十章 地下二五〇〇メートルの復讐劇

一節 彷徨する死神

 ネスト管理省は新たに確認された犬型異形種の識別名を『異形犬コボルト』とした。そのコボルトの大群がアマデウス連合レイドの連合第一戦闘班を襲撃中だ。導式機動鎧装備の男たちとドワーフ戦士が前面に出て巨大なポール・アームを振り回しコボルトを撃退している。突出してきたコボルトへは、後方に控えた人員三百名余の銃班が鉛弾を浴びせかけた。

 場所はネスト地下十階層、上がり階段付近の北西区。

 現在、北西区に展開して探索データ収集中のアマデウス連合左翼を守るのは、エッポが率いる人員四百名余の連合第一戦闘班だ。

 この場の戦闘は連合の優位に進んでいるように見えたが――。

「マンマァァァァァアァァァァァァァァアアァアアッァアアアーッ!」

 絶叫が戦場に響いた。大通路を横一杯に埋めたコボルトの大群の奥だ。首輪から何本もの鎖を下げた巨大なひと影がぬるりと出現する。

 この白い巨人にネスト管理省がつけた識別名は『不死身の白子グレンデル』になる。


「――犬どもはまたグレンデルをつれてきたか。導式術兵ウォーロックはさっさと東へ展開しろよ。導式陣砲収束器カノン・フォーカスで仕留めるんだ。急げオラ!」

 エッポが怒鳴った。

「導式鎧組とドワーフ戦士は、コボルトどもをしっかり抑えてくれよ!」

 導式術兵ウォーロックが十人、銃班の隊列から飛び出した。展開した導式術兵は両手に装着した導式陣砲収束器カノン・フォーカス――一二年式クアドラ・バースト・エヴォーカーを準備機動させた。可変型の上部フレームが後方へずれて光球射出口が露になる。側面に丸く並ぶ導式機関の可変ジョイントが回転して撃ち出す導式陣砲を指定。動作を終えた収束器が導式の閃光を吐き出した。投射された光球炸裂弾が石壁と石床、それにグレンデルの巨体へ着弾する。

 ドゥン、ドゥン、ドドン――。

 炸裂と炸裂音が大通路を揺るがし粉塵が戦場の視界を遮った。導式術兵が投射したのは新式の導式陣砲収束器に実装された導式の砲弾だ。爆発に巻き込まれたコボルトが悲鳴を上げて転げ回っている。

「マ、ン、マァァァァァァァァァァァァァァァァアーッ!」

 白い肌を血で染めたグレンデルが絶叫しながら連合第一戦闘班へ向かって突っ込んできた。グレンデルは鎖を持ったコボルトを何匹も引きずっている。白い暴走機関車のような有様だ。

「しまった、グレンデルの心臓は無傷か!」

 導式術兵の一人が呻き声と一緒に導式ゴーグルを額へ押し上げた。

「馬鹿どもが、外しやがった。ドワーフ野郎どもはすぐ下がれ!」

 エッポが怒鳴り散らしながら後ろへ下がる。ドワーフ戦士があとに続いた。そのなかにはアマデウス冒険者団に吸収された北北西互助会のドワーフ戦士の姿もある。これを好機と見たコボルトの軍勢は、ねじくれた槍の穂先を並べて前へ出た。黒いβ型導式機関鎧装備の男たち三十名余は最前線に留まって戦っている。

 エッポはヒト族へ撤退指示を出していない。

「導式術兵は何をしている、早く次を撃て!」

 黒いβ型導式機動鎧で身を固めた男が、コボルトの一匹を大斧槍で切り伏せて怒鳴った鎧の色を見ると、この彼はスロウハンド冒険者団の団員のようだ。

「クアドラ方式の収束器は準備機動が長いんだ、知らねえのかよ、くそったれ!」

 導式術兵の若い団員が怒鳴り返した。

 この彼もスロウハンド冒険者団の団員だ。

「ここはグレンデルの視界を奪って時間を稼ぐ、もう一発――ああっ!」

 導式陣砲収束器を構えた導式術兵の若い男が悲鳴を上げた。突進してきたグレンデルが、その巨大な拳を突き入れたのだ。導式術兵の彼は一瞬で肉塊に変わった。

 暴れるグレンデルの背後からコボルトが次々突進してくる。

「だっ、駄目だ!」

「隊列が崩れた!」

「エッポ、戻って戦線を維持してくれ、俺たちはまだやれる!」

 最前線で頑張っていた黒いβ型導式機動鎧の団員たちが怒鳴った。

「――クソマヌケのヒト族どもはまったく使えんよなあ――おい、イーゴリ。連合本部へ第一戦闘班の撤退を通達してくれ。ドワーフ野郎どもはこのまま西へ退避だ」

 前方の乱戦を眺めていたエッポが白い髭面を後ろへ向けた。

「うん、そうか、撤退か――」

 暗い声で応じた茶色い髭面のイーゴリが左の重手甲ガントレットに付属している導式具を使って導式鳥を作った。

 導式鳥が飛んだのを確認して頷いたエッポは、近くで待機していた銃班――ヒト族で構成された三百名余へ、

「銃班は下がるなよ。俺とドワーフ野郎どもの撤退を最後まで支援を――」

 非情な命令は途中で止まった。

「邪魔だぞ、このクソ樽野郎。さっさとそこをどけ。それとも何か、手前てめえは俺の手でブチ殺されるのが希望なのか、あ?」

 地獄から響いてくるような低い声だ。

 エッポの白い髭面が絶対零度の温度で凍りつく。

 エッポの背後にいたのは、ワーク・キャップを頭に乗せた中年男だ。前にだけせり出した鍔の下で二つの三白眼がギラギラ光っている。その剣帯からは黒い鞘に納まった日本刀が吊ってあった。

 ツクシである。

「ゲッロゲロ――」

 横にいたゲッコが口角を歪めて腰の偃月刀を引き抜くと、エッポはギクシャクと後ずさりして進路を譲った。

「はァ、こりゃあまた派手に死んだなァ?」

 ツクシの後ろから髭面を覗かせて、ゴロウがニヤニヤ笑った。

 ネストダイバー九班の三人が登場した。

 ネストでは民間最大の勢力となったアマデウス連合レイドへ、真正面から断固として不参加を表明した、総勢で三人だけの反逆者たちレジスタンス――。

「――お、お前らは!」

 エッポが掠れた声を絞り出した。

「で、出た、出たぞ――!」

「死神だ!」

「死神クジョー・ツクシだ!」

「死神の班が来てくれた!」

「助かったぜ、俺たちは生きて帰れる!」

 銃班の男たちが騒ぐ。

「ああよォ、おめェらのなかに怪我人はいねえか? 俺が全部まとめて面倒を見てやるぜ。殺してでも銭は取るがなァ」

 歯を見せて笑うゴロウが営業を始めると、不機嫌な顔をもっと歪めたツクシはむっつり黙って戦場へ歩を進めた。ゲッコがそのあとに続く。ツクシの視線の先でコボルトの軍勢とグレンデルが撤退しそびれたひとびとを追い回している。ツクシは歩きながら魔刀の柄へ右手をかけた。

 その足元を中心に虹色の殺陣さつじんが発現する。

 虹色の煌きに包まれた死神が薄暗がりの翼を広げた。

 金剛界大曼荼羅殺人剣。

 ねじくれた槍の穂先でツクシを捉えていた筈のコボルトの大群が「グゲエッ!」と声を上げて動きを止めた。虹をその場に残してツクシの姿は消失している。零秒後、コボルトの大群の中心にツクシが出現。虹の光が大気に満ち満ちた。展開された虹色の殺陣の範囲内で、死神の手元から決死の断線が乱れ飛ぶ。

「デ、デギッ――」

 吼えたコボルトの首がすっ飛んだ。

「ギ、ギゲンナ――」

 喚いたコボルトの顔が二つに割れる。

「ゴロゼ――」

 唸ったコボルトの上半身と下半身が離別した。

「マンマノデギ――!」

 叫んだコボルトの腹が斜めに割れてどぼどぼ内臓が垂れ落ちる。

「ギャン!」

「ギャア!」

「ギャ、ギャン!」

「ギャアアア!」

 コボルトの断末魔、断末魔、断末魔、断末魔。

「マ、ン、マァァァ――!」

 絶叫の途中でグレンデルの頭が落下して白い巨体が縦に割れた。

 天から血の雨、地に臓物。

 それでも止まらない。

 白い刃を携えたその死神は虹の光を散らして跳躍を続ける。

 そのときどきで殺しの化神は複数に見えた。

 見る見る間に辺り一面は血の海になる。


「あぁあっ、もう、ホントにすげえ、何だこれ――」

 銃を抱えたのっぽの若者が開いた口は閉じる気配がない。

 そのまま顎が外れそうだ。

「おい、あれを見たか。一瞬でグレンデルを叩き斬った」

 背の低い中年男が銃口を下ろした。もう発砲する必要がないのだ。グレンデルを失ったコボルトの軍勢は戦意を失って逃げ回っている。

「あ、あのヒト族野郎、まだやるつもりだぞ――」

 ドワーフ戦士の一人が呻き声を上げた。脇道へ逃げ込もうとしていたコボルトの集団である。その先の座標に出現したツクシが何か聞くに堪えないようなことを怒鳴りながら、逃亡を試みたコボルトを千々に斬り捨てた。大通路では逃げるコボルトの背へ、ゲッコがゲコゲコ笑いながら偃月刀を振り下ろしている。

 とにかく凄惨だ。

 死神と竜人が異形犬を一方的に虐殺している。

「ツクシさんたちだけで、あの数を全滅させちまうな」

 歩いて戻ってきた黒い導式機動鎧を着た男が兜の面当てを上げた。

「前に見たときより、ツクシは凄くなっていないか?」

 その横に並んでいた導式術兵の中年男が血の海で佇む死神を見やった。

 ツクシが魔刀で虚空を薙ぎ払った。

 魔刀が身震いをして返り血を飛ばす。

 ただそれだけの動作で、その刃には穢れなき輝きが復活していた。

 大通路の敵影はすべて消えている。

「ツクシ、こりゃあ、かなりの銭を稼げたぜえ!」

 小アトラス片手のゴロウが満面の笑みでツクシに歩み寄った。

 異形種の討伐数は小アトラスに記録される。

「ゲッゲッ、流石、師匠。イツ見テモ美事ミゴト業前ワザマエ

 ゲッコがツクシの殺戮を絶賛した。

 アマデウス連合の第一戦闘班は離れた場所で三人の男を見つめている。

 ツクシたちは二言三言の会話を交わしたあと、大通路の脇道へ揃って姿を消した。

 彼らは彼らのネスト探索を続行する様子である。

「――クソめらが。俺たちの稼ぎをまた減らしやがったな。イーゴリ、連合本部へ第一戦闘班の撤退の取り消しを連絡しろ」

 悪態と一緒にエッポが横にいたイーゴリへ視線を送った。

 隻眼のエッポは視線がひとつしかない。

 頷いたイーゴリが導式鳥をもう一度飛ばした。

 コボルトの異形種討伐金は、一体につき銀貨五枚。

 グレンデルの異形種討伐金は、一体につき金貨十枚。

 これがネスト管理省の設定した報酬である。

 命を賭けるのに安いのか高いのか――。


 §


 場所はネスト地下十階層の北西区の中央。東西に走る大通路と南北に走る大通路が交錯した十字路だ。

「シルヴァ、東に例の三人組が出たみたい」

 肩に導式鳥を乗せたレオナ副団長が報告した。

「面白くないよな」

 顔を歪めたシルヴァ団長が見やった先で、レオナ副団長の肩にいた導式鳥が光を散らして消えてゆく。

「全体、移動やめ。この場で待機!」

 レオナ副団長が鋭く声を上げると、東へ移動するために準備をしていたアマデウス連合本部三百名余が足を止めた。

「――東にいるのは、ツクシたちかの?」

 シルヴァとレオナの後ろでシャオシンが呟いた。

「他にいないだろうな」

 応えたのはリュウである。

「今日はツクシさん、グレンデルを何体仕留めたのでしょう?」

 フィージャが舌をてふてふ突き出した。

「何体なんじゃろうな――」

 シャオシンが視線を落とした。

「さあな――」

 リュウも足元へ視線を落としている。

「シルヴァ、ネストダイバー九班はアマデウス連合へ被害を与えていないわ。それに彼らはたった三人だけの班よ。連合の人員を引き抜いているわけでもないし――」

 レオナ副団長が連合本部を見回した。

 現状、ネストで探索活動をしている連合レイドはシルヴァ団長が主導するアマデウス連合のみとなった。連合傘下にいるものは千名を超えたが、それでもまだ参加希望者は数多い。他に受け皿がないのだ。連合の中心的な役割を担っているアマデウス冒険者団本体も先日、コボルトとグレンデルの攻撃を受けて壊滅寸前に追い込まれた各団体を吸収し団員を増やした。

 これは、シルヴァ団長が以前に望んだ通りの結果である。

「――うん。そうだよな」

 シルヴァ団長が渋々の態度で頷いた。

「だから、シルヴァは苛々しないで、ね?」

 レオナ副団長が猫なで声でいった。

「でも、俺は面白くないんだよ。探索者どもはあの男を――クジョー・ツクシをまるで――」

 シルヴァ団長が呻いた。

 その三人組はネスト探索者たちの間で英雄のように語られている。

 カントレイアの英雄は俺だけで、俺ただ一人だけでいい――。

 シルヴァ団長の顔に貼りついていた空白の笑みが憎悪の炎でめくれ上がった。

 レオナ副団長がシルヴァ団長へ微笑みながら身を寄せたところで――。

「――北から来るぞ!」

 走りながら、ニックが怒鳴った。

「異形犬の大群と!」

 その横を走るリッキーが叫んだ。

「グレンデルが二体だッ!」

 最後を〆たのはハーヴェイだ。

 逃げ足の速いベリーニ三兄弟は撤退時にいつも先頭にいる。南で探索データを収集していた第四探索班が走って撤退中だ。連合本部が滞在している十字路から見て南の遠くに、コボルトの軍勢とグレンデル二体の姿が見える。

「シルヴァ、早く気持ちを切り替えて、貴方の仕事よ」

 レオナ副団長が笑みを消していった。

「そうだな、フーッ!」

 シルヴァ団長が大袈裟な溜息を吐いて前髪を揺らした。

「アドルフ団長。導式術兵ウォーロックと一緒に十字路の南へ展開。導式陣砲収束器カノン・フォーカスでグレンデルへ対応。ゾラ副団長は導式鎧組をまとめてを指揮。導式術兵の班を援護しろ!」

 レオナ副団長が黒のシンボル・カラーで装備の色を統一した集団へ命令した。

「ああ、いわれなくてもわかってるぜ。レオナ『団長』さんよ」

 強面の中年男がぞんざいに応じた。この彼はスロウハンド冒険者団の元副団長で、今は団長となったアドルフである。

「アドルフ、そんなにわかりやすくレオナを煽るな」

 近くにいたゾラ副団長がアドルフの耳元で囁いた。

「アドルフ団長だろ、ゾラ副団長さんよお。おい、収束器フォーカス持ちは俺についてこい」

 仏頂面のアドルフ団長が周辺の団員を促しながら移動した。各々不揃いな返事をした団員十名がそのあとに続く。彼らは全員、対グレンデル用の光球炸裂弾を撃ち出す導式陣砲収束器――一二年式クアドラ・バースト・エヴォーカーを携帯した導式術兵ウォーロックだ。

「団長ね。ロジャーみたいな貫禄はアドルフにまだないよね」

 横を歩くゾラの減らず口である。

「うるせえぞ、ゾラ――」

 アドルフ団長は呟くようにいった。

「レオナ、奴らは第一戦闘班か第二戦闘班へ配属した方が良かったんじゃないか。連合本部の戦力が過剰だよ。この俺だっているわけだしな――」

 シルヴァ団長はアドルフ団長のゾラ副団長の背中を眺めていた。

「スロウハンド冒険者団のこと?」

 レオナ団長が北を見やった。ねじくれた槍を掲げたコボルトの隊列が大通路を横一杯に埋めている。連合本部に配属された探索者たちが、それぞれ緊張した面持ちで走り回って、これから発生するであろう戦闘に備えている。

「――うん、そのスロウハンドだよな。スロウハンド冒険者団の連中って元は全員がタラリオン王国の軍人なんだろ。ゾラの経歴だけは、よく知らないが――」

 シルヴァ団長が伸びてきた前髪を指でつまんで気にしながらいった。

「シルヴァ、それだからよ。スロウハンドの連中はまだ私の目が届く場所に置いておきたい」

 レオナ副団長は呟くように応えた。

「レオナは心配性だよな。あいつらが揃って俺に牙を剥いても――だろ?」

 シルヴァ団長が導式剣の柄に手をかけて空白の笑みを見せる。

「それより、私は彼女たちを第一戦闘班に配属したかったのだけど?」

 レオナ副団長は十字路で編成中の隊列に自主的な判断で交じった三人娘へ視線を送った。

「彼女たちって――ああ、シャオシンたちのこと?」

 シルヴァ団長が笑いながら、シャオシンの背へ目を向けた。

「あの若い――ホァン・シャオシン? 少なくとも導式の照明を作るのは得意でしょ。リュウは治癒の導式が使えるし、フィージャはコボルト相手の戦闘が得意だわ。第一戦闘班には導式が得意な人材がいないから――」

 レオナ副団長はシルヴァ団長の若い横顔を見やった。

「いやあ、シャオシンは俺の近くに置いておきたいんだよ。金髪お団子は文句なしに可愛いだろ。金髪のハーレム要員っていくらいてもいいよなあ、やっぱりなあ――」

 シルヴァ団長の声は粘着質な響きだ。

「へえ、ああ、そうなんだ。へえ、そう――」

 レオナ副団長は眉間を冷やした。魔人族ディアボロスが持つ種族的な特性だ。青年期が極端に長く、その若い性欲を持て余しがちなシルヴァ団長の浮気を彼の恋人でもあるレオナ副団長は、あるていど容認をしているが、好き放題を許しているわけではない。

 性奴隷はエレミアとチョコラだけでもう十分だろ――。

 レオナ副団長はそう考えている。

「あっ、ああ、そうだ。俺もそろそろ北へ行って戦闘の準備をしなきゃな!」

 シルヴァ団長がレオナ副団長から離れていった。

「ジャン=ジャック組合長は銃班をはやくまとめろよ。十字路中央に隊列を作れ。モタモタするな!」

 レオナ副団長が怒鳴り散らした。

 八つ当たりである。

「あ、ああ、わかってる。レオナ副団長。い、今、やってるから――」

 付近でウロウロしていたジャン=ジャック組合長が硬い声で応えた。

 そのうちに、光球炸裂弾の爆音が響き渡った。

 コボルトの悲鳴。

 男たちの怒号。

 発砲音、発砲音、発砲音――戦場になった大通路の視界が硝煙と爆炎と黒煙で遮られる。胸に光球炸裂弾の直撃を受けて泣き叫んでいたグレンデルの首に虹色の光が奔ると、その巨大な顔面が落下した。

 アマデウス連合本部の歓声が上がる。

 歓声に包まれたシルヴァ団長は「アッフーッ!」と大袈裟な溜息を吐いた。

 グレンデルに止めを刺したのは、シルヴァ団長の亜空間斬撃だった。

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