死神と歩く異世界冒険録

第18話 二人の賭けだけに

　アンナとの話し合いを切り上げて、ミツルとアールヴの二人は自分達の部屋に戻ってきた。

　そして部屋の中で改めて彼女のお願いについて話し合おうと言うことになったのだが……

　「んー、想像以上に不味い状態だったな」

　部屋に戻ってくるなり、アールヴはそう連呼している。

　「そんなに不味い状態なの？」

　「あー、まさか彼処までダメダメだとは思わなかったぞ」

　「具体的には？」

　魔法と言うのをこれまで生きていて一度も身近に感じたことがないミツルは、アールヴの言っていたことが全く分からない。

　むしろ自分にはない力だけに、歓迎してもいいのではないかとミツルは考えていたくらいだ。

　「先ずなー、あのねーちゃんが使った魔法なんだけどよ。本当なら生物を殺傷する目的で放つ魔法なんだ。だけどよ…、もし仮にあれをお前に向けて放ったとするよな？そしたら、お前どうする？」

　ミツルは、先程の話し合いで彼女が見せてくれた火の玉、親指大くらいの可愛らしい火の玉を思い浮かべた。

　「えーっと……、こう両手でパチンと叩けないかと…」

　そう言いながら彼はアールヴの前に自身の揃えた両手を見せる。

　「だよなー。その想像は間違ってねーぞ。そもそも、あいつ最初から間違ってると思うんだ……」

　「えっ？最初からって事は魔法使いを志すってことが間違ってたってこと？」

　「いや、そこじゃねー。そこはいいんだよ。魔法使いになるのは間違ってた訳じゃねーよ。そもそも魔法使いの魔法なんて、魔力の適正ねーと絶対に使えるようにはならねーんだから」

　「えっと……、それならどこが……？」

　「おう、先ずこの世界にいる者は大体が火水風闇光と五つの属性を持つことになる」

　「属性？」

　「簡単に言うと、自分がこれまでどう言ったものに影響を受けてきたのかと言うことだ。ちなみに俺は一応、神だから全部の属性を持ってる！」

　ミツルは、アールヴの決めポーズに一瞬イラつきを覚えた。

　「この世界にいる者って事は、俺も何かの属性あるの？」

　「あるはずだぞ、後で調べてやる。それで、そこから魔力と言う特性を持つものが自分の属性と絡めて放つ手段の事を一般的には魔法と言うんだけどよ～。多分、あのねーちゃんは、属性を考えてねーな」

　「属性を考えてない？それって難しいの？」

　「んー……、属性をピンポイントで見つけるのは多少の努力は必要だぞ。でもよ、例えば一番初級の魔法をそれぞれの属性で手当たり次第に試してみる何て事は魔力に適正があるやつなら多分、誰でもできるぞ。んで、その中から一番自分にあった属性を選べばいいだけなんだけどよ。あのねーちゃんは、使えるのが一つだけって言ってたろ……」

　「あっ……なるほど……。でもそれなら、アールヴが調……」

　「それはルール違反だ！」

　ミツルの言葉に大きな声で遮るようにアールヴが言ってきた。

　「俺は、お前の人生を見るために来ただけだ。あいつに何かをするためじゃねー。もしなんかしちまったとしたら、それはルール違反ってことになるぞ」

　「ルール違反？」

　「おう、俺たちの賭けはその場で終了！んで、俺は天界に戻されるって訳だ」

　「えっ…、俺は？」

　「さーなー。どうなるんだろうな。輪廻転生とか生易しい結果にはならねーのは、分かるんだけどな……。そもそも誰かが興味を示してくれんのか？それすらもわかんねーぞ？」

　アールヴが軽く言っているが、言われている方のミツルは、たまったものではないと感じていた。

　少し前までは自殺しようとしていた男なのに…

　「とりあえず……アールヴが何もしないなら大丈夫なんだよね？」

　「あー。まー、大丈夫だな」

　「そっかー、それなら、今聞いた知識を俺が彼女に喋るってのは？」

　「お前が彼女に魔法の説明をするって？どうやって？」

　アールヴが目をめい一杯開き、ミツルに視線を向けてきた。