第41話

それからひと月後、一通の差出人のない手紙が届いた。


『ご無沙汰しております。

その節は大変お世話になりました。


おかげさまで私たちは皆元気に過ごしています。


もう、日本では、私たちのことを話題にする人はほとんど居なくなっていますね。

でも、私たちの志は何も変わっていません。


いつか、この日本を、そして世界を、子どもたちが安心して住める場所にするために活動を続けていきます。


くれぐれもお身体ご自愛ください。


かしこ"』


丁寧な大人びた文字

間違いなく真知子だ。


「皆元気に……」


信二や達也、そしてヒカルも無事ということなのか。

僕は震える手で手紙を持ちながら涙で文字がかすんでいた。


「よかった」


心の底から絞り出した声だった。


宛名さえなかった封書だったが、唯一消印がかすかに残っていた。


「十三……」


確かに十三と読める。

郵便局名で十三とつく場所がないか検索する。

いくつか十三とつく郵便局があった。

北海道、新潟、大阪…

もう一度消印をよく見ると、十三郵便……となっている。

この中で十三郵便局というのは青森の五所川原市にある郵便局だけだった。


僕はその手紙を手に取ると、リュックに少しの着替えを詰め、上着を持って家を飛び出していた。


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その日は春だというのに 美月 純 @arumaziro0808

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