第3話 建物内を散策しよう

『外に出る前に建物のマップを作成しましょう。

何でも良いので大きな音をたててください』

「音?

音だけで構造が分かるの?」

『はい。

潜水艦や鯨が使用するソナーと一緒です。音の反射で……』

「あ、やっぱり説明は良いかな……。

たぶん理解出来ないし……あはは……」


難しい話だと察して苦笑いで回避するここなであった。


「じゃあ、いくよーー!」


気を取り直して音をたてることにした。

手頃な石を拾って思いっきり叩きつけた。


どすんっ!


石は凄い勢いで地面にぶつかり砕けた。

部屋の中に地味な音が鳴り響いた。


「うわっ!?危なっ!

なんか凄い力持ちになってる」

「魔法少女は強大な敵と戦うため、魔力で身体強化をしています」

「そうなんだ、少しずつ慣れないと。

ウル、さっきので大丈夫?」

『十分です。

高音よりも重低音の方が遠くまで届きますので』

「そうなんだ、高い声の方が響きそうなのに」

『低音の方が波長が長く空気抵抗の影響を受けにくく遠くまで届くのです』

「何か理科の授業を受けてるようでなんか嫌だな……」


清々しいほど勉強嫌いなここなであった。


『そんなに広くないようですので今ので全体が把握出来ました。

水と思われるものも発見しております。

また、建物内に生物はいないようです』


水がある場所に行くと湧き水があり溜めておく小さな泉のような作りとなっていた。

早くも水問題が解決したため、外に出ることにした。


「そういえば水は魔法で出せたりしないの?」


外に向かう途中、ふと思ったことを聞いてみた。


『水を出すことは可能ですが近くの空気中に含まれる量だと少しとなります。

また、乾燥して余計に喉が乾きます。』

「なるほどー、無から作れないんだね。

魔法ってもっと便利だと思ってたんだけどなぁ………ん?」

(そういえばこんなネックレスしてなかったんだけど……)

「ん………むむむ……。

はあはあ…外れない…呪いのアイテム?」

『特に身体への悪い影響はないようです』


いつの間にかネックレスを着けていたが、外れないので今は無視する事にした。

もしかしたら重要なアイテムかもしれないとゲームなどの知識から推測したのも一因であった。


「やっと外に出れたぁー。

洞窟を掘って作った神殿みたいな遺跡だね」


外から見ると自然に出来たものではなく人工の入り口が岩壁に出来ていた。

青空が広がり周囲は森に囲まれていて遠くまでは見通せなかった。


『ここから見える範囲では地球の植物群とあまり変わらないように思えます。

太陽のような恒星もありますね。』

「ここだけを見るとヨーロッパの森の中って感じがするね。

この遺跡にはお宝があったり竜が棲んでいたりさ」

『では、一日の時間を計測してみましょう。

地球であれば24時間でしょうから直ぐに分かります。

棒を立てて日時計を作りましょう』

「おおぉー、小学生の時に作ったの覚えてる!

それなら私でも分かるよ!」


ここなは手頃な真っ直ぐな棒を拾い地面に突き刺した。


『あとは周回の時間を私が測ります』

「計測にはしばらく掛かりそうだから周辺を散策してみようかなー」

『明るい昼間のうちに散策しましょう。

どんな危険な生物がいるか分かりませんので』

「異世界といえば危険な魔物もたくさんいるかな…‥ でも、妖精とかエルフもいるかもしれないよね、会ってみたいな!」

『仮に魔物がいたとしても魔法少女であるマスターの敵ではありません』

『そうなんだ。

竜がいたら勝てる気しないけど…‥ とりあえず周囲を散策して食べ物を探してみよう!』


異世界生活の始まりであった。

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