第39話 エピローグ

 4時間目の授業終了のチャイムが鳴った。

 影見鏡花はカバンから自分の弁当を取り出した。


「影見さん」


 隣の席の少女が話しかけて来た。

 その少女の周りには3人の女生徒がいる。


「もう5月24日を過ぎたから、話しかけてもいいんだよね?」


 少女は明るくそう言った。

 彼女は3年D組の学級委員長・京橋舞子だ。


「ええ、今まで協力ありがとう。誰とも話さないのに、時々独り言を言っていて、気味悪かったでしょう?」


 鏡花も明るく、そう答えた。


「いやぁ~、そんな事……ある、かな?」


 京橋は苦笑いしながら答えた。


「最初はちょっと面食らったからね。担任の堂明院先生自体が『今度来る転校生は、ある問題を抱えているから、彼女が指定する日まで、誰も話しかけないように』なんて言い出すからね。普通は『みんなで仲良くするように』って言うもんでしょ」


 鏡花は頭を下げた。


「ごめんなさい。色々と事情があって。でもそれももう、全部終わったんで、これからは仲良くして下さい」


 京橋は慌てて言った。


「いやいや、別にそんな風に改まらないで!私達も影見さんと話したいと思っていたんだから。和美なんて『影見さんって堂々と授業をサボれていいよね。どうしてだろ』とか言ってたんだから!」


 和美と言われた少女も慌てて言った。


「え、ヤダ、私、悪い意味で言ってないから!ただ影見さんって美人だけど、不思議な雰囲気があるから、その……」


 京橋がそんな和美と鏡花を見比べながら言った。


「いや、影見さんって去年の夏に行方不明になった子に、何となく似てるんだよね。で、その子と仲の良かった男子が、春休み前に行方不明になっちゃって。それが4月に学校が始まってから、地下室で餓死しているのが発見されたんだ。だから、その、何か関係あるのかな?とか思ってて」


 鏡花は静かに言った。


「行方不明になった小島聡美は、私の従妹なの。その幼馴染が三藤恭一君」


 京橋達はそれを聞いてビックリしていた。


「そ、そうなんだ……」


 そこに堂明院先生がやって来た。


「お、鏡花。やっとクラスのみんなと話せるようになったな」


「ええ、全て終わりました。後は先生、お願いします」


「わかってるよ。もうほとんど終わっている」


 あの最後の七不思議の後、ボイラー室に堂明院先生がやって来た。

 そしてお祓いをした後、近日中に防空壕は完全に封鎖する事に決まったのだ。

 そして一連の事件の中心である”百葉箱”も、小さな祠に建替えようとしている。


 京橋達には、そんな鏡花と堂明院先生の話の意味がわからなかった。

 キョトンとして、2人を見ている。

 そんな京橋を見て、鏡花は言った。


「お願いがあるの。今度、クラスのみんなで、恭一君のお墓参りに行って欲しいの。きっと恭一君は、最後の最後まで、このクラスの一員のつもりだったと思うから」


 そうして鏡花は、恭一がいたはずだった席を見つめた。

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The Seven Fears - 僕と彼女と七不思議 震電みひろ @shinden_novel

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