七節 自称、聖魔の騎士(参)

 王座の街へ帰還したツクシは風呂を済ませたあと、酒場宿ヤマサンの丸テーブル席について遅い夕食をとった。そのうちに、各々の定宿で雑用を終えたネストダイバー連合の探索者もヤマサンを訪れた。これから今回のネスト探索で得た賃金の分配と次回の探索の打ち合わせだ。八百名に近い探索者をヤマサン一店で収容するのは無理があるので、打ち合わせに参加するのは、連合傘下にある各探索者団の代表者――団長や副団長になる。

 ネストダイバー九班の班長、ゴロウ・ギラマン。

 ネストダイバー九班所属、山田孝太郎。

 ヴァンキッシュ冒険者団の団長、アレス・ヴァンキッシュ。

 ヴァンキッシュ冒険者団の副団長、ボゥイ・ホールデン。

 スロウハンド冒険者団の団長、ロジャー・スロウハンド・ウィズリー。

 スロウハンド冒険者団の副団長、アドルフ・タールクヴィスト。

 スロウハンド冒険者団の副団長補佐、ゾラ・メルセス=ノーミード。

 北北西運輸互助会の会長、ガラテア・クズルーン。

 北北西運輸互助会の副会長、イーゴリ・クズルーン。

 天幕街探索者組合の組合長、ジャン=ジャック・マルモッタン。

 天幕街探索者組合の副組合長、テージョ・リヒャルデス。

 メンヒルグリン・ガーディアンズの団長、ルシア・トルエバ。

 メンヒルグリン・ガーディアンズの副団長、ゲバルト・ナルチーゾ。

 他にもまだいたが、もうツクシは全員の顔を覚えることを諦めていた。ネストダイバー連合の参加者は日々増え続けている。喧々諤々と話し合いを進めるネストダイバー連合の面々を眺めていたツクシが、そこから返ってきたゾラの熱視線に気づいて視線を戻した。ツクシは会議をゴロウとヤマダにすべて任せている。金銭が絡む細かい話はゴロウとヤマダが強い。ツクシは細々とした打ち合わせを続けていると苛々し始めて、最終的にキレて暴れるのでまるで不向きだ。

「――へえ、地上でお前らは馬に乗るのが専門だったのか」

 ツクシがベリーニ三兄弟の話の続きを促した。連合が会議中の席から離れた丸テーブル席で、ツクシとベリーニ三兄弟が大皿のつまみに手を伸ばしながら、ゆっくり酒の杯を傾けていた。リュウ、シャオシン、フィージャも同じ席にいて、むさくるしい男どもの酒の席を華やかさで緩和している。風呂上りの三人娘は三者三様に華やかであったが、長い白髪を下ろして青紫のロング・ドレス姿になったリュウに、ベリーニ三兄弟は特別目を丸くして驚いた。

「お前ら、どうした。俺の顔に何かついてるか?」

 リュウが眉を寄せて訊いた。

「男だと思ってた」

 ベリーニ三兄弟は口を揃えた。うなだれたリュウは少しの間、暗い表情を見せていた。その間、シャオシンとフィージャはそれぞれ白い歯を見せて笑っていた。タンブラーにつけたツクシの口角も歪む。ゲッコもツクシの横に座っているが、ボケッと口を半開きにしたままで特別な反応はない。この求道者的な態度のリザードマン戦士は戦闘以外のことに興味がないのだ。

「うん、ツクシ兄さん。ヴァンキッシュ冒険者団は馬が専門だったんだよ」

 笑顔のニックがタンブラーに口をつけた。

「ツクシ兄貴、グリフォニア大陸を東西に走る大草原の浪漫街道よ。俺たち兄弟は馬に乗って荷を運びながら、一年中、内陸を行き来していたんだ!」

 リッキーが酒の杯を一気に干して大声でいった。

「ツクシの旦那ァ、馬はいいぜえ!」

 ハーヴェイがタンブラーを片手にうんうん頷いた。

「お前らの冒険者団は隊商の護衛を主な仕事にしてたんだよな?」

 ツクシは大皿に盛られたおつまみのなかから、サラミ・ソーセージを一切れ手にとって口に入れた。

「うん、そうそう!」

 ニックは笑顔で頷いた。見てくれは筋肉質で厳ついが、話してみると笑顔が多い爽やかな青年である。

「ヴァンキッシュ冒険者団は団員が多かったからよ。頼まれた荷を運ぶことも多かったぜ」

 リッキーがおつまみの大皿に手を伸ばした。

「実際は武装した運送屋みたいなもんだ。旦那ァ、中央草原街道グランディア・グラス・ロードでは結構有名だったんだぜ、俺たちの団。ヴァンキッシュは安全、安心、快速だってな」

 目を細めたハーヴェイが酒の杯に口を寄せた。

「馬で旅する毎日か――」

 ツクシはサラミを噛み砕きながら呟いた。ツクシも日本にいたころは運送屋――大型トラックの運転手を仕事にしていたが、ベリーニ三兄弟のように顔を輝かして語れるようなことは何もない。早朝に出社してタイム・カードをきったあと、荷を積み込んで、灰色の建物が道の左右に立ち並ぶ代わり映えのない定期ルートを巡り、配送先で積み下ろしを終えて、煙草と男の汗の匂いが染みついた車内で食べるコンビニで買った握り飯。

 繰り返すだけの毎日。

 目を開けながら死んでいた三年間。

 ただ同じ場所を巡った。

 前に進まなかった。

 後ろへも下がらなかった――。

「――俺も故郷クニにいた頃は、いい馬を飼っていた」

 リュウが空にしたタンブラーの底へ呟いた。

「『絶影』ですね。懐かしい――」

 水の入ったグラスを両手で持ったフィージャが、奥まって避けた獣の口へそれを慎重に近づけた。

「わ、わらわも馬に乗ってたぞえ!」

 強い調子でいったシャオシンが、柘榴グレナデン・シロップ・ジュースが入った杯を卓へ置いた。

「ゲロゲロ」

 ゲッコがパカンと空けた大きな口へ特大タンブラーから水を流し込んだ。

「へえ、シャオシンも馬に乗れるのか――」

 ツクシはおっと驚いた顔である。

 生きた馬に独りで乗ったことが、ツクシはまだない。

「ああ、シャオシンは絶影に毎日、餌をやってくれたな」

 リュウが顔を上げて笑った。

 その横でシャオシンがムッと表情を変えた。

「嘘ですよ、ツクシさん。ご主人さまはひとりで絶影に乗れなかったです。絶影は大人しい馬でしたけどね」

 フィージャがいうと、

「う、うるさいわ!」

 シャオシンが金色の髪をなびかせてプイッと横を向いた。普段はお団子にしている稲穂のような色合いの長い髪を、風呂上りのシャオシンは下ろしてある。編み込んだ癖がついた髪は黄金の海原のように波打っていた。

「馬か、自分の馬が欲しいかもな――」

 渋い顔でツクシがいった。

 骨馬レィディは無料で乗れるわけではない。

「買うとなると、いい馬は結構高いからなあ――」

 ニックがツクシの渋面を眺めた。

「俺たちの馬は、ネストにつれてきたとき、みんな脚をやっちまってよ――」

 リッキーが視線を落とした。

「うっくっ。導式エレベーターがあんなに乱暴な乗り物だとは思わなかった。すまねえな、兄弟たちよ――」

 卓上で両拳を握ったハーヴェイが肩を震わせた。

「ハーヴェイ兄さん、泣くなよ」

「ハーヴェイ兄貴の所為じゃあないよ」

 ニックとリッキーがハーヴェイの肩へ手を置いた。ベリーニ三兄弟のなかでもハーヴェイは特別に涙もろいらしく、ニックとリッキーは手馴れた様子だ。

 ツクシがおつまみの大皿にあったサラミ・ソーセージを見やって、

「ああ、お前らの馬って、ここでソーセージになってた――」

「うっ!」

「ううっ!」

 おつまみの大皿に伸びたリュウとシャオシンの手が止まった。

「んっ? どうかしました?」

 フィージャはサラミ・ソーセージを何枚か一緒にして噛み砕いている。

「ああ、いいんだ。気にしないでくれよ」

 苦笑いでニックがいった。

「あいつらを息の根を止めたのは俺たちなんだ」

 リッキーが顔を横に向けた。

「馬が脚をやっちまったら、もうどうにもならんからな――」

 うなだれたままのハーヴェイが鼻声で唸った。

「ま、まあ、また買えばいい。連合レイドの探索は順調だから、お前らも金にはさほど困ってないだろ、たぶん――」

 気まずくなってきたツクシは視線を迷わせていた。

 彼らの愛馬はだいぶ前にツクシたちの胃袋の中へ納まっている。

「うん、そうだな。馬をまた買えばいいんだけど――」

 ニックの表情が陰った。

「馬を買ってもよ――」

 元々怒ったような顔をしているリッキーがその表情に怒りを滲ませた。

「ツクシの旦那、戦争で中央の陸路が途切れちまったんだ。馬があっても、もう走る道がねえ、運ぶ荷もねえ――」

 ハーヴェイが重い声でいった。

「ああ――」

 ツクシの視線が落ちた。

「それで仕事をなくしたヴァンキッシュ冒険者団は、ネストに来たという話だったな――」

 リュウが空になったタンブラーをまた覗き込んだ。

「戦争ですか――」

 フィージャは空にしたグラスを両手で包んでいる。

「戦争を始める輩はみんな愚かものじゃ!」

 シャオシンが空にした杯を卓に叩きつけた。

「どうした、シャオシン、酔っているのか。おいそれ、酒じゃないだろうな、ジュースだよな?」

 ツクシは混ぜっ返したが、唇を噛んでうつむいたシャオシンは怒りの表情を崩さない。

「どんな理由であれ、戦争は民にとって悲劇でしかないのだ――」

 リュウが諦めたような口調でいった。

「ええ、そうですよね。戦争はいいことではありません」

 フィージャが頷いた。

「うん、本当にそうなんだよ。戦争が始まってから、つまんないことばっかりだ。誰も得をしていないよ――」

 ニックがうつむいた。

「俺たち兄弟が生まれた村は、ミトラポリスの北にあったんだけどよ!」

 歪んだ顔のリッキーがニックの言葉を繋げた。

「俺たちの村は燃えて無くなった。俺たちの故郷は本当にド田舎だったんだ。牛と畑の他は山と森があるだけだった。冬は寒さが厳しくてな。それで嫌になって、親父があの世あっちへ逝った機会に、俺たち兄弟は故郷クニを飛び出した。うん、一度は自分から捨てた故郷なんだよな――」

 ハーヴェイがツクシをはっきり見つめた。

「お、おう――」

 辛気臭い気配を感じとったツクシの顔が引きつっている。

「で、でもよ。な、無くなっちまったらさ。か、帰る所が本当に無くなるんだよな。な、無くなるんだよなあ。な、無くなる前は気づかないんだよな。ば、ば、馬鹿な話だ!」

 ハーヴェイの目から涙が溢れ出た。その左右に座るニックとリッキーが長兄の肩へ手を置いたが言葉に詰まっている。リュウもシャオシンもフィージャも顔を伏せた。ゲッコが喉の奥で「ゲロゲロ」と小さく鳴いた。この鳴き声に意味はないようである。

「――チッ! おーい、テト、じゃがいも酒のボトルを持ってこい。今すぐだ!」

 椅子から腰を浮かせたツクシが怒鳴ると、

「はいっ、どうぞ!」

 威勢のいい返事と一緒に、銘柄ラベルのついていない酒の瓶が卓に登場した。

「おう、テト。随分と早い対応だな――」

 ツクシが横にいたテトを見つめた。

 唇の先に右拳を押し当てたテトが細い身体をくねくねさせながら、

「そろそろツクシの席から注文があるかなと思って用意しといたの。的確なサービスにはチップだよね?」

「処女膜のある分際で淫売いんばいみたいな口を利くんじゃねェ。百年早いぜ。用が済んだらとっとと失せろ、このちいぱいが――」

 ツクシはまったくの無表情で暴言を吐いた。はっと顔を上げた三人娘がツクシを凝視した。唖然とした表情になったハーヴェイの涙がピタリと止まった。長兄の左右でうなだれていたニックとリッキーも顔を上げて目を丸くしている。

「――しょ、しょ、まく、って!」

「この、へんたい!」

「どケチんぼ!」

「色ボケクソ親父!」

「ちいぱいいうな!」

 ガクンガクンとぎこちなく後ずさりしながらテトは何度も吼えたが、ツクシは視線すら返さずに自分のタンブラーへ無色透明のじゃがいも酒をゆっくり注ぎ込んでいた。

 十分に仇と距離を離したあと、

「ツクシは今すぐに死ね!」

 悔しそうに叫んで、テトは厨房へ駆け込んでいった。

「流石、師匠、不動心――」

 重々しく呟いたゲッコが眼球だけを動かしてツクシを見やった。

「おう、わかってるな、ゲッコ。オラ、お前ら、杯を出せ」

 深く頷いたツクシが銘柄のない酒瓶を瓶口を向けた。

「お、奢ってくれるのか、ツクシ兄さん!」

「おいおい、いいのかよ、いいのかよ、ツクシ兄貴!」

「これは兄弟盃だな、ツクシの旦那!」

 ベリーニ三兄弟が身を乗り出した。食うに困っているわけではない。しかし、下っ端冒険者のベリーニ三兄弟は生活が楽なわけでもないので、ツクシ同様、酒の奢りはいつでも歓迎のようだ。

「あのな、うるせェよ、むさ苦しい。やっぱりやめとくか?」

 顔をしかめたツクシが酒瓶を引っ込めた。

「いや、いや、いや!」

「もらう、もらう!」

「こ、これがあの有名なヤマサンの『スペシャル』か――」

 わぁわぁいいながらベリーニ三兄弟が空の杯を突き出した。

 顔を歪めたツクシが目の前にきた三つの杯へ、じゃがいも酒をダバダバ注いで回って、

「何だ、お前ら初体験なのか。じゃがいも酒童貞揃いってわけだな。いいか、息を止めて、ぐっといけ。中途半端な量を口に含むと余計に辛いぞ。オラ、乾杯」

「乾杯!」

 四つの杯を衝突させたあと、四人の男が顔を上向けてジョナタン特製じゃがいも酒を喉へ流し込み――。

「――ぐえっあっ!」

 一様に燃え上がった男たちの喉から呻き声が漏れた。

「いっ、痛い! 喉越しが痛いレベルだよ、これ!」

 ニックが叫びながら頭を卓へゴンゴン叩きつけた。

「は、鼻が、鼻が潰れるう!」

 リッキーは鼻先を両手で押さえて顔を左右に振っている。

「あおぉおぁあぁおっ――おーい、テトちゃん、大至急、水をもってきてくれ。喉から胸が大火事だ!」

 顔を真っ赤にしたハーヴェイが腰を浮かせて消火要請である。

「そっ、そんなにすごいのか?」

 リュウが喉を鳴らした。

 シャオシンとフィージャは絶句していた。

 突然起こった騒ぎに、ゲッコですら驚いた様子を見せている。

「――リュウも一杯やるか? こいつの強烈なパンチは癖になる」

 顔うつむけて奥歯を噛み締め、じゃがいも酒を耐え切ったツクシの声が掠れている。

「ど、どうしようかな――」

 半笑いのリュウが空の杯のなかへまた視線を落とした。

「リュウ、絶対にやめてください」

「リュウ、酒欲しさにここまで堕ちるつもりかえ?」

 フィージャとシャオシンが真顔でいった。

 酒場宿ヤマサンで行われたネストダイバー連合の打ち合わせが終わると、ゴロウとヤマダと何故かゾラがツクシの丸テーブル席へやってきて、ネストダイバー九班の取り分になった金を分配した。一週間をネスト探索に費やした今回は、ネスト管理省から支給された賃金もかなりの金額だ。今日に限っての約束で、シャオシンとフィージャから許可されたリュウが喜び勇んで酒のお代わりを注文した。

「次回の探索は四日後の昼からだ」

 ゴロウがいった。

「何だ、いつもより休みが一日多いな」

 金を数えていたツクシが顔を上げた。

「連合の参加者が多くなっただろ。備品の調達班から悲鳴が上がってな。次回から一日多く見てくれとよ。まァ、これは仕方ねえやなァ――」

 ゴロウは苦笑いだ。

「なるほどな。何だ、ゴロウ、座らないのか?」

 ツクシがいった。

「俺ァ、明日の朝一番から患者きゃくの往診があるから先に帰る。今回は一週間も地上うえを空けちまったからなァ――」

 ゴロウが髭面を曲げた。

 強欲自慢で仕事が大好きなゴロウにだって疲労がないわけではない。

「ああそうかよ、医者は忙しいな」

 ツクシが投げやりな口調でいった。

「誰かさんと違ってな、俺ァ、いつも忙しいんだ。じゃあ、またな、おめェら」

 歯を見せて笑いながら、ゴロウはヤマサンから出ていった。

「僕もゴロウさんと一緒に今から地上へ帰るっす。酒店の仕事も気になるし、ミシャの体調も――」

 ヤマダもぶつぶついいながら出ていった。王座の街から地上へは一時間も歩けば到達する道のりで道中はほとんど危険がない。ツクシたちは探索を終えたあと王座の街で解散をすることが多くなった。探索を開始するときは、まだゴルゴダ酒場宿が集合場所になっている。ボトル半分残ったじゃがいも酒を見やったツクシは酒場宿ヤマサンで一眠りしてから三人娘と一緒に地上へ帰ることに決めた。ヤマサンの裏手には大きめの天幕を垂れ幕で区切った宿泊用の個室がある。ゲッコは常にツクシと行動を共にしているので、口を半開きにして黙ったまま丸テーブル席にじっと座っていた。そのゲッコをツクシの横に座ったゾラが厳しい表情で睨んでいる。ゾラに視線を返したゲッコが「ゲッゲッ」と喉の奥で笑った。

 リュウはシャオシンとフィージャに引きずられて裏手の宿泊施設へ連行された。ツクシはそれを見て、金のあるうちに酒を飲めるだけ飲んでおくかと決意した。

 ツクシはベリーニ三兄弟とじゃがいも酒を酌み交わした。

 そのうちに、トカゲは酒を飲まないのか、そんな疑問が頭に浮かんだツクシがゲッコにじゃがいも酒を飲ませてみた。興味本位である。ツクシのいうことにゲッコは逆らわない。聞いたところ、リザードマン族にとって土下座は謝罪ではなく絶対の服従を示す姿勢らしい。

 ゲッコは特大タンブラーになみなみと注がれたじゃがいも酒を、いつも通りパカンと空けた大きな口へ、ダーッと豪快に流し込むと、「グッゲェーッ!」と悲鳴を上げながらぶっ倒れた。エイシェント・オークの一撃を食らっても立ち上がるリザードマン戦士をも、じゃがいも酒は一撃で打ちのめしたのだ。床のゲッコはトカゲの眼球をぐるんぐるんと回転させ、手足としっぽをピンと伸ばし、今にも死にそうな様相である。このまま死ぬのかも知れない。ツクシたちはゲラゲラ大笑いしていた。ゾラは特別に嬉しそうな顔で笑っている。そのあと、ツクシへ魔性の色仕掛けを慣行したゾラも、じゃがいも酒に叩きのめされた。

 酔い潰れたゾラはベリーニ三兄弟に担がれて自分の定宿へ帰っていった。

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