が蛙と戦ったときみたくなぁ。ただ、あん時、助けたのはお前が一人だったからだぞ」


 ミツルのアールヴ頼りの作戦などお見通しとばかりに彼はミツルを睨み付けながら言ってきた。


 「でも、この辺のモンスターって、それほど危なくないんだよね?」

 「あの蛙はな……」

 「あの蛙はって事は……他にも出るとか……?」

 「もちろん!昼なら狼に似たヤツとか出たりするときもあるな、あいつらは徒党を組んでくるし肉食だしな、ミツルとあのねーちゃんだったら良くて命からがら逃げれるかなってとこかな……あと夜は夜でまた面白いのもいたりするしな」

 

 アールヴがなんとも面白い風景を見るようにケラケラ笑いながら教えてくれる。

 その様にミツルはアールヴが人の死を司ることを生業とする死神であるというのを改めて認識してしまい、少し彼のことが怖くなってしまった。


 「じゃー、それなら」

 「それなら?」

 「アールヴは、俺になら属性を教えてくれたりはするんだよな?」

 「それがお前の言う有意義な人生ってのに繋がるんならな」

 「後、俺に魔法のてき……」

 「無い」


 アールヴはミツルの言葉に被せるように即答した。

 あまりにも迷いの無い的確な言葉だけに、ミツルはよほど自分に魔法の才能がないのだとショックの色を隠せずにいた。


 「後、俺がもし自分の属性を知った場合、10日の間にどのくらい強くなれる?」

 「んー?それは俺が教えるとってことか?」

 「教えるのは、ダメなの?」

 「いや、ダメってことねーと思うけど。そーじゃねーと思うんだよな」

 「そうじゃない?」

 「強くなるってことは、体鍛えたり、特別な技が使えるようになったりとか経験を積んだりとかそう言うものをお前は求めてるんだよな?そんなんを10日とかでやれって言うのはちょっと無理があるぞ……」

 「そうかもしれないけど……他に方法はないし……」

 「そんなに今日あったばっかの、あのねーちゃんが大切なのか?」

 「いや……、別に確かに今日会ったばかりで、大切なのかって聞かれたらそうじゃないんだけど……なんとなく見過ごせないんだよな、アンナちゃんのことが……」

 「見過ごせない?それってどういうことなんだよ……」

 「うん。なんとなくなんだけど……あの子の不器用なところが俺に似ているような気がするんだよね……」

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