六節 自称、聖魔の騎士(弐)
王座の街に帰還したツクシは、アーミーブーツの靴底でヌルヌルしたものを踏んづけた。
「酔っ払いのゲロかよ――」
顔を歪めたツクシが視線を下へ送って、
「おい、何だよ、これは?」
場所は王座の街の北壁にある防大衛門を潜り抜けたところだ。
「ゆ、床がヌルヌルするのう――」
シャオシンはフィージャに抱きついて頼りない足元を補助している。
「ゆっくりと動いてるっすね。スライム、みたいな?」
腰を折ったヤマダが石床の上を這う生き物を見つめた。
「きっ、気持ち悪い生き物だな。な、何なんだ――」
リュウは顔を引きつらせている。
「匂いはほとんどありませんが――」
無い眉を寄せたフィージャは黒い鼻先をふんふん高速で動かしていた。
「ゲッゲッ。フルーレ・ファンガス。コレ懐カシイ」
ゲッコは驚いた様子がない。もっとも、ゴツゴツと硬い鱗がついたトカゲの顔のゲッコは表情らしい表情がいつもない。
「おっ、ゲッコは知ってるな?」
ゴロウが太い眉を吊り上げてゲッコを見やった。
「ゲッコノ
ゲッコが頷いた。
「これは流動体粘菌だ」
ゴロウが石床を這う透明で平べったい生き物へ視線を送った。畳二枚分くらいの大きさの、高さがない、透明な生き物である。生きて活動をしているようだが目も鼻も口もない。
「これが粘菌? きのこの一種か。人体に害はないのか?」
怪訝な顔のツクシが訊くと、
「安心しろ、有益な生き物だぜ。ドラゴニア大陸産でな。こいつらは屎尿や排水を体内に取り込んで分解したあと、綺麗にろ過した水と土だけを吐き出す。ぶっちゃけていうと、こいつらはうんこを食って生きる」
ゴロウが汚いダミ声で流動体粘菌の生態を汚く説明をした。
「うーん、バクテリアときのこが合体して塊になった感じっすか。
感心したヤマダがゴロウへ顔を向けると、
「バクテリアってあんだァ、ヤマ?」
ゴロウは怪訝な顔だった。
「ああ、ゴロウさん、細菌のことっすよ。微生物っすね」
ヤマダがいい直した。
「あァ、微生物の塊か。まァ、そんなところだなァ。こいつは生物学の分類上、一応きのこなんだけどな。透明な奴は飲んだって平気だが、茶色く変色した奴には絶対に触るなよォ。消化中は悪い微生物の塊になるから汚いぜ。こいつらは地上の下水処理場で飼われているんだ。王座の街にも下水処理施設を作ったってことだよなァ――あァ、ほれ、防衛大門の脇に管理省の天幕が並んでるだろ。たぶん、あそこが管理省の作った下水処理施設だ」
ゴロウが防衛大門の脇に並んだ深緑色の天幕へ顎をしゃくった。
その脇に空になった屎尿樽らしきものが積み上げられている。
「噴水浴場の脇にある排水槽にも、このヌルヌルがいるのかの――」
シャオシンが床でヌルヌル蠢く透明なきのこっぽい生き物を見つめた。
「確かに王座の街から出る排水をそのまま床へ流したら、地下水を汚染しちゃいますからねえ。これだけの人数ですし――」
顔を上げたヤマダが暗闇の底で人工の光を瞬かせる王座の街の大通りを見回した。昼も夜もないこの地下大通りには常に誰かしらのひとが動いている。
「ネ、ネスト管理省もしっかりと行政の仕事をやっているのだな――」
リュウは流動体粘菌から微妙に距離を取っている。
「街の治安にももっと力を入れて欲しいものですね」
そういったフィージャは離れた場所で横たわっている薄汚い格好の中年男を眺めていた。全身血まみれである。喧嘩かかっぱらいに失敗して周囲からタコ殴りにされたのか、それとも他のトラブルだったのかはよくわからないが、とにかく全身血塗れになった薄汚い中年の男がボロ雑巾のようにだらんと伸びていた。それを囲んだ三人の治安維持警備隊隊員が、手に持った斧槍の柄で倒れた男を乱暴につつきながら、「オラオラ、死んでるならさっさと返事をしろや」などと暴言を投げつけて、その生死をいい加減に確認していた。王座の街ではこれが日常の背景である。
「――おい、ゴロウ。ネスト・ポーターをやってた頃、毎回毎回、屎尿樽を
ツクシが顔をしかめて訊いた。
ツクシの頭は悪いが鼻はいい。
糞尿の臭いの記憶が鼻の奥で蘇っている。
「ああよォ、あれは売っていたらしいなァ」
ゴロウが顎髭に手をやって応えた。
「売っていた?」
ツクシが眉根を寄せた。
「糞尿におがくずを混ぜて寝かせると畑の肥料になるだろ。それを地方の百姓どもに売るわけだ」
ゴロウが簡潔に応えた。
「ネスト管理省はこれまで、そんな臭い商売をやってたのかよ――」
ツクシが唸り声と一緒に視線を落とした。
「これが床に漏れてるってことは屎尿を売るのを止めたんだろ。採算が合わなくなったのかなァ――で、どうする、おめェら。探索金の分配を終えたら、そのまま
ゴロウが班の面々を見回した。足を止めたツクシたちの横をネストダイバー連合の参加者がぞろぞろ通り過ぎてゆく。足取りは疲労で重くなっているが、無事帰還を果たしたことで、その顔はたいてい晴れやかだ。
「――うーん、もうすぐ夜の七時か。さすがに疲れたっすね」
ヤマダが内ポケットから取り出した懐中時計を見やった。今回行われたネストダイバー連合の探索は丸一週間もかかった。
「連合の打ち合わせを終えたあとに地上へ戻ると深夜を回ってしまうだろうな――」
普段は凛々しいリュウが女の
リュウの疲労を見て取ったフィージャが、
「ヤマサンで一晩を明かしてから帰りますか?」
「うむ。わらわはすぐお風呂に入りたいのじゃ」
シャオシンが狼の顔を見上げた。
「ああ、シャオシン。まずは最優先で風呂だよな」
ツクシが同意するとシャオシンが笑顔を見せた。相手にして欲しくて仕方がないといった感じの幼さが残る笑顔である。罪悪感を感じたツクシは、シャオシンへ少し口角を歪めて見せた。若いシャオシンがネスト探索に参加することを、ツクシは未だに良く思っていない。しかし、シャオシンの保護者であるリュウと話をつけた手前、これ以上はもう何もいうまいと、このときのツクシは考えていた――。
「――ね、ツクシ、不潔なのは絶対ダメ。だから、ボクたちも
視線を落としたツクシの耳元で美少女っぽい声が聞こえた。
一人称は「ボク」である。
ボクっこエルフの声である。
「おっ! おう、ゾラか!」
ツクシが声を上げたときにはもう遅い。ゾラはツクシの左腕を両手でホールドしていた。ツクシの腕へゾラは自分の胸元をぐいぐいと押しつけているが、そこに女性の胸はない。ツクシはまとわりついてきたゾラを振り払おうとして顔を歪めた。少年のように細い身体だが、ゾラの腕力は信じられないほど強かった。
これは完全に男性の力技である。
「これから、お風呂だよね? ツクシも今から噴水浴場へ行くよね?」
爪先立ちになったゾラが、無精髭がツンツン突き出たツクシの頬へ唇を寄せた。
ゾラは小柄なのである。
ツクシは冥府魔道の色香を全身から発する危険なメスモドキから、強引に身体をひねって適正な距離を維持しつつ、
「や、宿に荷を置いたら俺も行くけどな。お前には関係ないだろ?」
ツクシの声が震えている。
「ツクシ、ボクと一緒にお風呂へ行こっか? 背中、流したげる」
ゾラは美少女っぽい美貌と長耳を赤らめて一直線に鋭く切り込んだ。
「クッソッ!」
ツクシはブンッと音をさせてゾラの美貌から顔を背けた。ツクシはおかしな体勢なので、どこかしらの間接がギクッといきそうな感じだ。
「ふむ、ツクシは両方とも相手ができるというわけか――」
リュウは人類の将来にとって絶望的な科学的事実をたった今再確認したような、重く冷めた口振りだ。
「そ、そうだったのですか。我慢のないひとだとは思っていましたが――」
フィージャが誰にでもわかりやすい驚愕の表情を作った。
「へんたい、へんたいじゃ!」
両拳をぐっと握ったシャオシンが目を丸くして叫んだ。恐怖と好奇心と軽蔑が入り混じる複雑な顔である。それでいて頬は真っ赤だ。
この、クソ馬鹿娘どもが――。
怒鳴ろうとしたツクシの肩をポンと叩いて、
「土の精霊の祝福を受けたエルフ族はドワーフ並の馬鹿力だ。その上、ゾラの性格は猟犬みたいにしつこいぜ。逃げ切れると思わないほうがいいぞ」
そんな忠告したロジャー団長が横を抜けていった。
「ロジャー、
ゾラの豪腕に捕縛されたままツクシが吼えた。
「俺たちの団にいる連中は、軍の規律やら国の法律やらを守れなかった奴らばかりでな。だから、仕事が終わったあとは何も指図をしないのが俺の流儀だ。ま、頑張れよ、ツクシ」
ロジャー団長が背中で応えた。顔を引きつらせたツクシにくっついたゾラはニコニコと本当に嬉しそうな笑顔だ。ゴロウも歯を見せてニヤニヤ笑っていた。眉間に浅く谷を作ったヤマダは深刻な顔でツクシとそれに寄り添うゾラを見つめている。
ツクシはヤマダの視線が一番痛かった。
§
シルヴァ団長は、私室用の天幕で紫檀色の軽装鎧を着込み、黒いマントを背になびかせ、腰の剣帯から派手な柄のついた長剣を吊って武装すると、メルロースの娼婦たちが仕事をする区画へ、チョコラをつれて向かった。暗い天幕の通路の行く先に見慣れたひと影を発見して、「ん?」と声を上げたシルヴァ団長が足が止まる。
「――ねえ、シルヴァ」
通路で待ち伏せをしていたのは、シルヴァ団長にとって一番古い恋人のレオナだった。
「んっ、何――」
シルヴァ団長の開きかけた口を、レオナがその唇で塞いで止めた。お互い唾液がお互いの舌の上で絡み合う熱烈な抱擁を、後ろでチョコラが無感動な態度で見つめている。
「――ぷふっ。どうしたんだ、レオナ。今夜もチョコラと一緒に『したい』のか?」
甘い唇を十分に味わったあとだ。
シルヴァ団長は彼女の肩に手を置いて身体を離した。
シルヴァ団長の肩に肘をかけたまま微笑んだレオナが、
「今日は違う。どうしてシルヴァはいつまでもあの嫌な女の顔色を伺ってるの?」
「あの嫌な女? キルヒのこと?」
ゆるんでいたシルヴァの顔が一息に強張った。
「『隷属の首輪』をキルヒにもつけちゃえばいいじゃない。エレミアやこの
レオナがシルヴァの肩鎧越しにチョコラを見やった。チョコラの首に巻いてある細い鎖を使った黒のチョーカーは魔人族が他種族の命を意のままにするための魔導具――隷属の首輪である。シルヴァ団長が軽い精神変換で合図をするとチョコラの呼吸は停止する。この猫人の少女チョコラは女衒街の業者からシルヴァ団長とレオナが愛玩用に買い上げた奴隷だ。タラリオン王国で奴隷の所持は明確に法律で禁止されているが、それはヒト族を――タラリオン王国市民を対象にした法律である。国家を持たない猫人族が人権を蹂躙されていても当局は黙認していた。
今までどんな辛い生活を強いられてきたのだろうか。
チョコラは買い上げられたときから、ずっと人形のような容姿と態度の少女だった。今夜はこのチョコラがシルヴァ団長の夜のお相手をすることになっている。明日の晩のお相手はエレミア――性奴隷兼戦闘員のエレミアだ。その次の晩は奴隷ではないがシルヴァ団長の相手を好んでするユーディッドになる。気が向いたときには、チョコラとエレミアのお努めにレオナが参加することもあった。レオナとユーディットは仲が悪いので絶対に合同はしない。ともあれ、レオナは男性も女性も愛せる女性なのだ。
「――キッ、キルヒは俺から逃げ出す気配がないだろ」
シルヴァ団長が硬い声でいった。
「シルヴァらしくない――」
そう呟きながら、レオナがシルヴァ団長の胸へ顔を寄せた。
「な、何だ、レオナ。お前、何がいいたい?」
シルヴァ団長の声が震えた。
泣き出しそうな顔である。
「怒らないで。貴方が一番なんだから。私はよく知ってる――」
レオナが小刻みに震え始めたシルヴァ団長を抱きしめた。
「キ、キルヒは
うっ、うっ、と声を詰まらせながらシルヴァが唸った。
その瞳が涙で揺らいでいる。
「シルヴァはキルヒに怯えているわけじゃないよね?」
顔を上げたレオナが目尻を下げた。
「――うん」
くすん、とひとつ鼻を鳴らしてシルヴァ団長が頷いた。
「シルヴァは慎重なだけよね」
レオナは甘い声でいった。
「うん、そうだ、そうだ」
シルヴァが強く頷く。
「キルヒの目的が何なのかわからないから――?」
レオナの眉間が注意して見ないとわからないていどに凍えていた。
「そうだ、そうだ。レオナ、よくわかっているじゃないか」
笑ったシルヴァ団長はレオナの冷えた眉間を見逃している。
「貴方のことだもの、当たり前よ!」
レオナが呆れ顔を作った。
「フーッ! じゃ、行ってくるよ」
シルヴァ団長が大袈裟な溜息と一緒にレオナから身体を離した。
「――うん。行ってらっしゃい」
レオナが後ろで手を組んで、シルヴァとチョコラを見送った。今夜のシルヴァ団長は、己の欲望を気が済むまでチョコラの幼い性へぶつける予定だ。しかし、それを見送るシルヴァの恋人レオナは穏やかに微笑んでいる。
最後には必ず私の胸へ
貴方は私なしでは絶対に生きていけないから。
私が貴方を「作って」きた――。
闇が濃いほうへシルヴァとチョコラが消えたあと、レオナは肩を震わせて踵を巡らせた――。
§
帝歴一〇〇八年。
シルヴァ・ファン・ハウツヴィッツは、大学部へ問題なく進級できる優秀な学生だったのだが、進級する直前、タラリオン王国東方軍学会を自らの意志で去った。シルヴァは当時の学会で屈指の優等生だったから、この決断を周囲は必死で止めた。しかし、シルヴァの決意は変わらなかった。この学年一の優等生には学会を退学しなければならない理由があった。他人にいえない理由である。シルヴァの外見はヒト族だが、その内容は純然たる
魔人の子がタラリオン王国にある教育機関の修身課程を終えて、そのあと、社会的地位が高い立場についたとしてもだ。
正体が何かの拍子で暴露されたとき、どのような状況に陥るか――。
シルヴァは魔帝国へ帰還することも考えた。しかし、その当時でもうエンネアデス魔帝国はタラリオン王国と国交断絶を宣言しており、国境を越えることが難しい状況になっていた。それに、シルヴァの両親から――アマデウス伯爵夫妻から定期的に届いていた手紙も何年も前に途絶えている。仮預かりの養子の立場であったシルヴァは、むろん、ハウツヴィッツ家の家督を継げない。そもそも、女性にだらしのなかったハウツヴィッツ辺境伯には家督を継ぐべき後継者候補が多すぎる。どうしたものかと、家長自身が悩んでいた日々である。
「――グスタフおじさん。俺は家を出て冒険者になろうと思います」
シルヴァの宣言にハウツヴィッツ辺境伯も驚いた。冒険者家業はチンピラヤクザとあまり違わない商売である。少なくとも貴族階級出身の冒険者など、ハウツヴィッツ辺境伯は聞いたことがない。しかしそれでも、情に厚く子供好きだったハウツヴィッツ辺境伯は、シルヴァの将来に便宜を図った。ハウツヴィッツ辺境伯は大枚の出立金を与え、その上で冒険者管理協会に勤める知人に連絡を取って、羽振りのよさそうな冒険者団へシルヴァを紹介した。
エンネアデス・ヨイッチ=ハガルが魔帝に即位した際、起こった粛清に巻き込まれて、アマデウス伯爵夫妻は――シルヴァの両親は命を失ったのだろうな。
優秀な男だが、養子で魔人族でもあるシルヴァには、ハウツビッツ家督を譲るつもりは元々ないし、このていどのわがままは快く聞いてやろうか――。
シルヴァを慮って口に出さなかったが、ハウツヴィッツ伯爵はそんなことを考えていた。シルヴァ本人もまた冒険者として成功する自信があった。魔人であるシルヴァはヒト族では扱えない危険な魔導式を難なく扱える。そして、不思議なことに魔導式を扱うものには絶対に扱えない筈の導式の扱いにも長けていた。正と負、プラスとマイナス、導きと歪み――本来なら必ず反撥する筈の力を、シルヴァは双方扱えるのだ。国家間の都合で魔人族の家庭教師が去ったあとでも、独学で魔導式を学び続けるうちに、シルヴァは自分の才能を発見した。
そのとき、シルヴァはこう思った。
俺は聖。
俺は魔。
俺は聖魔。
俺はこの世界で特別な存在。
英雄になれ、と――。
ハウツヴィッツ辺境伯の大屋敷を出立するとき、シルヴァの傍らには学生時代からの恋人レオナが寄り添っていた。このレオナ・デ・カラヴァッジオは貧乏貴族カラヴァッジオ一家に生まれた五人兄弟姉妹の末っ子だ。カラヴァッジオ兄弟姉妹のなかで、レオナは一番の学業成績優秀者であり、導式の担い手として将来を――学会の大学部へ進み、その後の修身コースへ進むことを期待されていた才女だった。
であるから当然、
「私は大学部へ進みません。冒険者となってシルヴァについていこうと思います」
レオナが宣言したとき家族も学会の教官たちも猛反対した。しかし、レオナは周囲がいうことには一切耳を貸さずに、シルヴァを追って実家を飛び出ていった。
王国東方軍学会の学生時代の話である。
高等部の学徒組合では、組合長がシルヴァで副組合長がレオナだった。シルヴァとレオナは誰しもが羨む有名な恋人同士でもあった。
二人が一緒に冒険者の道を選んだのは、恋人としてお互いが離れたくなかったからだろうな――。
当時、彼らの周囲にいたものはそんな感想を抱いた。だが、実際は違う。万能の麒麟児に見えたシルヴァは精神が脆く優柔不断で――特に人間関係の調整が不得手だった。学生生活でも組合の活動でも、シルヴァはレオナの判断に依存していた。レオナは表から裏から手を回して、シルヴァをサポートした。レオナは性格に他人へ過度に手厳しい部分があって、組織を率いる代表の立場よりも、それをサポートするほうが得意な女性でもあった。シルヴァは無自覚でレオナに隷属していた。レオナのほうはシルヴァを意識的に隷属させていた。シルヴァとレオナはお互いを必要だと考えて共に冒険者の道を歩きだしたのだ。
結果的に、この恋人たちの選択は正解だった。
二年後の帝歴一〇一〇年、エンネアデス魔帝国はグリフォニア大陸南下作戦を開始。
西海岸に位置する自国の首都――王都の防衛に重きを置いたタラリオン王国は開戦当初、北部と東沿岸部の防衛を捨てた。タラリオン王国の真珠とまで
戦乱を逃れたシルヴァとレオナは、冒険者団の若き団長と副団長として、グリフォニア大陸大陸中央の大都市ミトラポリス中心に活動し、その名を売り出し中だった。
これがアマデウス冒険者団の前身である。
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