第2話

 奴をまた探し始める...までもなかった玄関にまだいた。

「もう勘弁してくれ」

 クレーム対処中のコンビニ店員のような声が漏れ、ベッドのシーツを強く握りしめた。気を取り直し、次の手段を講じるためにAはスマホを取り出す。奴への対抗策を片っ端から調べ始めた。そこである単語に目が留まる

「殺虫剤」

それには奴専用のものが通販一覧に表示されていた。しかし、Aは外に出ることができない。それにここはアパートの2階。窓から裸足登校もできない。それに帰ってきた跡が怖い。奴が姿を現してるうちにどうにかしなければ。

「増援が必要だ」

そうつぶやくと、もう一度玄関に体を向けると目の中にあるものが収まった。

カメラ機能で奴を撮影する。

「グロ画像だ」独り言とともにAはその写真をSNSに投稿し、文字を少しばかり打ち込む。

しばらくすると一件の着信が来た。友人Bからのものである。

「僕のタイムライン汚さないでくださいよ!」

携帯からノイズまじりで声が響く

「緊急事態だ、至急、対処のために奴専用の殺虫剤関連の者を頼む」淡々と要求を伝えるA。

するとBは「嫌ですよ。今日授業あるんですよ?それに奴ってなんスカ?もしかしてさっきの写真に写ってたゴキ,,,」

その単語を聞き間髪入れずにAが「その名で呼ぶな!」と声を荒げた。

「さっきの写真、よく見てみろ」

頭にクエスチョンマークを浮かべているであろうB、しばらくすると「これって,,,」

写真には奴、それに加えていかにも高級そうなインスタ映え間違え無しの靴が写っていた。

「いいか、もし来なかったら私は強硬策に出る。」脅迫めいた声でAは声を出す。

「急いでいきます!」とBは通話を切った。

Bが来るまでの間に次の準備に取り掛かる。

準備が終わると時間はさらに過ぎあと5分で出なければ遅刻してしまうほどである。そこに再度着信が来る。相手はもちろんBだ。

「A、いまドアの前です!ていうかなんで僕の靴があるんですか!」Bが電話越しで話す。外からも少し声が聞こえる。

 Aは数日前Bを部屋に招いた。そこで大量に酒を飲んだ。Bは泥酔し私の家にあったサンダルを履き間違えて帰っていたようだ。

Aは言葉を返した「そんなことは後だ、作戦はこうだ。」

 内容を一通り話すとBはドアの前から離れた。Aは遅刻までの時間に焦燥しながらBの移動を待つ。少ししてリビングの窓側からBの声が聞こえてきた。私は布団のシーツを複数巻き付けロープ上にし、その先にはバッグの肩掛け部分を括り付けていた。少しずつ特性ロープを下におろす。Bは先に括り付けたバッグにモノの入った袋をいれた。

「オッケーです!」

 Bの手から離れるとともに宙を踊りだしたバッグは、無事に俺のもとへたどり着いた。手をよく見る高評価の形にし、bにドアの前にもう一度来るように言った。その間にAはバッグの中身を取り出し、窓を閉め、内容物の確認をした、そこには包装された二つの円筒が入っていた。Aは2つの円筒を包装から剥ぎ、殺虫剤は右手にもう一つは左手に戻携えることにした。次に目出し帽を被り、マスク、サングラスを身に着け、手袋をつけた。準備が完了し、ドアの前からBの声がかかる。

「配置につきました!」Bの声とともにAは廊下に向かう。奴もAのただならぬ勢いを察知しすぐさま羽を鳴らした。向かってくる奴、接触は免れない、Aは左手を右手に交差し、奴めがけて殺虫剤を振りまく、奴は少しよろめくもAへの進行をやめない。殺虫剤は奴を排除まで持っていけるほど強力ではない、しかしそれで十分だった。Aは身をよじり奴の突撃を避ける。リビング方面へ飛んでいく奴正反対の玄関に走り続けるA。Aは殺虫剤を奴めがけて投げ警戒を向かわせる。それとともに玄関のカギを開ける。

「開いたぞ!」というAの声に反応してBが扉を開ける。そして左手に携えた円筒スモーク型殺虫剤を作動させようと身を屈める。しかしリビングに向かったはずの奴が靴棚の隙間にいる。一瞬世界が止まったかのように思えた。「A!なにしてるんですか!」Bの声が響きAは思考を再度めぐらすことに成功した。スモーク型殺虫剤を起動させ、Bのくつを外にいるBにパスする。見事なキャッチとともにAも玄関を後にし、すぐさまカギを閉めた。Bと共に大学へ駆け出す。これで後は大学に向かうだけだ。しばらくして、大学に着くと、嫌に静かな教室を前にして、愕然とした。

「今日この授業、休講じゃん」Aは机に座り大きなため息の後に冷たい板に突っ伏した。

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