二十節 新緑の如く
晴天である。
土竜月の上旬の空は眠気を誘うような穏やかさだった。気温は高く、厚い上着は必要ない。喪服で身を包んだツクシは、淡い雲がアクセントを加えた春先の青空へ視線を送って、
『日本人、山田孝太郎、
墓標にはエスト・オプティカ語と日本語の双方でそう刻まれていた。日本語のデザインをドワーフ族の石工職人へ伝えたのはツクシだ。職人肌の彼らは細かいことを訊かずに、ヤマダの墓標へ指示された通りの文字を刻んだ。
本日はヤマダの葬儀である。
参列者は多かった。女衒街にあったヤマダの定宿の経営者である老夫婦。ゴルゴダ酒場宿からは漆黒のドレスで巨躯を包んだエイダが代表して顔を見せた。ボルドン酒店の従業員は百名に近い団体で参列した。そのなかにトニーとその妻アナーシャの姿もあった。トニーは葬儀の最初から最後までグズグズ泣いていた。アナーシャは暗い顔でずっと視線を落としていた。その腕のなかで彼女の息子が――チコがすやすやと眠っている。トニー夫妻の近くでメンドゥーサ一家が身を寄せ合っていた。葬儀の最中、太った短躯を喪服で包んだボルドンはヤマダの亡骸や、ヤマダの棺や、ヤマダの墓に向かって、ずっと文句をいっていた。
「馬鹿野郎、だから、ネストへ通うのはもう止せと、俺は何度もお前にいったんだ」
ボルドンは続けた。
「大馬鹿だ、ヤマは大馬鹿だな」
ボルドンが唸った。
「何が『僕はニホンへ必ず帰る』だ」
テラテラと光るボルドンのハゲ頭が真っ赤になっている。
「それ見たことか。お前はニホンへ帰る前に、墓へ入っちまったじゃあないか」
ボルドンが歯噛みした。
「俺たちの店は随分と大きくなっただろ。銭はたんまり稼げる。女も囲った筈だ。それなのに、ヤマ。お前は何の不満があったんだ?」
ボルドンが大きな溜息を吐いた。
「お前に不満なんてなかった筈だろ。そうだろう?」
ボルドンが呟いた。
「だいたい、お前。俺たちの店の仕事は、これからどうするつもりだ」
ボルドンが苦笑いを浮かべた。
「おい、俺だけじゃ駄目なんだよ。ここまで店を大きくできたのは、ヤマ、お前が頑張ってくれたからなんだ――」
ヤマダの墓前へ、ボルドンがよろよろと歩み寄った。
「俺にもわかってたんだよ、そんなことはなあ!」
ボルドンが怒鳴った。
「おい、ヤマ、この野郎。へっ、返事をしろよ」
ボルドンの声が震えだした。
「おっ、王都で俺たちはずっと一緒にやってきただろ」
ヤマダの墓へボルドンが手をかけた。
「おっ、俺を置いていくなよ、ヤマァ!」
ボルドンが絶叫した。
「なあ、ヤマ、ヤマよお、俺はどうすりゃあいいんだ!」
ヤマダの墓に抱きついて、とうとうボルドンが泣きだした。
男泣きも男泣きである。
葬儀の参列者は泣き喚くドワーフ族の社長を黙ったまま見つめていた。
午前中に行われたヤマダの葬儀は終わり、昼どきになると墓の前からひとはほとんど消えた。
「――賑やかな葬式だったな」
最後までヤマダの墓前に残っていたツクシが呟いた。
その後ろにゴロウとゲッコが佇んで、ヤマダの墓を見つめている。広大なゴルゴダ墓場の小春日和は静かだった。
冬は去り春が訪れる。
新緑の匂いを運ぶ、やわらかな風が、ヤマダの墓を囲った献花を揺らしてそう告げていた。
「あァ、いい葬式だった。ヤマは酒屋の仕事の関係で付き合いも多かったからなァ」
ゴロウが白い丸帽子を手にとった。
「見送リ賑ヤカニスル。死ンダ戦士ヘノ礼儀」
ゲッコがゲコゲコいった。しっぽ含めて五メートル以上の身体に合う喪服が調達できなかったゲッコはいつも通り甲羅の胴鎧姿だ。武器は宿に――銭湯のボイラー室に置いてきた。
「へえ、トカゲの葬式はそんなに賑やかなのか?」
ツクシがヤマダの墓を見つめたまま訊いた。
「ゲロロ。戦士ヲ送ル、涙ハ禁物」
ゲッコが応えた。
「ヤマは戦士かァ――」
ゴロウが呟いた。
「死ヲ恐レズ最後マデ戦タ。ヤマ、尊敬デキル戦士」
ゲッコが頷いた。
「そうだな、それは間違いねェぜ。ヤマさんは立派に戦っ――ん?」
振り向いたツクシが白い墓が立ち並ぶ丘を上がってきた二つの黒いひと影に気づいた。黒い
「――ミシャとローザか」
ゴロウが髭面に小さな笑みを浮かべた。
「ゲロゲロ?」
振り向いたゲッコが疑問符をつけて鳴いた。
「ト、トカゲ?」
「うあっ! ゴ、ゴロウちゃん、何なの、この大きなトカゲ!」
白い献花の束を抱えて歩いてきたミシャとローザが目を見開いた。娼婦姉妹はリザードマン族のゲッコに驚き、かつ、とても警戒している様子だ。
「まァ、いきなり噛みつきはしないだろうぜ」
ゴロウが歯を見せて笑った。
「ほれ、ゲッコ、挨拶しろ。この姐さんたちは、ヤマさんの知り合いだぞ」
ツクシが促すと、
「ゲコゲコ。ハジメマシテ、ヒト族ノ雌野郎ドモ。我ハ、ゲッコ・ヤドック・ドゥルジナス。ゲッコ、デイイ」
ゲッコがトカゲの顔を下げながら、丁寧なのだか失礼なのだか、よくわからない自己紹介をした。
「――ゲッコ。やっぱりトカゲっぽい名前なのね。私はミシャよ。ミシャ・ヴァイオレット」
ミシャはゲッコから適当な距離を取りながら挨拶を返した。
「わっ、私はローザ・ヴァイオレット。よ、よろしくね、ゲッコ――ねえ、ゴロウちゃん。このゲッコはどういう種族なの。もしかしたら、これが噂になってるネストの異形種ってやつ?」
姉よりもう一歩後ろに下がったローザも震え声で挨拶を返したあと、ゴロウへ顔を向けた。
ゴロウはニヤニヤ笑っている。
「へえ、お前らも来たのか」
ツクシがヤマダの墓前を娼婦姉妹へ譲った。
「葬儀に娼婦が来ちゃ悪かった?」
膝をついて墓前へ花束を置いたミシャが溜息のような視線をツクシへ送った。ローザの横で膝を折ったローザもヤマダの墓前へ花を供えた。
ヤマダの墓前は献花で渋滞中である。
「姐さんは随分とムシり取ったんだろ。ヤマさん、いつもフラフラだったぜ?」
ツクシが非難がましい口調でいった。
「コータロのこと?」
ミシャが首を傾げた。
「ああ」
ツクシは顔を歪めた。
「いいお客さんだった」
ヤマダの墓を見つめてミシャがいった。
「ほう、お客さんかよ。商売女は
ツクシは呆れ顔だ。この中年男はさほど女性に対しての幻想を抱いていないので憤っているわけでもない。
「娼婦は客に惚れないわ――」
ミシャが小さく笑った。影のある微笑みである。
「へえ、ゴロウよ。
ツクシがゴロウの髭面を刺すように睨んだ。
「この姉妹はなァ、昔っから筋金入りの
ゴロウはツクシの超不機嫌な顔から視線を逃がした。
「その筋金入りの悪い女どもを誰がヤマさんに紹介したんだ、あ?」
ツクシが顔を近づけてゴロウをギリギリ睨む。
「さ、さァなァ、だっ、誰なんだろうなァ――」
ゴロウは右と左の視線を競争させていた。
「――ツクシ、怒ってるの?」
ミシャが訊いた。
「そんなことはねェさ」
ツクシはムッと不機嫌に応えた。
「そう?」
気のない調子でいって、ミシャはまたヤマダの墓を見つめた。
睨んでいるような眼差しである。
「俺は怒ってねェぜ。あっちへ逝ったヤマさんはどうだか知らんがな――」
ツクシはミシャの横顔から視線を逸らした。
「私は怒ってる。コータロ、勝手に死んじゃって、本当に困るわ――」
ミシャが呟いた。
「へえ、ミシャはヤマさんに惚れてたか?」
目を開いたツクシがミシャの横顔をまた眺めた。影ある色気が溢れる美貌である。
「――まさか」
ミシャが頬にかかった髪を手で払い除けながら、あまり血色が良くない唇で笑みを作った。
「ああ、これはやっぱり悪い女だ。こんなのにムシられ続けたヤマさんも浮かばれねェよな――」
ツクシが顔を歪めた。
「私、コータロに負けちゃったのよね」
ミシャは自分に向けられたツクシの不機嫌を軽く受け流していった。
やはり、ミシャはヤマダの墓を睨んでいる。
「負けって何だよ。ミシャはムシりっぱなしで勝ちっぱなしだろ?」
ツクシは怪訝な顔だ。
「私の
ミシャが眉を寄せて目をぐっと細めた。
「ああよォ、ミシャのお腹に子供がなァ――って、あ、あんだとォ?」
ゴロウが大きく頷いたあとに歯を剥いた。
「おい、
ツクシは食いしばった歯と歯の隙間から呻き声を漏らした。
「ゲロゲロ?」
ゲッコが首を捻った。
「だから、コータロの子供が私のお腹にいるのよ。悔しいわ。父親にあっさりと死なれたら、私が困るじゃない。誰に養育費を請求すればいいの?」
左右に寄ってきたツクシとゴロウの顔へは視線を送らずに、ミシャがヤマダの墓へ小言を聞かせた。
「ふふっ、びっくりした?」
ローザが笑ってツクシとゴロウを交互に見やった。
「それをどうするつもりだ、お前!」
「それァ、どうすんだァ、ミシャよォ!」
ミシャの左右の耳の至近距離から怒鳴り声である。
「うっるさい男どもね――」
ミシャが声が不機嫌なものになった。
「やっ、やっぱり堕ろすつもりか? そういうのは、俺の専門じゃねえぞォ!」
切羽詰まった顔のゴロウがまた吼える。
「まったく悪い女だぜ。ミシャ、お前の枕元にヤマさんが夜な夜な化けて出るぞ。水子を抱いてな。おい、今から覚悟をしとけよ――!」
極悪で不機嫌な顔のツクシが唸った。
「ゲロゲロゲロ――」
ゲッコは物凄い剣幕のゴロウとツクシを見やって口半開きだ。
「――あのね。ひとの話を最後まで聞きなさい」
細い溜息を吐きながら、ミシャが立ち上がった。
「ミシャ姉さんはね、産む気なの」
ミシャに身を寄せてローザがいった。
「ヤマさんの子供をか?」
ツクシがミシャをじっと見つめた。
ミシャは表情を変えずにヤマダの墓へ視線を残している。
「こっ、子供を産むっていってもなァ。ミシャ、おめェ、その身体じゃあ――」
ゴロウはわかりやすい困り顔だ。
「知ってる」
ミシャが振り向いた。微笑を浮かべたミシャの顔から影が消えている。いつも儚げな印象だったその娼婦が今は強さを見せていた。
生命力である。
新たに宿った生命が病魔に蝕まれたミシャの肉体と精神へ力を与えている。
それは、新緑の如く――。
「――むっ、無茶だぜ、ミシャ。おめェの心臓は!」
ミシャは嘘をついてねえ――。
ゴロウが上ずった声でいった。
「ゴロウ、私の病気、治らないんでしょう?」
ミシャがいうと横のローザが視線を落とした。
「あっ――」
ゴロウは絶句した。
嘘を吐くのが下手な男なのである。
「私はもう長く生きられない。だから、残したいの」
ミシャの笑顔が春先の陽光に包まれて輝いた。
「あァ――」
ゴロウが肩をガクンと落とした。
視線も落とした。
「私は次の命に託したいの。ゴロウ、わかる?」
そういって、ミシャはもう一度、ヤマダの墓を見やった。
「い、いいのかよォ、ローザ。ミシャは下手すると、お腹にいる子供と一緒に死んじまうかも知れねえんだぞ?」
ここ一番で押しが弱い、お人好しのゴロウは妹のローザへ助けを求めたが、
「姉さん、いいだしたら聞かない
ローザは苦い笑顔で応えた。
「ククッ!」
うつむいていたツクシが破顔した。
とびきり邪悪な笑顔だった。
「そうか、そうか。敵に子種を仕込んでから死んだかよ――」
口角を歪ませたツクシがヤマダの墓へ目を向けた。
ヤマダの墓前にいた五人の間を、さっと春の風が駆け抜ける。
それぞれの微笑みが溶けた風が丘の斜面を萌やす若草と、ヤマダの墓を囲んだ白い花々と、女たちの黒いスカートの裾を優しく揺らした。
「――ヤマさん、最後の最後は勝ったよな」
表情を消して、ツクシが呟いた。
ツクシ、ゴロウ、ゲッコ、それにミシャとローザは揃ってゴルゴダ墓場の正面門へ向かうと、それぞれ白い花束を抱えた三人組と鉢合わせた。リュウとフィージャとシャオシンだ。足を止めたリュウが口を開きかけた。リュウの横をツクシは黙って通り過ぎた。そのまま、ツクシはネスト前大通りを東へ歩いていった。
振り返らない。
「あ、ああよォ、おめェらも来てくれたのか。葬儀の日取りを連絡しようと俺ァ思ったんだけどな。そっ、その、なんだァ、ツクシがよォ――」
髭面を曲げたゴロウが、その場に佇んでツクシの背を見つめていた三人娘へ遠慮がちに声をかけた。
「――いや、いいのだ。ゴロウ」
リュウが視線を落とした。白い献花を胸に抱いた白髪の美女は肉体にピッタリと密着する黒いロング・ドレス姿だ。
「――あ、あァ。ヤマの墓は丘の西斜面だぜ」
いよいよ困り顔になってゴロウがいった。
「そうですか。ゴロウさん、ありがとうございます」
黒いシャツに黒いズボン姿のフィージャが頭をていねいに下げた。その横で、シャオシンはずっとうなだれていた。シャオシンもリュウと似たような黒いロング・ドレスを着て白い献花を持っている。
「あのなァ、あ、あのよォ、おめェらよォ。そのなァ、ほら、ツクシはあんな性格だからなァ、色々とアレなんだけどよォ――」
ゴロウがの歯切れが悪すぎる。
何をいいたいのかさっぱりわからない。
「いや、ゴロウ、気にしなくていい。俺たちが悪いのだ――」
無理に笑ったリュウが、シャオシンとフィージャを促して、ゴルゴダ墓場へ入っていった。肩を落としたゴロウとゲッコと出入口門の両脇に立っていた衛兵二人が彼女たちを見送った。
「ゴロウ、どうしたの?」
「ゴロウちゃん、あの彼女たちと何か問題でもあったの?」
ミシャとローザがいった。
「まァ、俺たちも帰るかァ――」
腑抜けた声と一緒にゴロウは踵を返した。
「ゲロゲロ――」
ゲッコが小さく鳴いた。
§
「不本意です。アルバトロス曲馬団も、とうとう戦争へ手を貸すことになりました」
昨晩、悠里がツクシへ告げた。
悠里に笑顔はなかった。
以下は悠里の話である。
北部にある前線から突出してくるゲリラ部隊――
早朝、ツクシは宿の表まで出て戦場へ出立するアルバトロス曲馬団を見送った。
「おう、お前ら、生きて帰ってこいよ」
眠そうで不機嫌な顔のツクシがいった。
「ゲロゲロゥ――」
その横でゲッコが眠そうに鳴いた。
「アル、無理をするんじゃないよ!」
この咆哮はエイダである。早朝から声がとても大きい。鬼の咆哮がゴルゴダ酒場宿前の十字路に響き渡った。
横に立つツクシは耳鳴りで顔を歪めている。
「アルはもう
ミュカレが艶かしく微笑んだ。
「みなさん、お気をつけて。必ず元気な顔をまた見せてください」
セイジが重低音の声でいった。
「みんな、無事で帰ってきてね!」
猫耳を立てたユキがきゃんと叫んだ。
ユキは泣きそうな顔である。
「おいおい、揃いも揃って縁起でもないなァ――」
アルバトロスは黒い毛並みの愛馬ココアに跨って苦く笑った。その横で月毛の雄馬(彼の馬の名前はクーサリオンというらしい)に跨ったカルロも小さく笑っている。
「僕たちは大丈夫ですよ。ツクシさんこそ気をつけて」
悠里は栗毛の馬シューターに乗って爽やかに笑った。
「俺たちは輸送部隊を警護するだけだからさ。大した危険はないよ」
そういったのは、二頭の赤毛の馬が引く幌つき馬車の御者担当のロランドだ。
「ロランド、そうやって油断をしない」
ロランドの右横に座ったフェデルマが怖い声を出した。
「みんな、行ってきまぁす!」
ロランドの左横に座ったフレイアが明るい声でいった。
「さ、そろそろ行きましょう」
葦毛の馬ディアナに乗ったマリーがツンツンといった。今日のマリーは白いγ型導式機動鎧で全身を固めている。彼女は過去、タラリオン王国陸軍機動歩兵隊に籍を置いていたらしい。
「見送り、ちょっと大袈裟じゃない?」
白馬ピクシーに乗ったクラウンが薄く微笑んだ。
移動を始めたアルバトロス冒険者団の最後尾を眠そうで、面倒くさそうな表情のアヤカが骨馬レィディに乗ってついていった。黒い鍔広帽子を頭に乗せて、黒い外套で身を包んだアヤカは頭の先からブーツの先まで黒尽くめだ。
漆黒の戦闘服に身を包んで骨馬に跨るアヤカは幼い邪神の風貌である。
少女の小さな背中で冥界の闇が渦巻いていた。
アルバトロス曲馬団の見送りを終えて、宿のホールへ戻ったツクシはいつものカウンター席に座ってゲッコと一緒に朝食をとった。セイジが作ってくれた今日の朝食は、キャベツとコーンと刻んだハム、これらをマヨネーズとマスタードであえたものを具にした大きなサンドイッチだった。パンよりもそれに挟まれた具のほうがずっと分厚い。なかなかの食い応えだが味つけはさっぱりとしていて、これならいくらでも食べられそうである。
そのサンドイッチを、ツクシは熱い珈琲を飲みながら、ゲッコは冷たい水を飲みながら、黙々と食った。ツクシとゲッコが朝食を食べていると、ゴルゴダ酒場宿で働く子供たち――マコトやモグラやアリバやシャルが元気な挨拶と一緒にやってきて、同じカウンター席で朝食を食べ始めた。
子供の会話で静かだったホールが賑やかになると、
「いよう、おめェら」
出入口からゴロウが髭面を覗かせた。ネスト探索へ向かう前はゴルゴダ酒場宿に集合するのが班の決まりになっている。
リュウとフィージャとシャオシンは来ない――。
「――そろそろ、
朝食を綺麗に平らげたツクシがカウンター席を立った。
「ゲロゲロ」
鳴きながらゲッコも席を立った。
「ああよォ――」
返事をしたゴロウも二人のあとに続く。
ネスト管理省登録名、ネストダイバー九班――ツクシの班に所属するものは、今日からこの三人だけになった。
(九章 英雄に憧れて 了)
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