3-4.夢小説はシンプルさが大事【中編】

 ここからは、夢小説で二次創作されるキャラクター・人物を「既存キャラ」、相手と恋愛関係になる人物を「夢主」として、あれこれ書き進めていこうと思う。



 夢小説は、とにかくシンプルさが重要だ。なぜなら、夢主という「誰にとっても不確定な存在」と既存キャラを組み合わせて、物語を進行させないといけないからだ。

 平たく言うと、夢小説で重要なのは既存キャラであり、読み手が求めるのは「好きな既存キャラの魅力を思う存分味わうこと」だ。だから、それに直結しない表現は最小限に留めた方がいい。


 だからこそ、夢小説にはシンプルさが求められる。文章の全てを「既存キャラの魅力表現」に全振りすること。これが、夢小説で必要な心待ちになる。


 本エッセイで既に書いた( https://kakuyomu.jp/works/1177354054892430828/episodes/1177354054892434175 )通り、私は、二次創作における「表現したいこと」と「表現したこと」の関係は、イコールだと考えている。夢小説は、これを突き詰めたものだ。

 とにかく、「既存キャラのこんなところが見たい!」という姿を表現すること。これが、夢小説を書く際の楽しみでもあり、大変なところでもある。


 とは言え、夢小説を書く際には、色んな良くない状況に陥りやすい。

 陥るのは仕方のないことなので、自覚した上で、最終的に物語を以下の観点で調整していく必要がある。



【1.夢主はシンプルか?】

 夢主というのは、夢小説における(ほぼ)唯一の書き手にとってのオリジナルキャラクターだ。そのため、書き手からすると愛着が湧きやすく、うっかり属性を盛り込み過ぎたり、個性豊かな性格にしたり、物語での存在感を出し過ぎたりしてしまう。


 しかし、夢小説を読む人が求めるのはそこではない。読み手はあくまでも、既存キャラの魅力を味わいたくて来ている。乱暴な言い方をすれば、「夢主は既存キャラの良さを引き出すこと以外はしないでくれ」と思っているだろう。


 だから、夢主についてはとにかくシンプルでわかりやすい、影を薄くした無個性な方が夢小説としては都合がいい。

 

 こうやって考えてみればわかりやすい。


◯夢主は個性的すぎないか?

 常に突飛な行動をする夢主の場合、それに合わせて動く既存キャラの姿は、読み手にとって「不自然」に見えてしまう。夢主の動きで気が散るのは、読み手にとって嬉しいことではない。

 見た目や名前についても、あまり言及しない方が良い場合もある。その方が、夢主を読み手が好きに想像できるし、最悪夢主のことを忘れて読み進めてくれる。


◯既存キャラと夢主の関係性はわかりやすいか?

 学校の先輩後輩、先生と生徒、上司と部下、友達、幼馴染……。

 わかりやすい関係の中で、物語を進めていく方が、読み手にとってはありがたい。なぜなら、関係性の理解にかける労力を、既存キャラの魅力堪能に費やせるからだ。

 関係がシンプルな設定であればあるほど、「夢主は既存キャラの◯◯」ということだけをわかっていればいいので、夢主に気を取られずに話を読み進められる。


 また、単純なことだが、わかりやすい関係性の方が、既存キャラの魅力を引き出しやすい。例えば「頼れる先輩としての姿」や「健気に応援してくれる幼馴染」というのは、誰もがその魅力を理解できる。

 これが、もし複雑な人間関係のもとに成り立つ間柄だったとしたら。まずはその関係性の理解に頭を(そして文字数を)使わなければならず、結構厄介だ。

 だからこそ、既存キャラと夢主の関係は、わかりやすい方がいい。



 夢主については、上記について特に意識をしておくと良いのでは、と実際に夢小説を書かながら考えていた。


 では、肝心の物語はどう考えたらいいか?

 それについては、【後編】( https://kakuyomu.jp/works/1177354054892430828/episodes/1177354054922100061 )にて書き進めたいと思う。


 



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