三節 依頼

「お前らはあの白いクソに随分とご執心じゃねェか。また何か俺たちに隠してるな?」

 ツクシが唸った。

「貴様らがそれを知る必要はない」

 ギルベルトが男にしては艶っぽい唇の端を歪めた。

「チッ! それみろ、またダンマリだ」

 ツクシは銘柄ラベルのついていない酒瓶を手にとった。

「それよりもツクシ」

 ギルベルトが口元の笑みを消していった。

「あ?」

 ツクシはじゃがいも酒と不機嫌を杯へ注ぎ込む。

「何故、貴様はアマデウス連合に参加せんのだ?」

 ギルベルトがじっとツクシの不機嫌を見つめた。

「――それこそ、手前てめえが知る必要はねェぜ」

 ツクシはじゃがいも酒で喉を焼いて顔を歪めた。

「あっ、ああよォ、それなんだ。ツクシ。リュウたちのことなんだけどなァ――」

 ゴロウが杯を卓へ置いて口を開いた。

「あ?」

 ツクシが横目でゴロウを睨む。

「あのよォ、他人ひとの話をちゃんと聞けよなァ、たまにはよォ――?」

 ゴロウが歯を剥いて唸った。

「何だよ、うるせェな。じゃあ、ここで聞いてやる。ほれ、いえよ、ゴロウ」

 ツクシは面倒そうに促した。

「じゃあ、いうぜ。ツクシ、やっぱり俺たちは人数が足りてねえ。今回だって四日で王座の街に帰ってくる羽目になっただろ。備品は多く持ち込めねえし、野営のときだって、ゲッコがずっと寝ずに見張りを――」

 ゴロウは真剣な表情で語ったが、

「何だよ、泣き言か。この根性なしが。その山賊みてェな面構えでよ。きんたまをお袋さんの子宮に置き忘れて生まれてきたのか、あ?」

 返ってきたのはツクシの悪態だった。

「泣き言じゃねえ! 俺だって一人で照明を作り続けるのは限界があるぜ。導式は何の対価もなしにホイホイ使える技術じゃねえんだ。ゲッコや俺の負担も少しは考えろ!」

 ゴロウが怒鳴った。

「俺の仕事を手伝ってくれなんてな、手前に一度でも頼んだことがあるか? そんなに嫌なら、ゴロウはネスト探索をやめろ。止めないぜ。お前みたいな腰抜けは地上うえでノホホンとヤブ医者をやってりゃあいいのさ。俺はネストの探索を続けるがな」

 ツクシは不機嫌を倍増して唸った。

「このゴボウ野郎、ひとが心配をしていってやっているのによォ!」

 ゴロウが尻で椅子を弾き飛ばして立ち上がった。

「あ? 何だやるつもりなのか。上等だ、今すぐにかかってこい、この赤髭野郎!」

 ツクシが椅子から腰を浮かせた。

「ゲッ、ゲロロロロ――」

 ゲッコは睨み合うツクシとゴロウを交互に見やった。

「二人とも、そのくらいにしておけ。ツクシ、俺の話はアマデウス連合レイドの件だ」

 ギルベルトがいうと、

「用があるならさっさといえ。俺は今、忙しいんだ」

 ツクシはゴロウの髭面をガリガリと睨みつけながら、ギルベルトの話を促した。

 ゴロウもツクシを睨み返している。

 一触即発である。

「では、俺からもいわせてもらおう。ツクシ、貴様が率先してネスト探索者どもをまとめろ。貴様らの班は人数が足りていないのだろう。アマデウス連合の人員を引き抜いて切り崩せ」

 ギルベルトは唇の端を冷たく歪めた。

「やなこった。大体、俺の性格はそういう小賢しい役回りに向いてねェよ。いいじゃねェか。聞いている限りだと、アマデウス連合のネスト探索は順調なんだろ。探索データさえ集まれば、それでお前らは――ネスト管理省は万々歳の筈だがな?」

 ツクシは殺気の矛先をギルベルトへカッと向けた。

 本当に気の短い男である。

「いや、シルヴァ・ファン・アマデウスには、三ツ首鷲われわれが看過できない重大な懸念がある」

 ギルベルトは殺気で沸き立つツクシの三白眼を見つめた。

「――重大な懸念。シルヴァの魔導式のことかァ。どうも奴は使うって噂だなァ」

 ゴロウが倒れた椅子を直して腰を下ろした。

「そうだ」

 ギルベルトが頷いた。

「だが、騎士様、シルヴァはどう見たって魔人族ディアボロスに見えねえぜ。ヒト族に魔導式は扱えねえ。そうなると、シルヴァは魔導式具を使っているんだろ。ヒト族が魔導式具を使い続ければ寿命があっという間に縮む。シルヴァは肉体からだがボロボロになってすぐに死ぬぜ。放っておけよ」

 ゴロウは手酌で杯へワインを注いだ。タラリオン王国は魔導式を扱う道具――魔導式具の製造・販売を原則禁止している。しかし、手に入れようとすれば、それができないわけではない。金と命の対価を魔導の力へ差し出す覚悟があればの話であるが――。

「ゲロ」

 ゲッコがギルベルトを見やった。

「――ゴロウ。シルヴァの中身がヒト族だと確定しているわけではない」

 ギルベルトは手元のグラスを見つめている。

 ゴロウはギルベルトを見つめた。

「ギルベルトは、そんなにシルヴァの野郎が気になるのか?」

 ツクシは喧嘩相手を失って、ようやく椅子に腰を落ち着けた。

「それが仕事だからな」

 冷めた表情のギルベルトが冷めた返答をした。

三ツ首鷲お前らご自慢の諜報機関は何をしてるんだ。寝てるのか?」

 ツクシはじゃがいも酒の杯を呷って不機嫌を焼いた。

「もちろん、仕事はしているさ」

 ギルベルトの適当な返事だ。

「それなら、俺を頼るな。三ツ首鷲お前らは大得意だろ。その手の汚ねェ裏仕事がよ」

 吐き捨てるようにいって、ツクシはおつまみの皿にあったチーズサラミを手にとった。

「――テト」

 ギルベルトが声を上げると、

「あっ、はい!」

 カウンター席で背を丸めて扇情的な小説を読んでいたテトが、いい返事と一緒に背筋をピッと伸ばした。

「水をもう一杯」

 空のグラスを右手で掲げたギルベルトの注文だ。

「――かしこまりマシタ!」

 テトがムッと表情を変えてピッチャーを手にとった。酒場宿ヤマサンの水は無料である。

 チーズサラミを噛み砕きながらツクシが唸った。

「おい、ギルベルト、誤魔化すなよ。お前もオリガと何も変わらねェな」

「調査済みだ。しかし、シルヴァには過去の経歴がなかった」

「へえ、お前らのところの社員はよほど無能なんだな。それとも、やる気がないのか。給料が安すぎるんじゃねェか? 前に社員がそういってたぜ。ギュンターと嫁さんだ。お前も顔くらい知っているだろ?」

「タラリオン王国領土の東――東沿岸部は魔帝国の攻撃で焦土になった。二年前の開戦時だ」

「それがどうした?」

「シルヴァ・ファン・アマデウスの出自は、どうやら、東沿岸部にあった大都市――アンフィトリテらしい。今はその周辺一体も廃墟か焼け野原だ。俺の生まれも王国の東の土地だった。中央大草原街道沿いだ。大した特徴もない田舎街でな。牛だけは多かったが――」

 ギルベルトの故郷と家族は戦火に消えた。

「――なるほどな。シルヴァの記録も関係者もみんな戦争で焼けちまった。だから、奴の身辺調査が思うように進んでいないのか」

 無表情というよりも表情を意図して消したギルベルトから視線を外して、ツクシは自分の杯へじゃがいも酒をゆっくり注いだ。

「簡単にいうと、まあ、そうなる」

 ギルベルトが唇の端を歪めた。

「シルヴァは敵国から――魔帝国から侵入している破壊工作員スパイの可能性があるってことか?」

 ツクシが酒の杯に口をつけながら訊いた。

「十分、考えられる」

 ギルベルトの声が低くなった。

「それで、ネスト管理省は――騎士様連中は、ピリピリしてるのかァ?」

 唸ったのはゴロウだ。

「それが俺たちの仕事だ」

 ギルベルトが自分の眉間を人差し指でとんとんと叩いた。

 会話が途切れたところで、

「ゲロゲロ。テト、テト。ゲッコ、オ水、オ水!」

 ゲッコがゲコゲコ注文した。

「もう、ゲッコ、お水くらい自分で持っていってよね――」

 テトがブツクサいいながら、水のピッチャーを片手に寄ってくる。

「ココ河違ウ。店ノ物、勝手ニ採ル駄目。ゲッコ、師匠カラソウ云ワレタ。ゲコゲコ」

 ゲッコが小さなバケツほどの大きさがあるゲッコ専用タンブラーをテトへ突き出した。

「わたしが面倒じゃん。水は好きなときにもっていっていいよ。ゲッコはウチの常連さんなんだし――」

 テトは笑いながらゲッコのタンブラーへ水を注いだ。超好戦的かつ凶暴で大トカゲの容姿ではあるが生真面目な性格のゲッコをテトは贔屓にしているのだ。

 テトが卓へピッチャーを置いて離れたあとで、

「ギルベルト、俺に何をいいたい?」

 ツクシは残りの容量が三分の一になったじゃがいも酒のボトルを眺めている。

「ツクシ、シルヴァ・ファン・アマデウスに警戒しろ」

 ギルベルトがグラスに口をつけていった。

「おいおい、ふざけるな。雇われの鉄砲玉はやらねェぞ?」

 ツクシが唸った。

「ほう、ツクシはシルヴァを恨んでいないのか。奴の所為で随分と死んだのだろう?」

 ギルベルトは水で濡れた唇の端を歪めた。

「それでも、雇われの鉄砲玉は断固としてお断りだ。俺の仕事は殺しじゃあねェ。あくまでネストの探索だからな」

 顔を歪めたツクシはじゃがいも酒の瓶を手にとった。

「俺は貴様に注意を促しただけだ」

 ギルベルトは乱暴に杯へ酒を注ぐツクシを見つめた。

「トボけやがって。お前、俺を煽ってるだろ。その手には乗らないぜ」

 ツクシが悪い酒の杯を呷った。

「いや、この警告は俺の純粋な親切心からだ――」

 ギルベルトは顔を横に向けている。

「抜かしやがって、クソが――」

 ツクシも顔を背けている。

「どの道、ツクシたちがネスト探索者として活動していれば、いずれ奴らと衝突するだろう」

 ギルベルトがツクシへ視線を戻した。

「――それを、お前らは期待しているのか!」

 ツクシは空にした杯の底を卓へ叩きつけた。

「どうかな」

 ギルベルトはグラスの水を全部飲み干した。

「――クソッ。三ツ首鷲の連中は、どいつもこいつも、みんな信用ならねェぜ」

 ツクシは自分の杯へどぼどぼじゃがいも酒を注ぎ込んでいる。

「悪く思うな。これが俺の仕事だ。そろそろ失礼する。とにかく、シルヴァには気をつけろ、ツクシ。ゴロウ、それにゲッコもだ」

 ギルベルトが席を立った。

「あァ、騎士様。魔人族、かァ――」

 ゴロウは腕組みをして太い眉根を寄せている。

「ゲロゲロ」

 ゲッコがギルベルトへ目を向けた。

「ギルベルト、お前もせいぜい元気でやれよ」

 ツクシがいった。

「――フン」

 ギルベルトは赤い唾広帽子を頭に乗せると踵を返した。

 俺より若い奴に死なれると、辛気臭いからな――。

 ツクシは胸中で呟いて、またじゃがいも酒の杯を呷った。その横でゴロウも黙ってワインの杯を呷った。戦闘中でないときのゲッコは口を半開きにして、ボケっと目の前の空間を見つめている時間がとても多い。今もそうだ。ツクシたちの他に客がいない酒場宿ヤマサンは静かだった。

 テトはカウンター席で熱心に読書中である。

「――なァ、ツクシ」

 ゴロウが沈黙を破った。

「あ?」

 ツクシが不機嫌で応じた。

「あのよォ、ツクシ。さっきの話の続きなんだけどよォ――」

 ゴロウが語ったのは先ほど喧嘩になったときと同じ内容だった。要約すると、「三人だけの班で、ネスト探索を行うのはもう限界ではないのか」と主張するゴロウの話である。

「――だから、もう一度、リュウたちと合流することも考えろ。そろそろ許してやれ。ヤマのことは不運もあった。あいつらだけの責任じゃねえ。そのついでに、ゾラや、アドルフや、ボゥイに声をかけてもいいだろ」

 どうも口ぶりやその態度を見るにつけ、ゴロウもゴロウでアマデウス連合に参加することは気乗りしない様子だった。ネストダイバー連合の崩壊直後、スロウハンド冒険者団の団員たちから聞いた話だ。団長のロジャーはシルヴァの手で抹殺されたらしい。ロジャー団長は人望が厚かったし、彼の死を語っていた団員たちは全員が怒り心頭の面持ちだった。だが、シルヴァを恨んでいる筈のスロウハンド冒険者団も今はアマデウス連合の傘下で活動している。

 この点、ゴロウは納得がいかない。

「どうも、あれはキナ臭いぜ。あいつら、何か腹に一物あるんじゃねえかなァ」

 ツクシは黙ってゴロウの話を聞き流していた。

「じゃあ、ツクシ、考えておけよ。俺ァ、一足先に地上へ帰る。往診があるからなァ」

 ゴロウが暖簾に腕押しの説得を終えて席を立った。卓にあった大きな赤ワインのボトルは空になっている。

「ああ、そうかよ」

 ツクシが顔を上げずにいった。

 銘柄のない酒の瓶――じゃがいも酒の瓶も空である。ネスト探索を終えたあとは二日間の休日をとる。このサイクルだけはツクシの探索班が三人だけになった今も変わらない。ゴロウの本業の都合もあったが、三人だけのネスト探索は疲労の蓄積が前よりずっと多いのだ。夜警を担当しているゲッコは椅子の上で身体を左右に揺らしていた。目を開けたままだが、これは居眠りをしているようである。ゲッコも疲れている。

 ツクシも疲労が手伝って飲んだ酒が顔に色をつけていた。

「おい、テト、スペシャルのボトルをもう一本――あ?」

 ツクシは卓に出現した青いボトルを見つめた。

「ツクシ、グラッパは嫌いか?」

 ボゥイがツクシの背後に佇んでいる。猫人族のボゥイは敏捷性が高い。他人から気配を気取られる前に接近することも容易だ。

「ボゥイ団長さんか。仕事はどうしたんだ。アマデウス連合の奴らはまだ階下したにいる筈だろ?」

 ツクシが赤らんだ顔を上げた。アレス団長亡きあと、ボゥイがヴァンキッシュ冒険者団の団長になった。もっとも、度重なった死闘で、団員の数を半分以下にまで減らしたヴァンキッシュ冒険者団の組織はほとんど形骸化しているようであったが――。

「――休暇だ」

 ボゥイ団長が笑った。

「へえ、ボゥイ、随分と余裕があるじゃねェか。アマデウス連合はそんなに儲かってるのか、あ?」

 ツクシが唸った。美しい微笑みを浮かべた猫人青年の前にしても、ツクシは不機嫌を持続している。ボゥイ団長は猫人の美青年なのだ。美青年の笑みは魅力的である。ただ、いつも横を向いて他人ひとと話す癖があるので、普段は不貞腐れた若者といった印象のほうが強い。言葉遣いも少し乱暴である。

「いつも通り、機嫌が悪そうだな、ツクシ」

 ボゥイ団長は笑顔のままだ。

「ああ、その通りだぜ、ボゥイ。今日も最悪の気分だ。それがどうした?」

 ツクシは猫の青年の笑顔から顔を背けた。

「話がある」

 ボゥイ団長がツクシの横の椅子を引いた。

 ついさっきまでゴロウが座っていた席だ。

「こっちは話すことなんて何もねェぜ――」

 ツクシがグラッパのボトルに手を伸ばした。それが消える。ムッと不機嫌を増したツクシが顔を上げると、グラッパの瓶はボゥイ団長の手にあった。

 お預けをくらったツクシはボゥイ団長の横顔をギリギリ睨みだした。

 ボゥイ団長はそ知らぬ顔だ。

 ちょっと睨みを利かせたあと、

「おう、ボゥイ。ここまできてケチな真似をするんじゃねェよ。目の毒だろ――」

 ツクシが先に折れた。この男は酒と女が絡むとすぐ折れるのだ。

「ツクシ、俺の話を聞け」

 ボゥイ団長がツクシの杯へグラッパを注いだ。青いボトルからツクシの杯へ届いたそれは濃い茶色の色合いだった。樽でしばらく原酒を寝かせたものらしい。高級品だ。目を見開いたツクシが急いで杯へ口をつけると、舌先から喉元を通り抜け胃の府まで蛮性を叩き込むジョナタン特製じゃがいも酒とは比べ物にならない上品な味わいだった。

「ボゥイ、頼まれてもやらねェぜ。雇われの鉄砲玉なんてよ」

 ツクシはぶどうの甘さと酸味とまろやかな酒精を舌に残しつつ、それでもまだまだ不機嫌な顔で唸った。奢られた酒の杯は両手で大事に包んでいる。「アマデウス連合にヴァンキッシュ冒険者団とスロウハンド冒険者団が参加しているのはどうもキナ臭い」ついさっきもゴロウがいった。ツクシも同じ考えだ。過去に一度、怒りに任せた行動を起こし、一度に何十ものひとを殺めた経験があるツクシにはすぐ察しがついた。

 ボゥイ団長が来訪した目的もわかっている。

「悪いな、テト」

 ボゥイ団長はテトの手で置かれた空の杯へいった。

「ボゥイ、本当は外からお酒の瓶を持ち込むの絶対ダメなんだからね!」

 テトはぷりぷりしながら背を向けた。

「ふーん。やってくれんのか。ツクシ、俺はお前を見損なったぜ」

 ボゥイ団長は声を出さずに笑いながら高級グラッパを自分の杯へ注いだ。

「勝手に俺を見上げてるんじゃねェって話だろ――」

 腕組みをしたツクシの杯へ、ボゥイ団長がグラッパを注ぎ込んだ。

 なみなみとだ。

「おい、ボゥイ。話はこれで終わりだ、もう帰れ」

 ツクシは顔を歪めたが、その手は杯へ伸びる。

「ツクシ、お前にまったく儲けのない話だ。最初ハナから俺たちはいい返事を期待していない。だが、聞くだけは聞いておいてくれ――」

 ボゥイ団長が杯に口をつけて声を低くした。

 舌打ちをしたツクシは、しばらくの間、手にもった酒の杯を睨んでいたが、結局、それに口をつけた。

 椅子の上で左右に大きく揺れだしたゲッコは完全に寝入っているようだ。

 密談はしばらく続いた。

 杯の縁を噛むツクシの目つきがひと斬りのそれに変わった。

 飲んでも飲んでも、その男の酔いは醒めてゆく。

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