第34話 雲の上

 榛名山部隊の二千人の隊員たちは、そのとき突然、白い閃光を見た。その瞬間、何の苦痛もなく身体が消滅し、意識だけが消滅せずに残され、漂い始めた。残されたそれぞれの意識は、一面の炎の中をさまよい、しばらくしてそれぞれが小さな光となって空へと上り始めた。そして高い空の上から、自分達の身体が炭と灰になっている地上を見下ろしていた。四千の小さな光は、互いに言葉を発した。


「オレタチ シンデシマッタンダヨナ!」


「ドウヤラ ソウウラシイ」


「カクミサイルカ?」


「ソウダッタ ミタイダナ」


「ヤハリ ピーコクカラ トンデキタミタイダ」


「ソウナンダ!」


「ソウナンダ!」


「モウスコシ イキタカッタナ」


「オレハ ユキナガ スキダッタンダ」


「オレハ ハルカガ スキダッタンダ ナンデ イワナカッタンダロウ」


「オレハ シヌマエニ ヒツマブシ タベタカッタ!」


「オレハ コロッケガ イチバン スキダ!」


「オレハ カノジョト ディズニーランドニ イッテミタカッタ!」


「オレハ ナニカ リッパナコトヲ シタカッタ!」


「リッパナコトヲ シタンダヨ オレタチハ!」


「ソウダ リッパニ ニホンジントシテ タタカッタ!」


「コウナッタノモ イタシカタノナイ ナガレダ」


「カワハナガレテ ドコドコイクノー ヒトモナガレテ ドコドコイクノー


 ソンナナガレガ ツクコロニハ ハナトシテ ハナトシテ サカセテアゲタイ ・・・」


 二千の小さな光が、雲の上へと流れていく。


「ノコッテイル ヒトタチハ シアワセニ ナッテホシイネ」


「ソウダナ ミンナシアワセニ ナガイキシテ ホシイネ」


「シカシ ソラカラミルト ニホンッテ ウツクシイネ」


「ソウダネ コンナウツクシイクニデ コロシアイシナクテモ イイノニナ」


「ニホンダケジャナイ チキュウゼンブガ ウツクシイヨ」


「コンナ ウツクシイチキュウニ オレタチハ イキテイタンダナ」


「レンメイノ ナカマタチ ゲンキカナ?」


「ニホンハ ドウナッテ イクンダロウ」


「オレタチガ タスケダシタ ヒトタチハ ドウシテル?」


「レキオスブタイノ イキノコリハ オキナワニ カエッタカナ?」


「カエッテイル ハズダヨ」


「ヨウスヲミテコヨウ!」


一つの小さな光が南に消え去り、しばらくして戻ってきた。


「オキナワニ カエッテ ワタルト アサミガ ケッコンシテル!」


 二千の小さな光が、雲の上で揺れた。


「フタリデ ショクドウヲ ハジメタヨウダ」


「ハンジョウシテル ミタイダゾ」


「イツカ ケッコンシキ スルラシイゾ タノシミダナ」


「ソノトキマデマッテ ソノケッコンシキニ シュッセキシヨウ!」


 また、二千の小さな光が、雲の上で揺れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る