1-9.難しい言葉で書けない

 ありがたいことに、時々私の作品にも感想を頂戴することがある。

 その中でも比較的多いのが、「難しい言葉を使わずに表現している」や「言葉がわかりやすい」、「小難しい言葉を使わないのに伝わる」などといった、“言葉の難易度”の話だ。


 例えば最近も、こちらのレビューで「すらすら読める」というコメントを頂いた。


‪◯頂いたレビュー

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921193056/reviews/1177354054921339187


 その、すらすら読めるお話はこちら。

「この夏の、延長線上で」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921193056

 本作は特にわかりやすい言葉を選び、水を飲むような読み応えを目指したのだが、他作品でも、私が使う言葉の難易度は、だいたいこんな感じだ。


 平べったく言うと、私はあまり語彙力が高い方ではない。「看過出来ない」より「見過ごせない」の方がピンと来るし、「朗々と話す」より「はっきり話す」の方が想像しやすい。「思案する」より「悩む」し、「浅慮」というよりは「考えが浅い」。

 要は、普段から私は、難しい言葉を使って物事を捉えてこなかった。もしかしたら、今まで読んできた作品も、そういう雰囲気のものが多かったのかもしれない。


 難しい言葉遣いは、なんだかかっこよさそうだ。それこそ、文章を書いた人が頭良さそうに見えて、洗練されているように思える。

 だが、書き手が本当に表現したいことは、ちゃんと読み手に伝わっているんだろうか?


 私はごく普通の人間だ。語彙力は高い方ではないけれど、自分が使い慣れている言葉は、世の中の人にとっても同じくらいの感覚だろうと思っている。

 だから、「わざわざ難しい言葉を使うよりも、自分にとって使い慣れている言葉で物事を表現した方が、たくさんの読み手に伝わるんじゃないか」と強く感じている。そして、「自分が表現したいことを、表現出来る」とも。


 もちろん、堅苦しくて難しい言い回しをする登場人物が必要であれば、それにあった言葉を選ぶ。作中の雰囲気に適していれば、理解しにくい表現を使う。

 類語辞典も一応手元にあるので、あまりにも表現が足りなくなってきたら辞典を引いて、小難しい言葉を選ぶこともある。

 ただ、むやみやたらに難しい言葉を使いたいとは思わない。意味がないなら使いたくない。


 私は、出来る限り読み手に「語彙力」ではなく「想像力」で自分のお話を読んで欲しい。自分が賢く思われる必要もない。私の存在など忘れて、お話の世界に飛び込んで欲しい。

 だからこそ、誰が読んでもわかる言葉で、まだ誰も見た方がない世界を表現したい。簡単な言葉遣いの裏側で、そんなことを思っている。

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