十三節 白い巨人(伍)
ロビン団員の肩に着地した導式鳥の連絡だ。
『連合の戦闘班はすべて西方面へ移動を開始した。各戦闘班の位置座標は追って通達する。連合第二探索班はデータ収集を継続してくれ』
ボゥイ副団長の声だった。
「――あーん」
探索班の集団の中央で歩きながら口を開いたロレッタがシャオシンへ顔を寄せた。
「うっ!」
内ポケットから飴の缶をこっそり取り出したシャオシンがビクンと肩を竦めた。
「あーん」
ロレッタの吐息がシャオシンの頬にかかる。
「いっ、一個だけじゃぞ!」
身の危険を察したシャオシンはロレッタの唇の間へ飴玉をひとつ捻じ込んだ。
もうだいぶ慣れた手つきだ。
「――まだ、たくさんあるのに?」
ロレッタはガラス玉のような瞳をうんと細めた。
「こ、これは残しておくのじゃ――」
シャオシンも自分の口へ飴玉をひとつ放り込んだ。
「何で?」
ロレッタが目を細めたまま顔を傾けた。
「わらわの班のみんなに一個づつ、残しておくのじゃ――」
小さい声でいって、シャオシンは視線を落とした。罪悪感やら不安やらでざわざわする感情が邪魔をして、舌の上で溶けたその飴玉はほとんど味がしない。
「へえ、シャオシンって仲間思いなんだ」
ロレッタはうつむいたシャオシンから視線を外した。
「そ、そうじゃ。あやつらみんな――みんな、わらわの家来じゃからの――」
シャオシンがモゴモゴといった。
「家来なんだ。なら何も上げなくていいんじゃない?」
腰を折ったロレッタがうつむいたシャオシンを下から覗き込んだ。
「わ、わらわの家来はリュウとフィージャだけかも知れんな――」
シャオシンは呟いた。
そう
シャオシンにとってリュウとフィージャは家族同様の存在で――。
「他のひとは?」
ロレッタはあまり感心もないような態度で話を促した。
「な、仲間かの?」
シャオシンは呻くように応えた。
「シャオシンはそのひとたちから本当に仲間だと思われてるの? さっき、水場で独りっきりだったけど?」
ロレッタはガラス玉の瞳でシャオシンの横顔をじっと見つめている。
「わっ、わらわだって、班の役に立って――」
シャオシンの表情に痛みが走ったところで、
「シャオシンさーん、奥手へ照明を頼む!」
探索班の先頭を進んでいた男たちから声がかかった。
「
シャオシンが光球を二つ、三つと作って前方へ飛ばした。天井で、壁で、路面で炸裂した奇跡の光球が進行方向の視界を確保する。
「おお、さすが、奇跡の担い手だ」
「導式の光はやっぱり明るいな」
「手持ちカンテラで進むのとは全然違うのう」
「これだけ先が見えると安心だぜ」
探索班の男たちは一様に感嘆している。
「収束器はいらなかったか?」
ロビン団員が左手に装着した軽導式陣砲収束器へ視線を落とした。新式の軽武装服に深緑色のズボン姿で、導式機関を利用した導式具をいくつも携えているロビン団員は粗末な身なりで錆びの浮いたような得物を携えて、怯えながら歩く他の連中に比べると落ち着いた感じに見える。
「どうじゃ、ロレッタ。わらわはだってできるのじゃ。役に立つのじゃ!」
シャオシンは自分の身体を中心に光球を回転させながら胸を反らした。
「シャオシンは光の導式陣の常時機動をさせても、全然疲れないの?」
ロレッタはくるくる回る光の球を目で追っている。
「そういわれると五行・金乃陣だけは何ともないのう――」
視線を上へ向けたシャオシンの返答だ。
「他の導式陣は?」
眉を寄せてロレッタが訊いた。シャオシンが見せているのは超高度な導式陣機動方法だ。奇跡の担い手であっても、専門に作られた導式具を頼らずに、導式陣の機動を長時間持続するのは難しい。
「――他の陣はあまり好かんのじゃ」
シャオシンが顎をしゃくると、光球のひとつが通路の前方遠くへ飛んでいって。
「何で?」
ロレッタが前方の遠くで炸裂した奇跡の光を見やった。
「とにかく、好かんのじゃ」
シャオシンは表情を消していった。
「何でもできそうだけど――?」
ロレッタが小首を傾げた。
「わらわは、何でもは、できんのじゃ――」
シャオシンは視線を落とした。
「おい、あれは何だ!」
探索班の先頭を歩いていた頭にバンダナを巻いた若者が声を上げた。
「ああ、先に何かいるなあ」
その横を歩いていたずんぐりとした体形の中年男が目を凝らした。
「あれは、ヒトかねえ?」
首を捻ったのは、斧槍を手にした、みすぼらしい初老の男だ。
「どうも、体毛が生えているようだが――全員、移動を停止しろ!」
ロビン団員が指示を出すと探索班は足を止めた。
班長のテージョは進行方向の遠くに出現したひと影を見つめて沈黙している。
「あれはファングか?」
バンダナの若者が顔をしかめた。
「あれは二本足で歩いてるのお。そんなのおるんか?」
初老の男がいった通りだ。
その犬のような生き物は二本足で歩行している。
「フェンリル族?
振り返ったずんぐりとした体形の中年男のうなじを跳んできたねじくれた槍が刺し貫いた。頚椎を刺し貫いたその一撃は素人目に見ても致命傷だ。周辺にいるものは誰もそ倒れた中年男を助け起こそうとはしない。その代わりに溜息のような悲鳴を喉から漏らした。
「やっ、槍を投げてきたぞ!」
「ど、どうする、どうする?」
「ネストの異形種だ。あれは異形種の犬だ!」
「はっ、早く戦闘班に連絡を――!」
「あの犬が何かはわからんが、敵には違いない。おい、銃持ちは何をしてるんだ。距離があるうちに撃ち殺せ!」
ロビン団員が大声で命令した。先に出現した異形犬と探索班との間にはまだ距離がある。探索班のなかで銃を携帯していたものが、急いでそれを手にとったが――。
「――あっ、まだたくさんくる!」
誰かが叫ぶと、
「何だ、あいつらは」
「に、逃げよう!」
「戦闘班のところまで走れ!」
「いや、後ろからも来てる!」
「か、か、囲まれてる、異形種に囲まれてるぞお!」
探索班は混乱をきたした。
背後からも異形犬が何匹か姿を見せている。
「銃を使って対応をしろ、早く! ――流民どもはやはりつかえんな」
ロビン団長が怒鳴ったあと舌打ちをした。
連合第二探索班は散発的な発砲を始めた。
「うっ、ううっ!」
硝煙にけぶる通路の中央で身を固めたシャオシンは顔を真っ青にしている。同様に青ざめた顔で銃を発砲している周囲の大人たちは誰一人としてシャオシンに構うものがいない。異形犬の何匹かは銃弾を受けて倒れたが、班の前方から、班の後方から、異形犬が続々と出現する。
「ゴロゼ!」
「ゴッヂダ!」
「ニンゲン、ゴッヂ、ミヅゲダ!」
「ゴロゼ、ミナ、ゴロゼ!」
「アヅマレ、アヅマレ!」
異形犬の唸り声に囲まれた連合第二探索班は、通路の中央に固まって、無闇に発砲を繰り返した。
「シャオシン、こっち」
ロレッタがシャオシンの手を引いて脇道へ向かった。
「だ、だめじゃ、先の脇道にも犬が待ち構えておるぞえ!」
叫んだシャオシンの鼻先を黒い影が横切った。擦り切れてザンバラになった黒い外套の裾が大きく広がってシャオシンの視線を遮っている。シャオシンが見ているのはテージョの背中だ。広がった外套が背に落ち着くと、テージョはその白い鮫肌の顔を背中越しに見せた。無言だが、テージョは何かを促しているような様子だ。
「――もう大丈夫。シャオシン、脇道へ入って」
ロレッタがシャオシンの手を強く引いた。脇道に入ると先ほど顔を覗かせていた異形犬が倒れていた。異形犬の首元にテージョが放ったらしきダーツが突き刺さっている。異形犬は牙が突き出た口から血の泡を噴いていた。汚れた獣毛につつまれたその身体が痙攣している。ダーツの針先には何らかの強力な毒物が仕込まれていたようだ。
「――これはテージョがやったのかえ?」
シャオシンが震え声で訊いたが、テージョは無言で脇道の奥へ歩いてゆく。
「シャオシン、行くよ」
ロレッタがシャオシンの手を強く引いて促した。
「は、班のひとたちは、どうするのじゃ?」
シャオシンは背後に視線を送った。
テージョ、ロレッタ、シャオシンの三人だけが連合第二探索班から離脱して南へ向かっている。
「シャオシンは私とテージョだけを信用して」
ロレッタは振り返らない。
「お、置いていって、いいのかえ?」
シャオシンがロレッタの横顔を見つめた。
「あいつらを囮にして逃げるの」
ロレッタは視線を返さずにいった。
「みっ、見殺しかえ!」
シャオシンが顔を引きつらせた。今は背後から響く銃声にひとの悲鳴が交じって聞こえてくる。シャオシンは泣き顔になっているが、ロレッタの表情は変わらない。
「あんな逃げ腰の連中と一緒に行動したら死んじゃうよ? ――テージョ、
ロレッタはテージョへ目を向けた。シャオシンの手を引いて歩くロレッタの横に、テージョは影のように寄り添っている。
「地下九階層に繋がる旧道はまだ見つかっていない」
影の声が応えた。
「じゃ、どうするの?」
ロレッタが視線だけをテージョの白い鮫肌の顔へ送った。
「ロレッタは
そういってテージョが、黒い外套のなかから赤色光炎信号の筒を取り出して、それを進行方向へ放った。赤い光で照らされた通路の先はT字路の突き当たりになっていて、先の道は東と西に分かれている。
「テージョはどうする?」
T字路の突き当たりで足を止めて、ロレッタが訊いた。
「俺はこれから仕事だ。帰らなかったら、お前が『
そういい残して、テージョはT字路の西へ足を向けた。
「テ、テージョはどこへ?」
シャオシンが影の背を見やりながら訊いた。
「心配しないで。シャオシンは、私が必ず守ってあげる。でも、ひとつだけお願いがあるの――」
ロレッタはシャオシンの頬に冷や汗で貼りついた髪を手で退けながら、ガラスの瞳を細めた。
「な、何じゃ?」
シャオシンがロレッタの笑顔をじっと見つめた。
「私たちのために照明を作ってくれる?」
東に続く通路の奥へロレッタが視線を送った。
照明を確保しなければ暗闇にすべての視界が奪われる。
「――わかったのじゃ」
決意を固めたシャオシンが光球を呼び出した。
§
シャオシンを追って北へ移動を開始していたアドルフ副団長率いる連合第三探索班は、フィージャの警告通り異形犬の群れと遭遇した。大挙して出現した異形犬の群れに、連合第三探索班は進行方向も後方も塞がれている。ねじくれた槍をたずさえた異形犬を目にして連合第三探索班の面々も驚いた。しかし、戦闘に手慣れた彼ら彼女らは恐慌状態に陥らない。
連合第三探索班は異形犬の群れに対して組織戦闘を開始した。
「――ゾラ、背面を指揮しろ、導式鎧組は前だ!」
アドルフ副団長の指示で導式機動鎧装備の二十名が前に進み出た。これらは各自が大斧槍や大戦斧を携えた白兵戦闘の専門家だ。北方面で群れていた異形犬が導式機関の機動音を警戒して突撃しようとしていた足を止めた。
「飛び道具は背面に集中、銃撃て!」
ゾラが指示を出すと、銃を構えて片膝をつき隊列を作っていた団員たちが、班の背面から迫った異形犬に鉛弾を食らわせた。
「――クソ、あの犬ども身を伏せてやがる!」
団員のひとりが紙薬莢を食い千切りながら唸った。異形犬の隊列先頭にいた何体かは銃弾で倒れた。しかし、無傷なものは姿勢を低くし、じりじりと前進を続けている。異形犬の
この悪条件に加えてである。
「――ああ、畜生、奴ら脇道からも出てくるぞ!」
若い団員がゾラの合図が来る前に発砲した。南北に伸びる直線の通路の脇道から何匹もの異形犬がまとまって飛び出てくる。この新たな敵集団は探索班の立ち居地から見て南二十メートル付近。
「近い奴から落ち着いて狙え!」
ゾラの指示が発砲音と重なった。
銃で仕留めきれなかった異形犬が二体、探索班に突っ込んでくる。
「アドルフ、導式鎧を何人か背面へ――」
ゾラが叫んだと同時に、最も接近していた異形犬二体の額へ矢が突き立った。異形犬が二体は前のめりに転がった。ヤマダの放った矢は異形犬二体の急所を正確に貫いている。
「ハッ、導式機関弓は装填が早いな。俺も今度からそっちにするか?」
団員が込め矢を銃口に突き入れながらヤマダを見やって軽口を叩いた。
「脇道から飛び出てくる奴はヤマの弓に任せるぜ!」
若い団員が銃を構えた。
「了解っす。わあっ!」
ヤマダの頬を槍が掠めた。
遠い位置にいる異形犬が探索班に向けて槍を投擲し始めたのだ。
「あの槍は厄介だ、ゾラ、頼む!」
通路脇に退避して団員が一斉に怒鳴った。
「土と盟約を結びしゾラ・メルセスの名に加勢せよ、
飛び出した彼は彼の守護者を呼び出した。
ゾラが右拳で路面を殴りつける。硬いネストの石床へ素手を使った打撃だ。ゾラの拳のほうが砕け散りそうなものだが実際は逆だった。その打点から土埃が高く噴き上がる。そのまま石床がバキバキと割れてめくれ上がった。畳返しならぬ石床返しだ。高さがある遮蔽物としての機能を始めた石床へ、ねじくれた槍がガッガッと突き立った。
「うわっ、この槍、石床に軽々刺さってる。どういう素材なんだろ――」
ゾラが縦にして盾代わりにした石床から顔を覗かせてボヤいている最中、銃を持った団員たちが遮蔽物を利用した射撃を開始した。
硝煙で視界が霞む。
「ゾラさん、これが土の精霊の力っすか!」
障壁に背をつけてヤマダが怒鳴った。
重なる銃声で鼓膜が痺れる。
「うん、そうそう」
ゾラが笑って返した。その足元で土くれの小さな乙女たちが、ステップを踏みながらケラケラ笑っている。この彼女たちがゾラの使役するノーミードだ。
「これは便利っすよ、戦場で塹壕を掘る手間が省けるっす!」
ヤマダが障壁の隙間から矢を放った。ヤマダの矢は吠えながら突貫してきた異形犬の口の中へ吸い込まれた。「ゲギャン!」と悲鳴を上げながら異形犬が路面を転げ回る。探索班に接近する異形犬はすべて銃撃とヤマダの弓で倒されているが、それでも迫る異形犬は数が多かった。多すぎる。
弾丸の数も矢の本数も限りがある――。
「――後ろは敵の数が減らないな。前方はどう?」
ゾラが通路の北――アドルフ副団長と彼が指揮する黒い導式機動鎧装備の団員たちへ視線を送った。大斧槍や大戦斧をぶんぶん振り回して導式鎧組の二十名余は飛んでくる槍を払い落としていた。もっとも、それが直撃したところで、銃弾を逸らすべく設計された複合白金装甲板を食い破ることは難しいようにも見えるが――。
「――奴らこないな。びびったか?」
兵機の隊列の後方でアドルフ副団長が呟いた。通路前方には百近い異形犬が唸り声を上げているが突っ込んでくる気配はない。
「アドルフ副団長、こっちから突っ込んであの犬どもを蹴散らしちまおうぜ」
前にいた団員の一人が導式機動鎧に導式の青い光を巡らせた。
「いや、駄目だ。連合本部からの連絡を待て」
アドルフ副団長は横に佇むリュウとフィージャへ視線を送った。
「ご主人さま――」
異形犬の群れを見やってフィージャは呟いた。声に力がない。
「フィージャ、シャオシンの匂いは?」
リュウが硬い声で訊いた。
「あの薄汚い犬の匂いに紛れて、もうはっきりとは――」
フィージャが視線を落とした。
「リュウ、本部からの連絡はまだか?」
アドルフ副団長が手に
「今、連絡がきたぞ」
リュウが背後へ視線を送った。
通路の南から白い導式鳥が飛んでくるのが見える。
『――全探索班は最寄の戦闘班がいる座標まで下がれ。第三探索班、第五探索班は事前の段取り通り各班の撤退をできる限り援護しろ。連合本部――第四探索班は第二戦闘班と合流して指揮を執る予定。以上。各員の幸運を祈る』
ボゥイ副団長の声だ。
リュウの肩で音声再生を終えた導式鳥は光を散らして消えた。
「全探索班に撤退命令、かあ――」
アドルフ副団長が両手に装着した導式陣砲収束器の準備機動を開始した。側面に並ぶぶ導式機関部分から低い機動音が鳴る。
「どうも連合全体が異形犬からの攻撃を受けているようだな――」
リュウが導式機関の機動音よりも低く唸って歯噛みした。
「リュウ、ご主人さまが危険です」
唸って返したフィージャは両手に
「アドルフ副団長!」
リュウが目尻を吊り上げて呼びかけた。
「何だあ、リュウ?」
のんびり返事をしたアドルフ副団長は横目で殺気立つリュウ見やった。
「フィージャと俺だけでシャオシンを探しに行く」
リュウが視線を送るとフィージャは黙ったまま頷いた。
「班から離脱して、お前らだけで勝手に行動するつもりなのか?」
アドルフ副団長が目を細くした。
アドルフ副団長は笑っているようだ。
「すまん、勝手な真似を――行くぞ、フィージャ」
「はい」
リュウとフィージャはそういい残して北へ歩きだした。
通路の北は今や二百近い異形犬が、ねじくれた槍の穂先をこちらへ向けている――。
「――リュウ、フィージャ、ちょっと待てやあ!」
アドルフ副団長が導式陣砲収束器から光球焼夷弾を投射した。背後の通路へ閃光と一緒に導式の爆炎が広がる。同時に班の後方で発砲を繰り返していた団員三十名から悲鳴と罵声が上がった。その苦情の大半は「撃つ前に警告してくれ。俺たちもまとめて焼き殺す気か」そんな感じの内容だった。
「アドルフ、止められても俺たちは行くぞ」
リュウが背中越しに視線だけを送っていった。
「リュウ、あのよお、前も後ろも敵だらけなんだぜ?」
アドルフ副団長が顔をしかめた。
「ああ、そうだな。だが、それがどうした!」
リュウが怒鳴った。
「あのなあ、俺たちの第三探索班は、他の班の撤退を支援しろって命令が出てるんだ。だったら、みんなまとめて北へ撤退支援をしに行くしかねえだろうがあ?」
アドルフ副団長は苦い笑顔でいった。
「――アドルフ。本当にすまん」
「――アドルフさん。申し訳ありません」
顔を歪めたリュウとフィージャが足を止めてうなだれた。
「だからよお、それが俺たちの仕事だからよ、さっきもいったけどよお――」
アドルフ副団長も顔を歪めた。
どうも、この強面の巨漢は謝られたり感謝されたりするのが苦手なようだ。
悪そうな面構えで居心地の悪そうな表情になったアドルフ副団長に代わって、
「全体、聞け! 今からクソ犬どもの包囲網を破って、北へ進出する!」
ゾラが号令した。
連合第三探索班は北へ進撃を開始する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます