第6話 リーシャ
タルトの渾身の土下座によりリーシャは警戒を解いた。
「タルトさまはいじめない…‥?
リーシャはじゅうじんとのハーフなの…」
「いじめ?
リーシャちゃんを?」
コクッ
『どうやらここでは奴隷の扱いがあまり良くないようですね。
人間と獣人のハーフは特に酷いのかもしれません』
「こんな可愛いリーシャちゃんを苛めたりしないよ」
なでなで。
タルトは優しくリーシャの頭を撫でてあげた。
リーシャは気持ち良さそうに目を細めている。
「リーシャちゃんが苛められないように私が側にいてあげるね、約束だよ」
「はい…‥」
『マスター、手錠を外してあげましょう。
触っていただけますか』
「了解!
リーシャちゃん、直ぐに外してあげるね」
「…カギがありませんが?」
タルトは手錠に触れた。
『素材は鉄のようです。
これなら簡単に解錠できます』
カチッ
「良し、外れた!
もう大丈夫だよ、リーシャちゃん」
「えっ、えっ、いったいなにが…」
「暗くなる前に帰ろう!
家ではないんだけど…‥」
タルト達はトカゲもどきを引っ張りながら神殿跡地へ歩き始めた。
「そういえばウサギを拾っていかないと…‥」
さきほどウサギを狩った場所にたどり着いた。
「相変わらず気持ち悪い…‥」
ウサギを眺めながらタルトが佇んでいると
「りっぱないっかくうさぎですね」
「いっかくうさぎってそっちかい!
じゃなくてリーシャちゃん、平気なの?」
「…‥なにがでしょうか?」
「頭取れてるけど気持ち悪くないの?」
「えぇっと、お父さんがかりしたものをお母さんのりょうりのてつだいをしましたので…‥」
「解体も出来るの?」
「ナイフがあれば、たぶんですが…」
「ナイフかぁー」
『手錠を分解して成形すれば作成可能です。
但し、大量生産品と同じで強度はあまりありません』
(料理するだけなら十分じゃないかな、それでいこう!)
タルトは手錠と鎖に触れた。
一瞬でナイフと鍋、フライパンに変化した。
「な、なにがおこったんですか?」
リーシャは目を丸くして驚いた。
「私は魔法少女なのだ!
不思議な魔法がいっぱい使えるんだよ」
「まほう…しょうじょ…?」
「やっぱり伝わらないよね…」
「めがみさま…ですか?」
「女神なんて大層な者では…。
では、これを使って解体お願い出来るかな?」
「あっはい!」
ナイフを受けとるとリーシャは一角うさぎの解体を始めた。
ズバッ、ズルズル、グチャ
「可愛い女の子が解体をしてるところは何てシュール……」
『此方の世界では生きるには普通の事なのでしょう。
マスターより逞しいのかもしれません』
「言わないで……」
解体が終了し馬車に積み込み再出発した。
神殿跡地に到着した時には、すっかり暗くなっていた。
お腹も減っていたので鍋を使って料理をすることにした。
エアブレイカーの練習で切った木を薪にして魔法で火と水を出し鍋の準備を始めた。
「わぁあ、タルトさまはいろいろなぞくせいがつかえるんですね」
「普通は使えないの?」
「くわしくはないですが生まれつききまっている一つとききました」
「そうなんだ、私は特別かな♪あはは…」
(私は魔力供給だけで、ウル頼みなんだけど……)
リーシャは骨で出汁をとって肉を煮込み始めた。
また、草らしきモノも鍋に入れていた。
「あれ、その草は何?」
「これはなべに入れるとにくがおいしくなるとお母さんが」
「そうなんだ、料理も上手なんだね。
ところで両親はどこにいるの?」
リーシャの手がピタリと止まり、表情が凍りついた。
「……それは……」
「…リーシャちゃん…」
タルトは優しくリーシャを抱き締めた。
「無理しなくて良いんだよ。
泣きたかったら泣いて良いんだからね」
「…‥う…ぅ‥うわあぁーーーん」
静かな森の中に鳴き声だけが響き渡った。
…‥
…
‥
「ご飯を食べようか?
お腹いっぱいだと寂しさも半減だよ!」
「…‥はい!」
木を加工して皿とスプーンを作成した。
二人ともお腹がすいていたので、もくもくと食べた。
「お腹いっぱいになった?」
「はい!こんなにいっぱい食べたのはひさしぶりです」
「良し、お風呂に入ろう!」
「おふろ…とは、なんですか?」
「お風呂の習慣がないのかな?
楽しみに待っててね!」
(ウル、どうすれば良い?)
『清々しいほど、他力本願ですね…』
(リーシャちゃんを元気付けたいからお願い!)
『それを言われると断れませんね。
お風呂を作りたい位置で手を地面に着けてください』
広めのスペースがあるところでタルトは手をついた。
成分解析…‥完了
湯船成形…‥完了
水充填…‥完了
温度変化…‥完了
「完成!!立派な露天風呂だね」
「これは…おゆ?」
「さーってリーシャちゃん、服を脱ごうか!」
「えっ、タルトさま、まって、まってくださいっ」
すぽーん
「…はずかしい‥です」
「ほらおいで、入ろう!」
「え、えっ」
じゃぽーん
「温かーい!生き返るーー。
どう?リーシャちゃん」
「はい…とてもあたたかくてきもちいいです…」
「リーシャちゃん、力を抜いて上を向いてごらん」
「うわぁ、きれい…」
空には満点の星空が広がっていた。
「下ばっかり向いていたら、この景色は見れなかったんだよ。
今まで色々、辛いことがあったのかもしれないけど、これからは一緒に笑えるように頑張ろうね!」
「タルトさま……はい…」
「ところでリーシャちゃん、お肌がフニフニでスベスベだね」
「はわぁっ、くすぐったいですタルトさま」
「しっぽも可愛い!」
「し、しっぽはだめですーー……」
……
…
‥
「ああぁーー、気持ちよかった!」
『完全に変態なおじさんみたいでしたよ…』
「いやぁ、リーシャちゃん可愛くて、つい……」
「あの…タルトさま。
……タルトさまはどうしてやさしくしてくれるのですか……?」
「どうしてって、素直で可愛くて良い子なリーシャちゃんが、大好きだからかな」
「だい…すき…?」
「そうこんな感じにね」
タルトはリーシャをぎゅっと抱き締めて、優しく頭を撫でた。
「そんな理由じゃ駄目かな?」
「…だめじゃないです…リーシャもタルトさまがだいすきです…」
「可愛い!ずっとこうしていたいかも」
「すこしいたいです…タルトさま」
「ごめんね、少し力が入っちゃった」
二人は馬車の荷台に寝場所として準備をした。
「今日は1日色々ありすぎて疲れたーー」
「あの…タルトさま…」
「どうしたの?」
「その…くっついてねてもいいですか?」
「もちろん、良いよ!
おいで寝るまでなでなでしてあげるね」
「おやすみなさい、タルトさま」
「おやすみ、リーシャちゃん」
長い1日目が終了したのであった。
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