ドリームアドベンチャー

ざいりょー

【第1話】「DREAMS」に新入社員が来るらしい

 ———————「目が覚めたら、本当にそこは現実なのか。」

                       無名のダイバー———————


「・・逃げろ、鋭・・」

 豪雨のせいで言葉が聞き取りにくいが、微かに聞こえた声だけで、内容が分かった。「いやだ!いやだ!絶対に離れるもんか!」暴風に邪魔されながらも、必死に叫び続ける。

「いいから逃げるんだ!ジャンプはあと一回しかできない。だから、お前だけでも戻れ!俺が合図をしたら、このボタンを押して0階層までジャンプするんだ!」最後の最後まで、一緒にジャンプする手段を考えたが、もうここまで・・・いや、諦めたくない。

 夢が崩壊し始めた。

 もう時間がない。そう思ったのか「じゃあな。新人。」と言い残し、男はためらうことなくボタンを押した。もう、やれることはやったのだと思っているかのように。


「父さーーーーーーん!!」



 一年前


 俺は鋭時。つい最近大学を卒業した、22歳のニートだ。今日は、空に雲一つない晴天。就職先が見つからない俺は、父さんに誘われて「DREAMS」という謎の会社に就職することになった。


 何百とあるビルの一角に、DREAMSのオフィスがあるみたいだ。駅から10分ほど歩き、30階までエレベーターで上がる。そして目の前にあるカウンターを横切ると、「DREAMS」と書かれた、少し洒落た看板が掛けてあった。

 誰かが歩み寄ってきた。俺の父さんだ。

「やあ、鋭時。元気にしてるか?」久しぶりに見た顔だ。

「ああ、もちろん。」なぜか緊張してしまっている自分がいた。

「ちょっと場所を変えてから話の続きをしよう。」そう言って、冷房が効きまくっている一室に誘導された。


「こんな会社に就職するくらいだから、ちゃんと会社の内容くらい覚えてから来たんだよな?覚えてないとは言わせないぜ?」歩いていたら、突然聞かれた。

「あ。やっべ。覚えてねぇ。」数秒の沈黙の後、ハッと我に返った。父さんの顔を見ると、ちょっと怒ったような顔をしていた。ついつい思ったことを口にしてしまったようだ。

「おいおい、嘘だろ!?勘弁してくれよな。」父さんはため息をついている。

「分かった。悪かったよ。突然誘われたもんだから、あんまり気にしてなかったんだ。」本当は、昨日の夜中までゲームをしていたことは、口が裂けても言えない。

 父さんは、俺のことを鋭い目でにらみつけると、「仕方ない。DREAMSの仕事内容を教えてやる。今回だけはと・く・べ・つだからな!」と許してくれた。

「DREAMSは、20XX年に設立された会社だ。仕事内容を物凄く簡単に説明すると、他人の夢の中に入って、眠った状態から目が覚めない人たちを夢の中から現実に戻すことが目的だ。」

「眠った状態から目が覚めないって・・・。まさか、30年くらい前に突然発症し始めた『永眠症』のこと?」

「ああ、その通りだ。発症すると、他人が現実に戻してくれるまでは眠り続けて、永遠に夢を見続ける。なぜ永眠症が発症するようになってしまったのかは、30年経った今でもまだ謎のままだ。ともかく、一人でも多くの人たちを現実に戻すために、俺たちは日々働いている。」

 辺りを見回しても、誰一人いない。静まり返っている。「『俺たち』って言っているけど、他の人たちは今どこに?」


「あいつらは既に夢の中にダイブしてるよ。患者を夢から連れて帰るためにな。」

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