第三十話 不安と到着

 ジークとラグハートのいる北に向けて飛び始めてから約三十分が経過した。

 地面にはラグハートが残したと思われる痕跡がたくさん残されていた。

 足跡は五メートルほど、付近の草や木は焦げている。


 (ディルの方は大丈夫かな...。向こうはどんな作戦で...)


 「ネ...。シロネ?」

 「へぇ?」


 声のする方を見るとジークがこちらを見つめていた。


 「大丈夫?何か悩んでいるみたいだけど」

 「ごめんね、心配かけて。ディルとクロバが大丈夫かなって」


 今までは戦いの中でも大切な人が常に視界の中にいた。

 でも今は違う。

 何かがあってもすぐに助けに行くこともできない。

 それどころか何かがあってもそれを知ることすらできない。


 「不安な気持ちもわかるは。でも今はラグハートを倒すことに集中しましましょう」

 「うん、そうだね」


 クロバに聞いたラグハートが休んでいる場所まであと数分くらいのところまで来た。


 (今のうちに情報を整理しておこ)


 八大天龍の強さは数えが小さくなるにつれて強くなる。

 私とジークの目標は第七位炎龍ラグハート。

 ちなみにディルとクロバが担当しているジングスは第八位土龍。

 つまりラグハートのほうが戦闘力が高いということ。

 なぜ強い方の龍を魔王であるディルが担当しないかというと、八大天龍は倒されても前世の記憶を持ったままよみがえるから。

 それはラグハートに以前ディルに倒された記憶が残っていてその結果ディルの動きを読まれて不利にならないようにするため。

 だからあえて私とジークがラグハートを担当することになった。

 ラグハートは炎をつかさどる龍。

 その体はマグマのように高温で翼は炎でできているらしい。


 (はばたいただけで森が焼け落ちたってディルが言ってたっけ)


 想像した。

 初撃が聞かず、ラグハートが飛翔した場合その熱だけで死んでしまいそうだ。


 (無理じゃん!!)

 

 考えただけで帰りたくなった。

 結局目的地に着くまで私の表情が晴れることはなかった。


 目的地に到着した。


 「シロネ、あそこ...」


 ジークが指さす方に小さな山くらいある龍が寝ていた。

  

 「うわぁ。想像の五倍くらい大きい...」

 「それじゃあさっき決めた作戦通りいくわよ!」

 「うん!」


 ラグハートが寝ているのを確認し、作戦を開始した。

 ラグハートに炎系の魔法は通じない。

 でも、ディルの情報によると爆発系の衝撃で外傷を与えることはできるらしい。

 そこでジークと決めた作戦はまずラグハートを中心にジークの力を使って最大威力の爆発魔法を唱える。

 その直後に私が最大威力の氷結魔法を使ってラグハートを凍り付かせるという作戦。

 重要なのは爆発魔法がしっかりとラグハートにとどめを刺せるか、それとこうらせるときに皮ははげるようにしないといけないということ。

 それを踏まえてさっそく準備を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生したら魔王後継者!? かぼちゃパイ @kabochiyapai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ