第3話 俺と撮影



「人生は挑戦だ!授業なんて行かなくて良い!どうも青年革命家さとぽんです!」




撮影後社員の1人にコーヒーを淹れてもらった。ボブの黒髪に丸顔。顔立ちはかなり綺麗だと思う。着ているものもブランド物ではないが、素地がいいもの着ている風に見受けられる。


「ミルクと砂糖は入れますか?」


「ミルクだけお願いします。」


そう言うと彼女は笑って大人ですねと言った。久し振りに女性と話した気がする。あの事故以来人と話すことはほとんどなかったため、こんな些細な会話でも新鮮に感じてしまう。コーヒーを飲みながら文庫本を読んで数十分後、僕は社長に呼ばれた。きっとこれから編集後の動画の品評会となるのだろう。


部屋に着くとパソコンに向かっているもう1人の社員がいた。こちらは金のロングの女性だ。ハーフなのだろうか。どこか西洋っぽい顔立ちをしている。きっと俺と同じ学生なのだろう。靴や腕時計などあまり身につけているものは高いものではなさそうだ。彼女に手招きされ、僕たちはパソコンの画面に映る動画を見始めた。


...被写体としての意識が足りないとしか言えない。カメラから目線を外す。流暢に話しができていない。課題はたくさんある。


「これで大丈夫なんですか?」


僕は社長に聞いた。


「上出来じゃねぇか!これのどこに不満があるんだ?」


「いや、僕。全くいい動きできてないじゃないですか。」


そう言うと社長は一瞬ぽかんとした顔を見せ、笑い始めた。


「あははは!お前はやっぱり馬鹿だな!1つヒントをくれてやるよ。この動画は誰に対して見せるものだ?」


「え、学生や保護者ですか?」


「違ぇよ馬鹿。誰かを叩きたいやつ。つまりストレスが溜まっているやつに決まってるだろ?忘れたのか?俺たちは炎上を狙っているんだろ?」


「あ、、、」


そうだった。完全に忘れていた。この動画の内容に意味は特に必要はないのだ。なぜならこの動画は視聴者がストレスを発散するための材料に過ぎないからだ。だから適度に批判される部分はむしろプラスに働くということか。


「分かったようだな。これで動画の内容は以上だ。それじゃあこれから契約内容を決めていくか。」


そう言って社長はテーブルに座り契約内容の確認を始めた。




主要な部分としては動画の広告料の報酬は折半。お互いに動画による不利益は補償しない。あとは大学卒業後、俺がここの会社の社員になることが決定された。


家に帰って、今日のことを振り返ると怒涛の1日としか思えなかった。動画が明日には発表される実感がない。多分、いや、必ず世間からバッシングを受けるだろう。


「これで俺も有名人か。」


あくまでも有名になるだけだ。著名にはならない。だが、何も得られないこの日々からは抜けられる。これが良いのか悪いのか分からないが、、、


「考えても無駄だな。寝よう。」


そう言って俺はベッドに入っていった。

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青年革命家さとぽん さとうさな @sana024

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