第28話 岐阜会議

連盟各部隊による岐阜県内のP国軍残存部隊の掃討は困難を極めた。P国軍は日本人住民を盾にして頑強に抗戦を続けた。無防備に姿を見せる日本人住民の背後には必ずと言っていいほどP国軍が潜んで銃を構えていた。連盟はレーザー銃でP国兵だけをピンポイントで狙い撃ちする必要があり、その際に日本人住民が巻き添えになってP国軍に殺戮される例は後を絶たなかった多かった。P国軍のなかには、日本人住民の服装をして日本人住民を装って連盟の兵士に近づき、いきなり銃や爆弾を出して攻撃する者もいた。なかでも、日本人の青少年からなる「日本忠誠軍」には悩まされた。殺すわけにもいかず、レーザー銃で気絶させる。しかしその中に気絶していない者がいれば、こちらが銃撃されることになる。確認には時間がかかった。この様にして、連盟が岐阜県内からP国軍を駆逐するのに、1カ月を要した。



ようやく岐阜県内のP国軍の掃討を完了した「連盟」は、浅間山部隊、北アルプス部隊、榛名山部隊のリーダー達を中心に、今後の作戦について話し合いを始めた。

「この戦いで「日本忠誠軍」の異常さには驚いた。西日本の日本人はみんなあんな風に洗脳されているのか?」

「日本人の青少年・子供は、「すべて日本が悪い」と教育され、P国軍に取り込まれている。日本人住民のなかにはP国軍に抵抗している組織もあるが、ほとんど潰されている。」

「どうにかしないと、西日本の日本人が滅んでしまう。我々が西日本に進撃して力づくで日本人を救うしかない!」

「それには、米軍からもっと武器弾薬を提供してもらうほかない。東北の連盟部隊にも参加を呼びかけよう!」


「米軍は出動してくれないだろうか?」

「それは話をしてきた。しかし米軍が直接、P国軍と戦闘状態になる事には、米国政府内に反対意見が強い。P国が暴発して、米国本土に核ミサイルを討つような事態になれば、数十万人の米国人が犠牲になり、国民から非難され、米国政府がもたないらしい」

「つまり米軍はあてにならないという事か」

「ではC国軍はどうだ、P国はC国の命令に従っている。C国がP国に西日本でのやり方を変えるように指示してくれないだろうか?」

「C国はP国が西日本の日本人に残忍な支配をしている事を黙認している。C国の支配の方が、P国の支配よりましだろうと国際的にアピールしているらしい。」

「実際その通りだが、今回、P国軍が東日本に侵入した件に関してC国首脳はどう考えているのだろう?」

「C国がP国に西日本の状況に遺憾の意を伝えることはあっても、絶対に軍事介入する事はないだろう。なにしろ、C国首脳としては、危険なP国を、他国への脅しのカードとして持ち続けたいらしい。だから今後もP国を、C国には従順な国として存続させておきたいらしい」

「という事はC国もあてにならないという事か、・・・」

「九州の日本政府は相変わらず沈黙している」

「何にもならんな日本政府は、そもそも米軍基地を沖縄に集中させて、米軍基地のなくなった日本本土の都市部に北朝鮮の核ミサイルが落ちたんだから、日本政府の責任だろう!」

「米軍基地のある山口の岩国には日本政府の出先機関があって、時折P国政府と協議しているらしいが、何の進展もないらしい。日本政府はこれ以上P国と敵対する意思はないらしい」

「結局、西日本の日本人を救えるのは自分たち連盟だけではないか!」

「西日本の日本人を見殺しにはできない!直ちに行動しよう!」


このとき長野県本部長がこう言った。

「岐阜県でP国軍と戦う中で困難だったのは「日本忠誠軍」の扱いだ。その対応について一つの案がある。ただその準備に数カ月はかかる。これは、西日本の日本人たちの命を救うために絶対に必要な準備だ。その詳細については各部隊の担当者に伝える。ここは私の頼みを聞いて、西日本への侵攻を、米軍からの武器弾薬の提供も含めて、準備が整うまで一旦延期という事にしてもらえないか?」

長野県本部長に絶対の信頼をもつ連盟のメンバーは、話し合いの結果、皆その意見に同意し、西日本への侵攻は延期し、準備に万全を期す事になった。


この期間中、連盟の隊員は東日本各地からの参加者が増え、北アルプス部隊と榛名山部隊は千人から二千人以上に、浅間山部隊は二千人から四千人以上へと増員された。

米軍は、連盟の要請に応えて、横須賀基地から相当数の装甲車・ロケット弾、市街戦対策として敵偵察用ドローンを数百台・催涙弾を数千発準備提供した。

この戦闘用ロボットは、以前レキオス部隊に供与された四足歩行運搬ロボット「ライデン」を小型にし、自動射撃装置を搭載したタイプで、前方90度にある一定の大きさの生体に反応し正確に自動発砲するので、連盟側は隊員の犠牲を払う事なく、敵兵を倒すことができる。


この間米軍は密かに、九州の日本政府に呼びかけ、西日本でも日本人からなる装甲車・ロケット部隊を出撃させようと協議していた。つまり、東日本で、「連盟」部隊がC国軍相手に成功したことを、西日本でも実行しようとしていた。しかし、日本政府は、「日本政府の関係する部隊が西日本のP国軍支配下の地域に侵攻した事が、P国の知るところとなれば、報復として九州にP国軍の核ミサイルが撃ち込まれる危険が生じる」として、その提案を拒否した。


結局、西日本の日本人を救う事ができるのは「連盟」だけだった。

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