地面に生命色が侵して
秋草
馴染み深い色、不快色
昨日から仕切りに続く季節外れの雨は、「」の胸の内を代わりに代弁しているようだった。
時間を知らせてくれるくたびれた低い音は、直ぐに「」のことなんて忘れてしまえるだろう。わずかの間「」の脚の代わりになってくれた相棒さえも例外ではない。徒歩でいえば「」の一歩分、進みさえすればこの面倒な役目を終えられる。
病衣特有の辛気臭い薄青色が濡れて、生命臭溢れる濃い青色に変わる頃には「」は「」だった容れ物を見下ろしていることだろう。
雨風が屋上にいる「」に最後の餞別を贈るようにどこか優しく頬を掠めていく。その拍子に精一杯しがみついていた葉が落ち、静かに字面に叩きつけられる。つぎは「」の番だ。
ゆっくりと「」は左右に備え付けられたタイヤを指で優しく撫でながら一歩分を進む。足元にはひび割れたアスファルトがもう残っていない。「」は深呼吸と左手首を右手首で掴む「いつもの」おまじないをして宙に車椅子を走らせて。
つぎはちゃんと「」を見てもらえることを祈って。
地面に生命色が侵して 秋草 @akikusa0
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