このクレイジーな勇者達を誰か止めてくれ
朔間タツキ
第1話 ツッコミどころ満載の異世界転移:前編
「貴方達ジャポンの…こうこうせー?をこちら世界に召喚させて頂いたカヨと申しますわ。この国の姫として歓迎いたします…勇者様方一行」
地球に生を受け、中流家庭で育ち、普通の高校に入り、授業を受けていた彼ら莫迦
高校三年A組に在籍している生徒12名は異世界に呼び出されていた。
まさか異世界に呼び出されるとは思わなかったであろう彼らは(思っていたらアニメや漫画の見過ぎだと思うが)召喚の儀式を行った城内をキョロキョロと眺めたり、近衛兵が持っている武器に驚いたりとそれぞれ思い思いのリアクションを取っていた。
「困惑されるのも無理はないでしょう…まずは呼ばせていただいた理由を説明いたしますわ」
カヨがパチンと指を鳴らすとガラガラと大きな地図が天井から勢いよく降りてきた。勢いが良すぎてカヨのスカートが大々的に捲れたのだが、それに気付かずカヨは説明を始める。
簡単に纏めると、
・魔王がこの国に攻め込んできて、戦闘に秀でた優秀な配下が 失われてしまった。
・現在は傭兵を雇ってやり繰りしているが、いつ戦線が崩れるかわからない。
・そこで勇者の才能を持つという異世界人を呼ぶことにした。
・此方の都合で読んだ上厚かましい願いだが、どうにかこの国を救ってほしい。
・元の世界へ帰る道具は魔王軍に奪われてしまっているので、倒せば日本に帰ることが可能である。
要約するとこのような感じの内容のことを約八時間に渡って説明するカヨ。
「ところで…貴方達の名前を教えてくださいませんか?姓でいいですよ」
床にうずくまり、カヨが説明し始めたあたりから寝ていた高校生達が一斉に目を覚まし、慌てて立ち上がる。
「鈴木です!」
「鈴記だよ!」
「鐸木〜ん」
「寿々木」
「…鈴木」
「寿木だらー」
「涼木よお」
「錫器ちゃんだぜベイベイ」
「鈴木二号です」
「上に同じく鈴木三号です」
「僕も鈴木」
「あ、私も鈴木」
「あああああすずき多すぎいいいい大家族かなんかかよおおおおお」
まさかクラス全員の苗字の読み方がすずきであると思わなかったカヨは頭を抱える。
「ご、御免なさい…取り乱したわ、名前を聞いてもよろしくて?」
「美鈴!」
「美玲です」
「三日月」
「ミカねえ」
「伊津佳です」
「帝だ」
「ミオ〜ん」
「モン。モンさんって呼ばれてるのさ」
「ミッシェル」
「大輔。人呼んで大聖堂」
「未魔」
「ミソギ」
「どこぞの大聖堂と希望の花を除けば全員似たような名前だわああああ」
名前まで似ているとは。
カヨは頭を抱えながら思わず床に寝そべり、そのイチゴ柄のぱんつを思いっきり見せながらゴロゴロと寝転がる。
「あのお、ぱんつ思いっきり見せびらかしてるわよお」
「はっ…!?」
そう指摘され、ぱんつを隠すカヨ。
「おい近衛兵!何故教えんかった貴様らあ!!!」
「姫さま、申し訳ありません。何しろ大々的に見えてしまっていたので、むしろ自分から見せにいっているのかと…」
「んなわけあるかあ!」
「大丈夫だ!全然エロくなかった!」
「お黙りなさい小童あ!」
高校生達からの謎のフォローを切って捨てると、カヨは顔を真っ赤にしてうずくまる。
「ほらあ…あたしだってえ…ぱんつ見られたら恥ずかしいなあ…」
「「「「ふーん」」」」
「ふーん!?」
恐らくその場に居た全員がそうなんだ〜的に雑に流すと、カヨはショックを受けたようで、叱責を始めようと立ち上がる。
そのめんどくさそうな事になりそうなオーラを感じたのか、一人の女子生徒がカヨに尋ねる。
「はーい。カヨちゃんのフルネームとこの国の名前を教えてほしいな〜。まだ聞いてないし」
それはその女子生徒にとってだるい事になりそうな叱責を回避するくらいの気持ちで聞いてみた質問だったのだが、カヨにとってそれは魔の質問だった。何故なら…
「聞きたい…ですか?」
「なっ…アストレア…!」
物陰から出てきたのは、メイド服を着た女性だった。
「姫さま、よく考えてください。彼らはこれからこの国を守り
る勇者となるのです「拒否権なしー?」。先に話しておいた方がよろしいかと」
「…そう、そうね…そうよね…」
そこでカヨは話を区切り、意を決したように深呼吸をする。
一体どんな深刻な話がその口から話されるのか…いや名前程度でそんな深刻な雰囲気を醸し出す必要はあるのか…。
高校生達の意識が一点に集中した三分後、カヨがモジモジとした様子でアストレアと呼ばれるお付きのメイドに「やっぱり代わりに話して」と頼んだ。
集中力が尽きてきた高校生達の前にアストレアが仁王立ちする。
アストレアはひとつ咳払いして…
「この国の誉ある名前は…イチゴガラ・パンツ・オイシー!」
「そして我国の姫君であらせられるイチゴ・パンツ・サイコウカヨ様!」
…と、キラキラネーム同然の国とその姫君の名前を堂々と告白した。
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