第17話 アンナのお願い
「はい、実は私の方からもお願いがあるんです」
「お願い?」
「はい。私、普段は教会運営の学校で色々と学んでいるんです」
「それって言うのは、文字とか計算とか、そういうこと?」
「はい。そう言った一般教養も学んでいたんですけど、そっちの方は無事に卒業できました。ですけど……実は実技試験の方が……」
「実技試験?」
「はい。あっ、ミツルさんは、そう言えばこの辺の方じゃないんですよね。失礼しました。この辺の学校は、普通に文字や計算と言った一般教養だけではなく、将来自分達が目指す職業に関する知識や技術と言ったものも教えてくれるんです。それで、その職業に関する方の事を実技科目と言われるんですけど……その実技科目の方が合格できなくて……その……」
ここでミツルは一度、無言になって考えてみた。
どうやら彼女は実技科目の合格が欲しくて、彼に何か協力をして欲しいと言うことなのだろう。
だが、当然なのだが、ミツルはこの世界では学生でもなんでもない。
考えてみるが、自身がどうすればよいのかサッパリ分からなかった。
「えーっと……、アンナちゃん、それで……その実技科目の合格に協力して欲しいってこと?」
「あーっ……、はい……」
「俺は学生でもなんでもないんだけど……」
「はい、知ってます……」
「えーっと、知ってますってね……。具体的には何を……?」
「はい。実は、ミツルさんとパーティを組みたいんです!」
「はいぃ?パーティ?」
「はい、そうです」
(あれ?アールヴ!このパーティって、どういうことだ?)
[多分なんだけど……、このねぇーちゃんが言う学校で教えてもらってる実技ってのが、戦闘系の職業なんじゃねーかな。そんで、昼間蛙の食ったろ?それでお前が冒険者とかなんじゃねーかと思ってるんだろ]
(えっ……見た目が子供のお前を連れてか?)
[まー、この世界じゃー中にはいるからな。事情があってガキの頃から戦わねーと行けねーやつがよ]
(なるほどねって……。これはどうしたらいいんだ?俺、彼女の事情とか、この世界の事情とか全く分からないんだけど……)
[んだよ、たっく。しょーがねーなー]
「お姉ちゃん、学校の試験でモンスターを倒すの?」
「そうだよ。アールヴ君」
「それならさぁー、なんで学校のみんなとパーティを組まないの?」
「誰も組んでくれなくて……」
「誰も組んでくれない?」
「うん。私、学校の実技科目では実は魔法使いを目指しているんです」
「それで魔法は何を使えるの?」
「うん…これ」
アンナは、そう一言言うと右の手のひらを上に向けて一言『火の玉魔法《ファイアーボール》と唱えた』
すると、手のひらの上に親指大の何とも可愛らしい火の玉が浮かんだ。
[ダメだな……こりゃ……]
(えっ……、どういうことだ?)
[全てを間違えてるってことだ]
「えーっと……、お姉ちゃん。使える魔法ってもしかしてこれだけ?」
「うん……」
アンナは一言そう言うと力なく頷いた。
「ちなみに試験っていつまでなのかな?」
「えーっと……、後10日くらいかな……」
「メンバーはお姉ちゃんだけ?」
「一応、もう一人はいるんだけど……」
「もしかして、僕とミツルおじちゃんとお姉ちゃんともう一人の四人でパーティを組んで10日以内にモンスターを倒すってこと?」
「うん……、アールヴ君。だめかなぁ~?」
「それ、学校は知ってるの?」
「一応、パーティを組んでくれる人が決まったら報告するようにとは言われてるから、学校に報告をすれば大丈夫だとは思う」
「うーん……そうなんだ~。ちょっとミツルおじちゃんと相談してきてもいいですか?」
「あー、うん。分かった。いいよ……」
アンナの一言は消え入りそうなほど弱々しいものだった。
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