拝啓、自分が分かりません

初夏みかん

第1話 小学校の初恋

同じクラスの男子に、カッコいい部類に組み分けられる子がいた。

背が高くて顔がよく、当時根暗で卑屈だった私にも平等に接してくれたことから好印象を抱いていたのは覚えている。

正直、もう顔も名前も覚えていないが。

卒業アルバムをわざわざ引っ張り出して探し当てるだなんて無駄な事をする気はサラサラないが、思えばアレが"ハジメテ"だったのだろう。


人を好きになりきれなかったのは。


小学校中学年だか高学年だかは忘れたがそれ位の年頃の女子が好んで読むのは恋愛漫画だ。べったべたのこてこてした胸焼け必須のあっっっっっっまーっい!物は当時から苦手だったのでさっぱりした物を読んでいたが、多少恋愛脳だったことは認めよう。非常に遺憾であるが。

なので「もしや……………これが恋っ!?」なーんて思いもした。秒で冷めたが。

彼の名誉の為に言っておくが、別に裏表が激しすぎたとか、実は…なんて噂になるような悪癖があったわけでもない。ただ単純に、私の中で自覚した瞬間になにかがスッと消えたのだ。

それがなんだったのかは知らないし、多分死んでもしれない。

だが恐らく、私は自分自身に引いたのだ。


はぁ?恋?正気か、お前?


と。

まだいたいけだった(はずの)私は盛大に慌てました。なんの落ち度もない彼を、急に冷めた目で無視する自分が目の前に突っ立ったのです。何故自分がそんな風に思うのか理解できず、また何故彼を嫌わなくてはならないのかと、泣き出したくなりました。覚えてませんが。

今でこそ分かる感覚ですが、好きの対義語は嫌いではなく無関心です。別に彼の事を、好いても嫌ってもいなかった。それが正しい結論でしょう。

だからこうして筆をとって当時を思い起こしてみても、微塵も『彼』の容姿も声も髪型も背の高さも得意科目もよく着ていた服すら、思い出せない。

当然でしょう。関心の無い相手の、何を覚えておけというのでしょう。そんな無駄な作業をするくらいなら、広辞苑を開いて新しい日本語を覚えて語彙力を鍛えます。私の現在の関心は無機物に向いているので。

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拝啓、自分が分かりません 初夏みかん @yorusora

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