番外編〜佐藤くんの視線の先

俺は佐藤量汰。好きな子は同じクラスの席が近い女の子。そんなどこにでもいそうな普通なやつだ。……最近、恋を自覚したばかりなニブさは少し、普通じゃないのかな。






 そんな俺は最近、視線を感じるというか、目線?誰かに見られてる感が半端ないんだ。うぬぼれとかじゃないんだ。だって、好きな子が俺を見てるんだよ?気になってこっちもその視線を確認してしまうんだ。……あれ、やっぱうぬぼれなのこれ?


「佐藤」


「なんだい鈴木」


「おまえ、すっごい土岐原に見られてんな」


って、斜め後ろの鈴木からいわれたんだ。鈴木は、同じクラスになったときから仲がいい。同じクラスになったときから、横の土岐原を見ていたそうだ。何故なら、


「現国になればいばちゃんばっか見てたけど、それ以外はおまえばっか見てる」


「それは土岐原が真面目だし、俺前だからだろう」


 え、俺のうぬぼれ肯定派?でも、俺ばっか見てるって考えたら―――うん、俺うぬぼれそうだよ。だからそういうことでいいだろ?実際土岐原、真面目だし。


「違うね」


 ちっちっ、て指をふって鈴木がいうには、土岐原はずっと俺を見ているらしい。何が違うんだよ、と思いながら聞けば、授業中でなくてもいろんなときに見ているらしい。彼女の視線を俺が占めている?そう思ったときには、俺うぬぼれていいのかなって思った。


 だって、いつのまにか好きになってた女の子が、俺を見てるっていうんだからさ。俺、うぬぼれていい?






―――その日、いつものように夕日が目にはいって窓を見た。この席、夕日がすごくはいってくるんだ。眩しくてかなわないんだ。そして、俺はいつものように窓ガラスに土岐原が映っているのを見たんだ。……最近、先生が黒板に板書してるときにこうするのがクセになりつつあるんだ。


―――今日も何気に見ていると、土岐原はガラス越しに、こっちを見ていた。えっ、何でって、思わずガラス越しに土岐原を見つめてしまって、


「佐藤量汰、土岐原糸子」




―――結果、ふたりして廊下に出されて。土岐原なに見てたのと気になって仕方がなかった。まさか、俺以外の誰かを見てるの?まさか鈴木?俺、うぬぼれすぎたバツが当たっちゃったりした?まさか?


 そう不安になりながら、俺は土岐原を見た。


 …………俺、もう一度うぬぼれていいかな。土岐原がこっちを見る顔、真っ赤なんだ。可愛いな、真っ赤な土岐原。好きでもない男に、こんな照れたみたいな可愛い顔、さらさないよね?そして………俺も、もちろん真っ赤。土岐原、そんな顔をしちゃったらさ俺、うぬぼれちゃうよ?


「佐藤くん」


 真っ赤な土岐原、真っ赤な俺。俺、本当にうぬぼれていい?

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