十一節 その銘は、ひときり包丁
ゴロウはツクシにすぐ追いついた。先にあった道の分枝で立ち止まったツクシが鼻を利かせて、ユキの残り香を確認していたのだ。
鼻先を動かすツクシを眺めながら、半信半疑のゴロウが、
「ツクシよォ、本当にユキはこの道へ逃げ込んだのか?」
輸送路として使われていないネストの道は屍鬼とファングの棲家になっている。ファングに睨まれて腰を抜かした臆病なユキがこんな場所に逃げ込むものなのか、そんな疑念がゴロウにあった。
「ユキの他に男が三人いる」
吐き捨てるようにいうと、ツクシは道を右に折れて走っていった。
「おい、男が三人って何だよォ。くっそ、ちゃんと俺に説明しろ!」
ゴロウが追うと女の子の声と男の声が聞こえてきた。
女の子の声は泣いていた。
男の声は荒ぎ笑っている。
髭面をへし曲げたゴロウが、
「くっそ、くっそォ――ツクシ、まさか、その男三人ってのは――!」
怒鳴り散らしたい気分だったが怒鳴らない。
ツクシもゴロウも乱れた息も殺し並んで歩いた。
ゴロウは歯を剥いて唸りながら歩いている。
ツクシは、顔うつむき加減で、滑るように歩く。
ツクシの顔にかかった闇がひどく濃い――。
先のT字路を左に折れると、奥行き三十メートルほどの直線になっていた。道の中央に、導式灯がひとつある。闇に浮かぶ青白いスポット・ライトに照らされて、三人の男がユキを犯していた。
一糸纏わぬ姿ではない。
高く上がって揺れるユキの足の先に赤茶色のブーツだけ残っていた。
ゴロウは赤鬼の形相を見せた。
ツクシは凶悪なまで不機嫌な顔になった。
怒り狂う二人の男の視線の先で若い男たちがまた笑う。
幼い身体への行為に及んでいる三人の男は、ツクシの十メートルほど先。
腰の刀の柄へツクシの右手が伸びてゆく。
俺はマヌケだ。
ここから刃物を抜いて駆けつけて、ユキを犯している男たちに「わぁ!」と大声を上げながら切りかかる。
きょぇえ! とかでもいい。
いい
これはマヌケな姿だろうな――。
ツクシの口角が鋭く歪む。
俺という男は大マヌケだ。
死んだほうがいいのは俺だ。
情に
俺はアホなオッサン。
馬鹿な大人。
死んだほうがマシな最底辺のゴミクズだ――。
ツクシの三白眼に殺気が満ちた。
俺は大マヌケなゴミクズだ。
悪いのはこの俺だ。
俺の所為でユキは泣いている。
ユキをオモチャにしているあのチンピラどもだけが悪いわけじゃない。
この状況を招いたのは俺自身の決断だ。
俺の甘い判断だ。
だから、あいつらだけが悪いわけじゃねェ。
そうなのだろうがな――。
その男の怒りは殺意の刃の研磨石。
哀しみが乾いた瞳に水を呼ぶことはない。
しかし、胸中に留まる涙は怒りの研磨石へ水を打つ。
殺意の刃が怒りと哀しみで
ツクシの左の親指が刀の鍔を弾いて鯉口を切った。
横でゴロウが咆哮した。
ひとの言葉ではない。
赤鬼の咆哮だ。
ツクシの足元で極彩色の光が散った。
ゴロウの足はその光線に止められた。
ゴロウの視界の片隅に映ったのは七色に輝く絵画であった。
零から久遠へ向かう
消失したツクシは零秒後、十二歩半先の座標に出現した。
その背で外套が跳ね上がっている。
大きく広がったそれは翼のように見えた。
一閃した白い光がひるがえってまた一閃。
目に止まらない。
ゴロウが目撃したのは発生した結果の残像だった。瞬きする間もなく男のうち二人が地面へ転がった。
遅れて血の花が虚空にぱっと咲く。
このとき、一番奥手にいた猿顔の男が目にしたのは、ツクシが白刃で虚空に描いたきらめきのみだ。直後、ユキを後ろから犯していた男の頭がぼとんと落下した。きらめきがひるがってユキの髪の毛を鷲掴みにしていた男の上半身を斜めに叩き割った。悲鳴を上げる間もなく男二人は惨殺された。
虹のきらめきとともに出現したのは黒革鎧を身にまとった男だ。
その男はおかしな帽子を目深にかぶっていた。
前にだけせり出した鍔の下で男の目がギラギラと光っている。
男が手に持った白い刃と同様、それは殺意の光だった。
殺意の眼光を持った男は、もはやひとの顔をしていない。
これは魔獣の相貌――。
猿顔男はギクシャクと回れ右をすると、道の奥へ脱兎のごとく逃げていった。
ボロマントが翻るその背を映して、ツクシの瞳が極寒の色で燃え上がる。
しかし、それと同時に、ツクシは躊躇った。
ツクシの視界の片隅にユキの白い四肢が映っている。
あの猿顔を必ず殺す。
いや、先にユキが無事かどうか確認しねェと――
ツクシが躊躇っているうちに猿顔男は闇へ姿を暗ませた。結局、ツクシは逃げた猿顔男を追わなかった。いや、追うことができなかったのだ。
ユキは地べたに横たわったままツクシを見上げている。
ツクシは血塗られた刃を手に下げて身じろぎひとつせずに佇んでいる。
ゴロウがよろめくように歩み寄ってきて、
「お、おい、ツクシ。今、どうやってそいつらを
ゴロウの声が掠れていた。
ツクシは沈黙したままだ。
猿顔男が逃げ去ったほうへ、ツクシは目を向けている。
微動だにしない。
おめェは一体、何者だ――。
ゴロウの喉元にその疑問が上がってきたところでツクシが振り向いた。
その眼光は未だ刃。
「ぬぅお――!」
ゴロウは喉元にまで来ていた疑問を呑み込んだ。
「ゴロウ、ユキをすぐ診てやれ、医者の仕事だ」
ツクシがいった。
声にもまだ殺気が残っている。
「あ、あのなァ、ツクシ、何度いえばわかるんだ、俺はイシャってヤツじゃなくて布教師だ、くそっ、ふざけんな、くそっ――ユキ、痛いところを俺にいえ、すぐ治してやる!」
ゴロウが鬼瓦のような顔をユキへ寄せた。
ユキは近くに落ちていた自分のマントを手に取るとそれをかぶって身体を丸めた。
「――ゴロウ、落ち着け、ユキが怖がってる」
ツクシは顔を背けた。
ユキをネストへ連れてくるべきではなかった。
取り返しがつかねェことになった――。
ツクシの胸が後悔でまた煮える。
「あっ、ああ、そうだな、そうだぜ、ツクシ――おっしゃ、ユキ、もう大丈夫だからな。おめェの怪我は俺が治してやる。だから、おめェの身体を診せろ。俺ァ、腐っても布教師なんだ、信用してくれ」
ゴロウはゆっくり話しかけた。ユキはようやく身を起こしてゴロウへ顔を向けた。ユキの左の目が赤い。殴られたらしい。眼球が内出血で赤く染まっている。
ゴロウが髭面を真っ赤にして歯ぎしりの音を鳴らした。
「――わたし、へいき」
ユキは傷んだ顔を背けた。
消え入るような声だった。
「平気じゃねえだろ、ユキ。奴らに殴られたな。見せろ、すぐ治してやる!」
ゴロウが肩をつかもうとすると、身を引いたユキが、
「へいき!」
ゴロウは空気を噛み砕くような仕草をしている。
「ゴロウ、怒鳴るな。ユキは何も悪くないんだ」
ツクシがいった。
「くそっ、ツクシ、いちいち、うるせェんだよォ!」
怒鳴ったゴロウはツクシを睨んだが、やがて、バツの悪そうな表情をユキへ向けて、
「とにかく、ユキ、俺が治してやる、そのまま動くなよ、絶対に動くなよ。御子エリファウスの敬虔なる使徒、布教師ゴロウ・ギラマンの名において式を執行する。導式陣・生命樹の治癒の
ゴロウの右手とユキの顔の間に、導式が並んだ
ユキから顔を背けたまま、
「ユキ、動くな」
ツクシがいった。
「――良し、いいぜ、ユキ。目を開けてみろ」
ゴロウがかざしていた右の手を下ろした。ゴロウの額に油汗がにじんでいる。ユキの顔の前で動作していた導式陣は溶けるように消滅した。ユキの顔の傷は綺麗に治っていた。傷の痕跡すらない。
ゴロウが恐る恐るまぶたを開いたユキへ、
「おっしゃ、次はおめェの身体だ。診せてみろ、ユキ」
ユキはでうつむいて、
「
外套を胸元に引き寄せたユキの猫耳が伏せていた。
「くっそ、ユキ、今は大人しく俺のいうことを聞け!」
ゴロウがダミ声を張り上げた。
普段のゴロウは子供を本気で怒鳴りつけるような男ではないのだが――。
「――ゴロウもユキもだ。我慢してくれ」
ツクシが真下に向かっていった。
ユキの目から大粒の涙がこぼれている。
太い眉尻をがっくり下げたゴロウが、
「ああよォ、ユキ、わかった。おめェが辛いのはよくわかってるんだ、俺たちにだってよォ――おっしゃ、おめェが隠したい場所は手で隠しておけばいい。とにかく、腹と背中だけは診せてくれ。おめェの命にかかわるような怪我がないか確認をしてえんだよ。だから、頼む、ユキ」
泣きながらユキは胸元のマントを股の間に下ろした。
ゴロウが「触診だ」と一言断ってユキの身体を調べた。
「――ところどころ、青タン(※皮下出血)と擦り傷があるだけだ。骨や主要な臓器に異常はねえ。このていどなら式を使うまでもない。よし、ユキ、次は背を向けろ。動けるか?」
ゴロウがいうとユキはうつむいたまま背を向けた。その動作で細い太ももの内側を伝る赤い線がゴロウの目に映る。
ゴロウが極端に沈んだ声で、
「ツクシ、手からぶら下げてるその
「――ああ」
生返事をしたツクシは右手の刀へ視線を落とした。
その刃を鞘に納める気配はない。
「どうも、何を考えているのかわからねえ野郎だよなァ――」
ゴロウは呟いてユキの背中に目を向けた。白い背中に血が滲んでいる。ユキのしっぽが力なく地面に垂れていた。
「まァ、この擦り傷も治してやるか。今回は特別だぞォ。普通ならがっぽり銭をムシり取るところだ。ユキ、俺に感謝しろよな、今回は特別だぜ――」
ゴロウはユキの丸まった背中に右手をかざし、また導式陣・生命樹の治癒を発現させた。うつむいたツクシの視線の先に死体がある。粗末な麻の上衣とズボンと身につけて腰に短剣。身体は痩せ細り顔は垢で黒ずんでいる。ツクシは死体に幼さの名残があることに気づいた。首がないほうの死体も背丈と格好を見ると似たような年齢のようだ。その生首の顔つきも幼いように見える。もっとも、生首は顔の半分にはびっしりと刺青が入れてあって、堅気に見えないが――。
「――こいつらは二十歳前後の
ツクシが呟くようにいった。
ユキの治療を終えたゴロウが、
「ああよォ、たぶん、そいつらは
ゴロウが手ぬぐいをユキの背中越しに突き出した。
背を向けたまま、手ぬぐいを受け取ったユキが、
「――ゴロウ、あっち、向いて」
「はァ、へいへい、とくらァ――」
ゴロウは苦笑いを浮かべながら立ち上がって背を向けた。
ユキは傷ついているが壊れていない。
少しだけ安堵した様子のゴロウがツクシの横にきて、
「ツクシ、ところでよォ?」
ツクシは返事をしない。
構わずにゴロウが、
「おめェはこいつらをどうやって殺ったんだ。あのとき、俺はおめェの動きがまるで見えなかったぜ。導式剣術とも違う感じだ。『歪み』が発生しなかったから魔導式剣術でもねえよな。そうするとよォ、ツクシの使ったのは、伝説のサムライ・ナイトの『
横目でゴロウを見やったツクシが、
「そんなの知らん」
「
ツクシはまだ何かいいたそうなゴロウから目を逸らして、右手から下がった刀へ視線を落とした。ツクシの位置からユキを犯していた男たちまでの距離はおおよそ十メートルあった。歩幅にして十二歩半離れた地点にいたツクシは激高して、その場で腰の刀の柄に手をかけた。そして、ツクシは必殺を確信した。実際、ツクシの足元には死体が二つ転がっている。
この刀が俺に何かを教えてくれたらしいが、それにしても不気味だぜ――。
だが、とツクシは考える。
だが、この刀は頼りになる。
ひとを斬るときは刃が人骨にかかってなかなか綺麗に斬れないと聞く。
しかし、この刀は違う。
ひとの肉も骨も、その他の何にしろ、この刀ならば必ず斬れる。
この刀、まるで――。
「――ひときり包丁」
呟いたツクシが、魔刀ひときり包丁で虚空をなぎ払った。その動作ひとつで、その刀身は血曇りひとつ残さない。互の目乱れ波紋が妖しいまで美しいその
日本刀は手入れをしなければ、息を吹きかけただけで、そこから錆びるというが――。
いや、こいつに手入れは不要。
ツクシは理由もなく確信した。
黒い鞘の鯉口をツクシの左手が引く。
そこへ帰る刃がギラリと笑う。
近くには、ユキが背負っていたツクシの背嚢が落ちていた。
剥ぎ取られたユキの衣服も散らばっている。
ユキは自分の衣服を拾い集めた。ユキのショーツは破けていたので使い物にならないだろう。それを手に持ったユキは「うぅうっ!」と呻いた。
また泣き始めるのか――。
ツクシとゴロウが身を竦ませた。
しばらくユキは呻いていたが声を上げては泣かなかった。ズタボロになった下着を諦めたユキはそれをぽいっと後ろへ放り投げた。他の衣服も破けたりほつれたりしたが着れないことはなさそうだ。ユキのお気に入りらしい赤頭巾つきのマントは無事だった。この道は屍鬼の呻き声もファングの気配もない。静かだった。ユキの衣服が擦れる音と鼻水をすする音だけが響く。
しかし、ここで起こった行為の臭気がまだ残っていた。
傷ついたユキから目を逸らしても、鼻に流れ込んでくるその匂いが、ツクシの神経を尖らせる。
「すまん、あの猿顔を逃がした」
ツクシが吐き捨てるようにいった。
ゴロウにいったのかユキへいったのか――。
「ツクシ、ネストの奥へ逃げて生きて帰れるとは思えねえ。どこも屍鬼とファングが待ち構えているぜ。逃げた男はおめェにぶった斬られるよりも、ずっとひでえ死に方をするだろうよ――」
ゴロウは応えたがその声に力がない。
「だが、何故――?」
ツクシは壁に立てかけてある斧槍を睨んだ。猿顔男が残していったものだ。屍鬼の群れに急襲された混乱に乗じてトニーとモグラを殴りつけ、ユキを拉致した三人の男は人気のない脇道へ逃げ込んだ。そこまではツクシにも想像できる。男たちがユキをさらった目的もツクシは目撃した。しかし、ツクシが叩き斬った二人の男は、ウルズ組で見なかった顔だ。少なくとも刺青男はいなかった。これだけ目立つ刺青を顔に入れていれば記憶に残っている筈。
それに何故、この三人だけが屍鬼から襲われなかったのか。
この細い脇道で倒された屍鬼は一匹も見当たらない。
ここに転がっている二個の死体とここから逃げた猿顔男は屍鬼ではなかった。
屍鬼は女を食うが女を犯すことはない。
女を犯す――。
考え込むツクシの耳にユキが鼻を鳴らす音がまた届いた。
ツクシは深くうつむき、顔を歪め、奥歯を噛んだ。
「あ、ああよォ。ユキ、あ、歩けるか?」
身を屈めたゴロウがおっかなびっくりの態度で声をかけた。
うつむいて震えるユキは地べたに女の子座りである。
猫耳も伏せっぱなしだ。
「ゴロウ、お前がユキに背を貸してやれよ」
ツクシがゴロウを横目で睨んで促した。
「そっ、そうだな。よし、ユキ、俺が
屈んだゴロウが、その背中をユキへ見せた。
「――ツクシがいい」
ユキが涙声でわがままをいった。
へにゃあ、と地面に座るユキの前で片膝をついたまま、
「おい、お姫様からのご指名だぞ、ツクシ」
ゴロウがツクシを睨んだ。
地面に落ちていた自分の背嚢を拾い上げたツクシが、
「あっ、ああ。だが、俺は自分の背嚢があるしなあ、これを背負うと、ユキを背負えな――」
「うっ、うぅう、ヒック!」
顔を上げてユキが無責任な大人へ泣き顔を見せた。
危機を察知したツクシがギョッと後ずさりをした。
ユキの瞳にまた涙が決壊寸前まで溜まっている。
「ほらよォ、ツクシがゴネるからユキがまた泣くぞ。泣いたら、おめェの所為だからなァ!」
ゴロウが鬼の首を取ったような口振りで非難した。
「クソッ――わかった、ユキ。俺がおぶってやる――おい、ゴロウ、お前は俺の背嚢を持て」
ツクシが背嚢をゴロウの胸元へ突きつけた。
「はァ、やなこった。そこらに捨てとけよ、そんなゴミはよォ――」
ゴロウが鼻を鳴らして髭面を横に向けると、
「ゴミって。うっ、うっ、うっぐうっ!」
顔を上向けてユキが猫の遠吠えの体勢を作った。そのユキの頬を大粒の涙がぼろぼろ流れる。屍鬼から逃げ回っているときもユキはツクシから預かった背嚢を捨てなかった。男たちにさらわれたあとも抱え込んで離さなかった。ツクシの背嚢には、寝袋だとか着替えだとか手ぬぐいだとか空の弁当箱だとか、応急手当用の薬とか包帯だとか、そんな雑多なものが詰め込まれている。ツクシの背嚢にたいした物は入っていないのだ。自分の命を天秤にかけて考えれば逃げる途中に放り捨てても責められることはない。
だが、ユキはツクシの背嚢を手放さなかった。
それがユキへ与えられた仕事だったから――。
「――よせ、ユキ、わかった。わかったから、泣くな、そんなに泣くな!」
ツクシの声が完全に裏返っている。
「わ、わかった、ユキ、俺が持つ、ツクシの背嚢は俺が持つからよォ。泣くなよなァ!」
ゴロウがツクシの手から背嚢をひったくった。
ツクシは片膝をついてユキへ背を見せた。
ぐすんぐすん泣きながらユキはツクシの背に身を預けた。
首筋にかかるユキの吐息と髪の毛がこそばゆい。
「――戻るぜ、ゴロウ」
ユキのアシになって、ツクシが立ち上がった。
「ああよォ、ツクシ」
ツクシの荷物持ちになったゴロウが応じた。
ツクシの背に顔を埋めるユキは何もいわない。しかし、ツクシは自分の背中で知った。ユキの身体はまだ強く震えている。
二人の男はそれぞれの荷物を背負って来た道を引き返していった。
取り残された二個の死体が導式灯に青白く照らされている。
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