第9話 後夜祭のキャンプファイヤー
後夜祭がグラウンドで行われるのは、キャンプファイヤーを行うためである。
各クラスが片づけを終えた後、看板や段ボールなどのゴミとして出たものを持ち寄る。それらを全て燃やすため、毎年キャンプファイヤーの火はなかなかの大きさになる。
クラスの片づけが終わった後、俺はちろると合流した。
「先輩、生徒会の仕事は大丈夫ですか?」
「うーん、特に何も言われてないから、多分大丈夫だろ。」
「よかった。せっかくだし、もっと前の方に行きませんか?」
「いや……、ちろるが思ってるよりも、あれかなり熱いからな。こんくらいの距離離れてるほうがいい。」
キャンプファイヤーから20メートル程離れた位置で、俺とちろるは陣取った。
生徒たちが校庭に集まり、生徒会長である姉貴が点火の号令をかける。
「みな文化祭お疲れ様だった! 今日という日を心に刻み、最後に熱い火を灯そうではないか!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「それでは、点火っ!」
姉貴の合図で、松明を持った生徒が火をくべた。段ボールが多いからか、みるみるうちに炎は燃え上がり、空高く昇っていく。
「わぁっ、とっても大きなキャンプファイヤー……。先輩の言った通り、これだけ離れていても、頬がちりちりするくらい熱く感じますね。」
ちろるは五メートルくらいの高さに上がる火柱に、目を奪われながら言った。
「そうだな。空高く炎が上がってる。」
炎で巻き上げられた塵を目で追うと、秋の星が夜空には散らばっていた。
「こうやって先輩と夜空を見上げるの、夏休みの時以来ですね。」
「あぁ、夏の花火大会の時か。」
ちろるに誘われていった花火大会。その日は花火の炎と共に、夏の星空を眺めていた。
「ちろるは星が好きだったよな。」
「はい、そうですよ。よければ、秋の星の解説しましょうか?」
ちろるからのせっかくの申し出であったが、俺は首を横に振った。
「いや、今日はいいかな。」
「そうですか……。」
断られたことに対し、ちろるは少しばかり残念そうな表情を浮かべた。
「まぁ、なんというか……、星だけならきっとまた、これからさ……。ちろると一緒に見る機会は何度もあると思うんだ。」
「そうですね。……っえ!? 先輩……それってどういう意味ですか!?」
ちろるは驚いた顔で俺を見ていたが、そこで空気を読めない男が乗り込んできた。
「おーい! こんなところにいたのか!」
声の主は、次期副会長である伊達丸尾であった。
「午後から全然姿が見えなかったじゃないか! 雑用係として、きっちり仕事をしてもらなわいと困るじゃないか。」
突如現れた丸尾に、俺は無理やり引きずられるように、ちろると引き離されて運営本部へと連れ去られた。
「おいっ! ちょっとお前、空気読めよ。」
いらいらしながら言うと、丸尾はにやりと意地悪く笑った。
「私を誰だと心得る? リア充しねしね団の創始者である私が、男女でいいムードの奴を見過ごすわけがないだろう。」
「この野郎……最低だな。」
「はっ、何とでも言うがいい!」
そういえば、同じ生徒会の仲間になって忘れていたが、こいつはもともとこういう奴だった。
「ほら、吹雪生徒会長のご命令だ! 火の管理をするぞ。」
「ったく、仕方ないなぁ。」
姉貴の命令であるなら致し方ない。しばらくの間、丸尾と共に火の安全管理をすることになった。
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