第10話 ボッタクリか犯罪か
「えっ……実はって……何ですか?」
「おう、今入り口はあそこだって教えたよな?」
「はい」
「俺たちはここには初めて来る。その場合は、あそこに行って中で色々と手続きをして、その後書類にサインしたり面談をしたりして町の中に入るわけだ」
アールヴはそう言うと門番がいるであろう方角を指差す。
「あー、まー。詳しい内容とかはわからないですけど、それって危険人物とかは入れないという措置ですよね?はい。何となくですが、そう言ったのは理解できますよ」
「だよな。理解が早くて助かるぜぇ~」
「それで?実はって事は、なにか言ってないこともあるってことですよね?」
「あー、まー、たいしたことじゃねぇーんだけどよ。実は町に入る手続きをする際にはよー、通行料ってのが必要になるんだよ。大人は銀貨2枚、子供は銀貨1枚。今回俺とお前が町に入るには合計で銀貨3枚が必要になるってわけなんだ」
(アールヴって子供扱いなんだ……)
「へーなるほど、ってぇ……。銀貨ですか……?当然、アールヴが持ってるんですよね?」
「いやー、ところがよ!俺って、一応、神じゃん?死神とは言ってもよぉ!んで、いつもこの町来る時なんてよ、ちょちょいと力使って、消えたり何となく上手くやって切り抜けているわけよぉ~」
「えっ……?って事は……?」
「んー……、そこで相談なんだけどよ!お前、ちょいっと消えたり出来る特殊能力とかもってねぇーか?」
「持ってるわけ無いでしょ!何言ってんですか?」
「だよなぁ~」
「えっ……、だよなぁ~とか言ってますけど、何ですか……冗談ですよね?お金ちゃんと持ってますよね……?」
「金なんて持ってねぇーんだよ。ワリィ!」
「ちょちょちょっと!『ワリィ!』じゃないでしょ!『ワリィ』じゃ!どうせ、お金持ってないと手続きなんて出来ないんでしょ!せっかく町の手前まで来たってのにこっからどうしろって言うんですか?今日もまた野宿ですか?それも町を見ながら?どんだけアホなんですか?俺が金を持ってるとでも思ってるんですか?持ってるわけ無いでしょ~!!なんせ、こっちは昨日、この世界に来たばっかなんですからね!!」
「ちょっと待て!充!まー、落ち着け!言ったろ?たいしたことじゃねぇーってよ」
もの凄い勢いで捲し立ててくる充の勢いに面食らってしまったのだろうか、アールヴは冷静になれと言ってきた。
「と言うことは、なにか策があるってことですか??」
「おう!そんでな、この町は結構、色んな方面から俺たちみてぇな訳あり連中を受け入れてくれる町なんだわ」
「そんな事言っても、金がないと動きようがないですよね」
「そんで、こっから少し俺に時間をくんねぇーか?」
「時間ですか?何のためにです?」
「おう。昨日よ、何とか激闘の末に蛙を倒して皮とか肉とかをバラして持ってきたよな?んで、皮の方を俺に預けてくんねぇーか?」
「えっ……、皮だけですか?それを預けて……」
「俺一人で町に来るときはちょいちょいと上手く力使って町に入るって言ったよな?だからよ、俺に皮を預けてくれればよ、先にちょいっと入ってよ。その皮を金に変えて、その金で手続きできるっつー寸法なんだわ」
「えっ……、そんな事やって大丈夫なんですか?」
「ん?見つかんなきゃ大丈夫だろ!」
「えっ…見つかんなきゃってことは違反ってことじゃないですか?」
「まー、見つかったら違反だな」
「じゃー、ダメでしょ……他に方法無いんですか?」
「えっ……、だから見つからないように、ちょちょいと上手くやるっつってんだけど……」
充はアールヴと出会って二日しかたっていないが、ここまで来るまでにも既に何度か彼の失敗を目の当たりにしていた。
お陰で充の彼に対しての信用度は完全に0になっている。
「いや、なんか新たなやっかいごとを巻き込む予感しかしないんですけど……」
「んだよ…。昨日会ったばっかだってのに、もう少し信用してくれてもいいんじゃねぇーか?でもよ、他にどうすんだ?一応だけどよぉー、俺らみてぇーな文無しも町に訪問するのを見越して、専用の商人とかもいるんだけどよぉ…あいつらじゃちょっとな……」
「えっ?専用の商人ですか?」
「おう、町の方でも金が用意できないのを見越して商人を置いてるんだわ。そんで文無しは、そいつから金を工面してくれって感じなんだわ」
「へー、じゃー。別に黙って町に入って金を工面するのではなくて、その方たちに蛙の皮を売ってお金を工面すればいい話なのでは?」
「そーなんだけどよ。あいつらはダメなんだよな。まともな商売をする気がねぇーって言うのかよ……」
「え?まともな商売をする気がない?どういうことですか?」
「簡単に言えば、ボッタクリってことだな」
「ボッタクリってことは…それって俺たちみたいな者からボッタクリってことですか?」
「そっ!」
「『そっ』て、そんな簡単に言いますけど……なんでそんな……」
「あー、最初は真面目に商売をしていたのかもしんねぇーんだけどよ。多分、細かい決まりごととかもねーんだろーな。時間がたつ内に門番の方も取り込んでよぉ。今じゃ自分達の好きなように差定額を上下させてるってわけだわ」
「それって、どのくらいボラれるんですか?」
「んー、多分、中で換金したとすると入場料+数日の宿代くらいにはなるんじゃねーかな。んで、門の商人で換金したとすると皮の他に魚とか草とか全部かき集めて入場料に毛が生えるくらいじゃねぇーかな」
ここで充は蛙の皮が意外にも金になると言う事実に驚きを隠せない表情をした。
「ちょっ……、え?そんなに違うんですか?いくらなんでも、それはあんまりでしょ……それだと商人って言うよりは追い剥ぎって言った方が……」
「だろ?だからよ!俺が先にちょちょいと行って上手くやるって言ってんだよ」
「いや。でも、それって違反ですよね?」
「だからよ。見つかんなきゃいいんだってばよぉ!」
「んー、見つからなきゃって言いますけど……」
ここでこれ以上話し合いを続けてもお互いに平行線になると悟った充は、無駄な議論をしたくないと思い、無言で座り込んでしまった。
「おい、お前なんだよ。座り込んだって状況が良くなったりはしねぇーっつーの」
「それは分かりますけどね。ちなみにアールヴのコッソリと町に行って換金してくるって行動ですけど実際やるとしたら、どのくらいの時間がかかるんですか?」
「ん?時間?よくわかんねーけど、そんなかかんねーと思うぞ」
「それならギリギリまで待ってもいいと思いません?」
「んー?あー、まー。別にまつっつーんなら待っても良いけどよ、それまでどうすんだよ」
「とりあえず昼飯にしません?朝食食べてから、ずっと歩いてここまで来たら言い合いになってしまいましたし……それで昼御飯食べたら他に方法がないか探してみようかなと思うんですけど……」
「あー…、飯はいいけどもよぉー。他に方法を探すっつーのはよ、どーなんだろうなぁ……」
他に方法を探したいと言い出した充の考えに、アールヴは首を縦には振らないが、とりあえず昼飯と言う考えには賛成のようで、彼は火をおこすのに最適な場所を探し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます