第5話 出会い

捕まえた獲物の扱いに困っているここな達だが、ここで思わぬ展開を迎えた。


『マスター、近くに動いてるいくつかの反応を捉えました』

「距離は?」

『300mくらい先を直線的に移動しています。

進む方向から推測しますと近くを通りますがこちらに向かっているわけではないようです』

「近づいて何なのかを確認しよう!」


薄暗くなってきた森のなかをここなは高速で移動した。

遠くの方から小さな灯りが近づいてくるのが見えた。


「あれはランプの灯りじゃない?

何か馬車っぽい乗り物みたいに見えるし」


ここなは馬車が通れそうな道を見つけ近づいてくる馬車を待った。

そして、近づいたソレを見ると馬ではなく大きなトカゲのような生物が馬車らしきものを引いていた。

ここなの少し手間で停止した。


「何だろうこの生物…‥、大人しそうだけど。

おやっ人が乗ってるっぽい。

すいませーーーん!」


馬車から明らかに悪そうな二人組が降りてきた。


「¥@◇¥&○◇^:◎※」

「※○¥#□¥」


「何を言ってるか分からないけど、どう見ても悪人で悪いこと考えてそう…‥」

『マスター、お気をつけください。

馬車に檻があり子供が閉じ込められてますので、奴隷商人と思われます!

言語解析までもう少し掛かります』

「それは魔法少女として子供を助けないと。

やっとヒーローっぽい仕事だね!」


ここながステッキを構えると二人組も腰からナイフらしきモノを取り出し構えた。


「▽'(%(♪♪※」

「☆&&¥▽※(」

「何か分からないけど脅し文句かな。

子供だと思って油断してる。

良い攻撃手段あるかな?エアブレイカーで殺人なんてゴメンだし」

『魔力を込めて放ってください。

素人相手なら十分に無効化可能です』

「魔力弾かな?

魔法少女っぽくて良いね!

うぅーーん、えい!!」


ステッキから放たれた野球ボールくらい弾が奴隷商人の頬を掠めて後方で爆発した。


ドオォーーーーン


「「□¥▽!?」」

「えっ!?」


ここなと奴隷商人達は爆発が収まるまで固まったままであった。


「△(♪「¥□♪(△!」


奴隷商人達は馬車を放棄して一目散に逃げていった。


「何これっ、無効化どころか粉々に粉砕しちゃうところだったよ!?」

『それはマスターが魔力を込めすぎです。

先ほど練習したばかりではないですか』

「それはそうだけど、武器を持った大人二人に対峙したら力も入っちゃうよ…‥」

『それよりも子供を救出しましょう』

「そうだった、早く助けないと!」


馬車の後方に回り檻の入り口を開け中を覗き込んだ。

そこには隅で脅えた小さな女の子が座っていた。


「大丈夫?」


少女は震えたまま黙ってこっちを見ている。


(怖い思いをしたのかな、10歳くらいに見えるししょうがないか。

どうしたら警戒が解けるかな?

…‥ そうだ!)


ここなは非常食のタルトを取り出し、少しちぎって自分で食べるのを少女に見せて大きい方を少女に渡した。


「タルトだよ、甘くて美味しいから食べてごらん」


しばらく見つめて悩んでいたが、空腹と良い香りに誘われて少女はタルトを食べ始めた。


「△&(♪(」

「すごい喜んでる!

女の子は甘いものが一番だね」


食べ終わった少女はここなをじっと見つめていた。


「▽&♪タルト△♪♪」

「タルトしか聞き取れない…‥。

タルト美味しかった?」

『言語解析が完了します』

「▽◎)… タルトさまは天使さまですか‥ ?」

「んっ、私は天使でもタルトでも‥‥」


(明らかに日本ではないから日本の氏名は浮いちゃうかな?

この子がタルトを名前と勘違いしているならこのままの方が都合がいいかな‥…)

『マスターにしては良い判断です』

(頭悪い残念な子みたいに言うなぁーー!)

『特に他意はありません』


「タルトさま…?」

「ごめんね、私は天使じゃないよ。

君の名前は?」

「…‥ リーシャ」

「リーシャちゃんかー、良い名前だね!」


ここなが… タルトがリーシャの頭を撫でようとフードをずらすと、そこには…


ピョコンッ


「ふおぉーーー!?」


ビクッ


『マスター、落ち着いてください。

少女がビックリしています』

「だ‥だ‥だって、ネコミミだよ!

夢にまで見たネコミミがここに!」

『とにかく落ち着いてください。

この子が怖がってますから』

「うぅ…‥ そうだね」


すっーー、はぁーー、すっーー、はぁー


タルトは深呼吸をして気持ちを落ち着けた。


「ごめんね、ビックリさせて。

ネコミミは初めて見たから嬉しくなっちゃって‥…」

「…‥」

『すっかり怯えてるじゃないですか』

「ごめんなさい……」


タルトはリーシャに向かって土下座をした。

日本人の心からの謝罪はやはり土下座のようである。

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