第2話ツッコミどころ満載の異世界転移:後編

「今なんて?」


恐らく高校生達全員が頭に疑問符を現在進行形で浮かべているだろう。


「…ですから、その…」


「イチゴガラ・パンツ・オイシー国の姫、イチゴガラ・パンツ、サイコウカヨ…あだ名はカヨ…ぷっ」


「なっ、何がおかしい!言うんだ!いえ!」


アストレアは目を逸らし、高校生達は腹を抱え、カヨは顔を真っ赤にしながら涙目になる。


「くっ…なんでいつも私はこうなのよ…この間呼んだ勇者にも笑われたし、帰っていった奴らも最後にクスって…言って…」


「しかし、なんでそんな罰ゲームみたいな名前なんだ?この国」


「初代国王が死んでも譲らなかったという記録が残っていますので恐らくそれかと」


「初代国王戦犯!超戦犯!」


「な…なにを!これは初代国王殿下の…いだい…な趣味であらせられるぞ!」


「偉大を小さく自信なさげに呼んだ時点で察した。もういい、もういいんだ…」


自信なさげな己を隠すかのように、声を張り上げて言うアストレアと、それを慈愛あふれる目で見つめる高校生達。


「だ、大丈夫だ!こないだだって取引先にちょっとばかし舐められたり、周辺の国と軋轢をちょっと生じただけだし、被害は何一つとしてない!」


「これがキラキラネームを持って生まれてきた者の運命か…」


この場合は国だが。えんえんと泣き始めたカヨに、女子生徒の内の一人が頭を優しく撫でてやる。


カヨが泣き始めてから小一時間後。カヨはハンカチで涙を拭き終えると立ち上がった。


「ありがとう…さすがこの国を救済するであろう勇者ね「拒否権どこー?」。おかげで立ち直れたわ…」


「ちょっと聞きたいことあるんだけどお」


「何かしら、勇者の一員よ「拒否権って知ってますー?」。私が答えられる範囲ならなんでも答えてあげるわよ?」


「ならあ、さっきの『この間呼んだ勇者』と『帰っていった奴ら』についてお聞かせ願いたいわあ」


「………」


「帰る手段、本当はあるんじゃないのお?」


がくりと膝を折り、床に手をつくカヨ。


「返してほしいんだけどなー」


「…嘘をついてごめんなさい…確かに日本に返す手段はあるわ…でも…お願いします…この国を…救ってください…!」


そこでカヨは膝を床につけ、頭を下げた。


その場に居た全員に衝撃が走る。何しろ一国の核となる存在の子が頭を下げているのだ。決して無下にはできない。


それを一見し、高校生達はお互いをみやい…クラスの委員長が前に出て、カヨに手を差し伸べる。


「私たちでよければ、力を貸すよ。その…勇者?アニメとかゲームとかよく知らないからよくわからないけれど、協力するよ!」


「ああああああ有難うございまふううううううううう」


ダラダラと目から滝のような涙を流すカヨ。


「じゃあ、防具や武器を手配して…あと、私と契約してほしいの。そうじゃないと魔法を使えないから」


「へー、そうなんだー!」


クラスのオタク達の脳裏にQから始まる珍生物が一瞬光る。


「代わりに願いを叶えてあげる。どんな願いだっていいわ。こういう時なんて言うんだっけ…私と契約して魔法使いになってくれないかしら!」


「「「「お断りします」」」」


「なんで!?」


オタク達の説得に小一時間かかった。









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このクレイジーな勇者達を誰か止めてくれ 朔間タツキ @sakusaku_tacchan

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