第3話
「ん……ぅ…………?」
あら。
私、いつの間に寝ていたのかしら?
………………あら?
……おかしい、わ。
だって、私。
…………自宅の寝室で、休んだはずですのよ……?
なのに。
どうして……?
どうして…………この屋敷に、おりますの……?
分からないわ。
分からないのよ!!
どうして?
どうしてなの?!
どうして、私が廊下に?!――…………って、違うわね。
大体。
なんで私がこの屋敷の廊下に転がってないといけないの?
おかしいわよね?
そうよ。
おかしいわ。
………………ちょ、ちょっと落ち着きましょうか。
えぇ。
そうね、それがいいわ。
そうしましょう。
…………………………ところで、『落ち着く』って。
どうやるのだったかしら……?
私。
頭の中がごちゃごちゃで、『落ち着き方』が分かりませんわ……。
って。
いつまでもここに座り込んで、頭を抱えていても始まりませんわね。
とりあえず。
下衆で屑でヤリ【ピ―――!!】。
つまり。
変態色欲ヤリ【ピー】下衆伯爵ですわ。
それを探しに行きましょう。
見つけ次第。
殺してしまいましょうか……?
それとも……………。
|アレ(・・)を、綺麗に切断してしまいましょうか…………?
……そうね。
それがいいわ!
あぁ、大丈夫よ。
殺したりしないわ。
ただ。
…………これ以上あの伯爵の血が増えぬだけ……。
あぁ。
なんと心躍ることでしょう!!
さぁ。
早くあの屑を探しだしましょうか?
うふふ……うふふふふふ…………。
こうして、私はゆったりと廊下を進んだわ。
そして。
見つけたわ……ローダン伯。
私は少し開いていた扉から中を確認し、室内に入った。
それで気づいたわ。
ローダン伯の正面のソファーに、ミフィ―と――――あの、魔術師が居ることに。
……でも。
おかしなことに、誰も私に気づかないの。
…………ちょうどいいわ。
私は術を使って、剣を取り出して、ローダン伯の首に突きつけた。
でも。
やっぱり誰も気づかないわ。
変ね。
でも本当にちょうどいいわ。
私はこれ幸いとローダン伯のアレを狙って、剣を構え、垂直に振り下ろした。
…………手ごたえがない?
変ね?
外していないわよ?
えぇ。
だって私の剣は、(足を広げて座っている)ローダン伯の股(についてる【プポーー】)に突き刺さっているですもの。
……血一つ出ていないなんて、おかしいわ。
ためしに、剣の刃に指を滑らせてみました。
…………傷口が出来ませんわ。
刃が刃になっていないのかしら?
そう思って、私は頬をつねってみました。
……………………痛くありませんわ……。
と、言うことは。
これは夢……なの、かしら……?
まぁ。
夢ならしょうがないわね。
黙ってみている事にするわ…………。
「それで、ミフェイア。陛下主催のパーティに着ていくドレスは決まったのかい?」
やわらかく微笑むローダン伯。
その笑みを見たのは、いつぶりかしら……?
確か、お母様がまだ元気にしておられた頃………。
ミフィが生まれたばかりの頃ですわね。
なんて思っていましたら、ミフィが困った顔で緩く頭を振った。
「いいえ。実はね、お父様。ふわりとした空色とシックでクールな赤のドレス。どちらの色にしようかと迷っているの」
まぁ!
何を言っているの?!
ミフィはなんでも似合うに決まっているでしょ!!
私のお勧めは瞳に合わせたアメジストの、甘くもなく、辛くもない。
そんなドレスを作れる一級の仕立て屋を呼びつけて一から作らせますわ!!
それからミフィに合う装飾品を作らせ!
なおかつ!
ミフィの美しい金糸の髪を結い上げ、宝石をちりばめ!
あの子の美しさを全面的に打ち出すのですわ!!
そして。
ミフィの美しさに全ての者は目を奪われ、ひれ伏すのです!!
おーほっほっほっ!!!!
……………………。
………………。
…………あぁ、いけないわ。
ミフィの美しさが露見したら、あの狸爺のクソ餓鬼が手を出すかもしれ無い!
そ、それだけは避けなければっっっ!!
だって。
次期、王ですのよ?
そんなものに好かれたら、あの子の将来はまた籠の鳥。
それがいくら、綺麗な綺麗な、大きく広いと言っても。
所詮はあの子の枷。
この広い世界を自由に羽ばたく翼すら、もぎ取られてしまう……。
………………そんなこと、この私がさせませんわっ!!
――――……って。
いけない。
つい恐ろしい未来を考えてしまいましたわ……。
大体。
そんなことをこの私が許すと思いまして?
もちろん。
許しませんわ!!
あの子を悲しませ、苦しませるモノすべて――――この私の敵です。
さぁ、そうと決まれば。
情報を集めねばなりませんね。
……まぁ。
今は動けない上に、何もできませんが……。
可愛いミフィの話を聞いていましょうか。
なんて思って話に耳を傾けたところ、「おや?」っと。
クソ伯爵。
あぁ。
クソじゃなくて、ゴミかしら?
あぁ、屑だったわね……。
…………胸糞悪いわ。
「もうこんな時間だね。さぁ、ミフェイア。もう遅いからおやすみ」
「え……でも私、まだ話がしたいわ」
困ったように、悲しそうに言うミフィ。
あぁ、もう少し起きててもいいって言いたいわ。
でも、でもね!
もう時計は日付が変わる時間を示しているのよ?
あなたの美容と健康、成長に悪いわ。
うぅ……私もミフィに悲しい顔はさせたくないのだけれど。
大人しく休むのよ?
ね?
ミフィ……。
「ふふ。僕もだよ。だが、君はまだ幼いんだ。だからまた明日。話を聞かせてくれるかい? 僕の愛しい娘」
「……はい。お父様」
優しく微笑んだクソ。
それに嬉しそうに微笑むミフィ。
でも一瞬だけ、あの子の綺麗なアメジストの瞳が、悲しげに揺れた。
あぁ、ミフィ。
大切な可愛い貴女のためなら、姉さんは。
姉さんはね。
なんでもできるのよ……?
なんでもしてあげるわ!
だからそんな、悲しそうな顔しないで。
貴女を悲しませるすべてを、私が排除するから……。
―――――――――
―――――――
薄暗い室内。
閉ざされた窓の外からは小鳥の囀る声と、早朝特有の柔らかな太陽の光
。
私はそれを確認するまでもなくゆっくりと、ベットに手をついて起き上がった。
寝起きのせいか、少し、ぼぅっとしますね。
でも。
先ほど見たあれは……。
「また……私の願望が見せた夢、なんて…………」
何回目かしら……?
あの子を夢に見るのは……。
私は何度、あの子を夢に見ればよいのかしら?
私は……。
私は…………。
「貴女に会いたいわ……ミフィ…………」
そう声に出すと。
頬を雫が伝った。
もう。
最近は涙腺が緩くなっていて、困ったわ……。
――――バササッ……
……?
物音……?
そう思って音のした、カーテンの掛かった窓に目を向けた。
――――コンコン
すると、何かが当たる音がした。
何かしら?
私は目元を袖口でサッと拭って。
そっとベットを抜け出し、カーテンを少し開ける。
「チチチチチッ」
元気な、綺麗な囀り。
そして囀った鮮やかな色の鳥は、私の姿を見てか。
一通の手紙を置いて行ったわ。
それも厄介なことに――――王家の印の封蝋が押された手紙を、ね……。
はぁ……。
どうしてこんなにも厄介なことこの上ないモノが、今になって届いたのかしら……。
完全に私の居場所は分からないようにしていたはずですのに。
………………あぁ、そう言えば先ほどの鳥。
確か、【個々の魔力を完全に記録し、その持ち主のもとに飛ぶ】という力をもっていましたわ。
もちろん。
【飛ぶ】と言うのは言葉の通り、空を飛ぶことです。
例え。
目の前に魔術の防壁などがあろうとも、全てをすり抜けてくる鳥。
……まったく、私からすれば良い気分にはなりませんね…………。
そう思いつつ。
宛名を確認してみました。
宛名は『セイニィ・ルフィス侯爵殿』。
………あぁ。
ちなみに、私の事ですわ…………。
あと、侯爵と言う位に合った領地もありますの……。
国境付近の辺境―――――つまり私の居る、ここなのですけれど…………。
は、初めの位は【騎士】、だったのですよ?
ただ……その、えっと…………。
討伐にかさなる討伐で………………。
その…………。
しゃ……爵位が…………発生して、しまったのですわ……。
………………。
……………………ミフィに、心配をかけたくなくて。
近隣で出現した魔獣を、姿を隠ぺいして討伐していたのが悪かったのです……。
何体の魔獣を滅したかなど、覚えてもいません。
ですが。
あれほど屋敷の者や、ミフィに見つからないようにと返り血や匂い、怪我、それらすべてを抹消し、証拠隠滅を完璧に行い。
意気揚々と屋敷の自室に帰ったあの日。
つまり、屋敷を出る一年ほど前の話です。
ミフィが私の目の前に突然飛び出してきて、今にも泣きそうな顔で激怒している幼かったあの子を見たとき。
……血の気が引きましたの…………。
もう、サァッと……。
一晩中泣きながら激怒するあの子に、平謝りしましたわ。
え……?
『幼女に平謝りするなんて、姉としてのプライドはないのか』、ですって……?
…………そんなもの、目を真っ赤にしてぷりぷり怒るミフィの前に、粉々に砕け散りましたわ………………。
……まぁ。
あの日以来、私はミフィに一言言ってから、組合員の誰かしらと共に討伐にむかうことになったのですもの。
それから、単独で討伐していたのが組合長にばれてしまい。
あれよあれよと言う間に王の耳に入ってしまったという訳ですわ。
まったく。
で。
【騎士】の位をいただきました。
えぇ、誠に不本意でしたとも……。
今にも王を殺しかねないほどに、ね。
あの時は自身を抑えるのに必死でしたわ……。
まぁ、あの程度では私の隠ぺいの術式は消えませんが!
ちなみに。
その半年後――――つまり、屋敷を出る寸前――――五臓六腑の底から残念なことに。
【準男爵】の位をいただきましたがねっ!。
……コホン。
…………ま、まぁ。
普通であれば、ここ辺りで止まるはずでしたのよ……?
でも、なぜか一年後に【男爵】。
その二年後に【子爵】。
一年後には【伯爵】。
そしてつい三年前に【侯爵】をいただきましたわ……。
なぜに……?
私はただ、ミフィに降りかかる間にその最悪を退けただけに過ぎませんのよ?
それなのに『国を守った』だの、『英雄』だの。
本当にいい加減にしてほしいモノですわ!!
私はミフィさえいれば良いのです!
あなた方の命を救った気など、ましてや救う気すら皆無ですわ。
だいたい、貴族がなんです?
魔術もろくに扱いきらないただの人ではありませんか。
また平民の方の方が立派ですわ。
――――――話が大幅にそれましたわね……。
とにかく、私は侯爵で。
誰も引き取り手のなかった国境付近のうえ、魔獣の出没が盛んで、危険な上。
広大な領地を体よく押し付けられたのです。
まったく。
これだから貴族や王族と言うものはっっ!!
嗚呼、いけませんね。
話がそれ始めましたわ。
手紙の内容を確認せねばなりませんね。
そう思い、手に持っている手紙に目を向け。
握りつぶしていた事に気づきました。
……あら、困ったわ。
修復を行いましょう。
と。
言う訳で修復後、読んでみたところ舞踏会への招待状でした。
あぁ。
あの鳥が飛んできた時点で、断れません……。
だって、あの鳥はこの手紙を持ち帰ならかったのですよ?
私が受け取ったと完全に分かるはずです。
それに。
この手紙。
宛名と同じ者が受け取とらねば、開かないようになっていました。
『何故、気づかなかったのか』ですって?
それはもう。
ご丁寧に封蝋の下に隠れていましたもの。
気づけませんわよ、そんなもの。
微量の魔力を感じましたが、あの鳥が運んできたものです。
魔力が移っていてもおかしくはないと判断した結果ですわ。
……もう、二度と王家の印のついた物には触れません。
そう。
心に決めましたわ……。
―――――――――
―――――――
こうして。
王家主催の舞踏会が開催の日を迎え、私はいやいや王宮を訪れ。
作り上げた微笑みが崩壊しかけておりますの…………。
「今宵もルフィス侯爵殿はお美しい」
「闇夜のごとく凛とした藍のドレスが実にお似合いですなぁ」
「あぁ。まるで闇夜の精霊のようだ……」
と。
四方八方を人の壁にふさがれ。
口々に賞賛されております。
何度目の賞賛かしら?
もう何人もこのように手を揉み。
笑顔を張り付け。
必死に取り入ろうとして来るのです。
「ほほ。今宵も皆さま、お口がお上手ですわ」
えぇ。
もう、その口を縫い付けてしまいたくなるほどに。
なんて、私が考えているなどと思ってもいないのでしょう。
「いやはや、手厳しいですな」
そう言った一人の言葉に合わせたかのようにして、私を取り巻く貴族たちが上品に笑う。
私はその様子にため息をつきそうになるのを必死にこらえ、上品に笑った。
あぁ、何をしているのでしょうね。
私は……。
脂ぎった豚どもと、コルセットで無理やり引き締めたウエストを自慢げにする貴族の女。
それらの顔は、化粧を塗りたぐり、真っ白な仮面のよう。
変ね。
今宵は仮面舞踏会だったかしら?
あぁ、いけません。
しっかりしなくては――――本格的に笑ってしまいそうですわ……。
と、言うより。
私のストレスゲージがMAXに達してしまいそう……。
そうだわ!
この城を破壊してしまえば、侯爵なんて爵位――――剥奪してもらえるかもしれませんね。
さて。
そうと決まれば、さっさとやってしま――――――。
「久しいな。ルフィス候」
………………変ね。
嫌な幻聴と、幻覚が……?
…………気のせいですわね。
えぇ。
気のせいですわ!
だって。
そうでなければ、襟足の長い銀髪に深緑の…………何かを含んだような瞳の男が、私の目の前にいるはずが――――
「ルフィス候……?」
なんでここに居るのです?
なぜ、私に声をかけるのですか?
ディックルード公爵家子息殿…………。
――――――――
――――――
で。
私は崩壊しかけている微笑みを必死に取り繕い、話しましたとも……。
公爵家子息殿以外とも、ですが…………。
はぁ……。
もう何度。
『【ふらついた】と見せかけ足を踏み抜いてしまおうか?』
と、考えたことでしょう。
何度それを行いそうになる自身をいさめたかしら?
あぁ、もう。
さっさとこんな所、破壊してしまっておけばよかったわ…………。
なんて考えていたら。
狸じじ―――いえ、国王陛下のお声が上がりました。
「皆。よくぞ集まってくれた。今宵もゆるりと過ごされよ、と。言いたいところだが……その前に。皆に重要な報告だ」
国王の発言に、静まり返っていた会場はザワリと揺らいだ。
つい、顔をしかめそうになりましたが、寸での所で止めました。
たいした話ではないでしょう。
ですが――――このまますり寄ってくる貴族の相手などしたくありませんわ……。
聞いているふりをしましょう。
「我がイルディオ王国最高峰の学園。アヴィオルド学園の来年度着任の教師を決めた」
ゆったりと話す国王。
ざわめくこの場の貴族。
私は少し困惑気に顔を歪め、困惑の表情を作った。
はたから見れば、私は困惑しているのがすぐに分かるでしょう。
まぁ、顔だけですが……。
『静かにして死ね。死んでしまえ。狸爺』
――――なんて、思っているなんてこと、ありませんわ。
うふふふ。
さぁ、どうやって魔術の発生を勘づかれることなく、あのタヌキを仕留めましょうか……?
ふふふ、ふふふふふ…………。
なんて、楽しいことを考えていましたら。
目を細め、勝ち誇ったように微笑んだ国王と目が合い、不覚にも息を飲んだ。
「その者の名は、セイニィ・ルフィス。またの名を――――セフィニエラ・サティ・ローダン」
「「「「?!」」」」
驚愕の眼差しが、突き刺さる。
「っ…………?!」
そんな、馬鹿な……。
私は、完璧に姿を隠ぺいして、いましたし……今だって、セイニィ・ルフィスと言う名の中年女性の姿を――――って。
「お言葉ではございますが陛下。私はセイニィ・ルフィスでございます。十年ほど前に失踪なされました、ローダン伯のご息女様とは年が合いません」
お淑やかで、自身の年齢を気にする中年女性のセイニィ・ルフィス。
それが今の私。
「だが、確かな筋からの情報ぞ……それを、そなたは否定するか…………?
「えぇ。一国の国王陛下ともあろうお方が、そのような――――」
「そうか、出てまいれ」
は?
この狸爺は何を言っているのです?
そう思い狸爺の視線を追うと、そこには。
瞳と合わせたアメジストの美しいドレスを華麗に着こなし、金糸のような髪を優美に結い上げ、アメジストとダイヤの宝石を飾った、ミフィが……。
「どう……し、て…………?」
どうしてミフィが、ここに…………?
「…………ごめんなさい、姉さん。でも、姉さんはこうでもしなきゃ、危険なことばかりするでしょ……?」
そう言って悲しげに顔を歪め、首を軽く傾け、涙を堪えるミフィ。
私はその姿に、ますます困惑した……。
「姉さんが強いのは知ってるわ。でも、心配なの。不安で不安で…………怖くて、苦しかったの…………!」
堪えきらなくなったのか。
ぽろぽろと、ミフィのアメジストの瞳に涙があふれ、頬を伝う。
私は、あまりの事に身動きが取れず、ただただ呆然と見つめていた。
でも、ミフィが顔を覆って泣き始めたとき。
人ごみをかき分け、あの子を抱きしめていた。
真っ先に思ったことは。
『ミフィを苦しめ、悲しませていたのは私だったのでは?』だった。
「ごめんなさい。姉さん。私、家を出る時姉さんの記憶をでたらめに書き換えたの」
ミフィの衝撃的な告白。
記憶を書き換えた?
え? どこからどこまで??
とても混乱していましたが、周りのざわつきが異常すぎて、はたっと気づいたわ。
私、狸爺の言葉を……否定、しなかったかしら…………?
なんて思って、狸爺に目を向けると――――勝ち誇って見下したような顔をしていたの。
そのせいで、つい。
魔獣何十体を一瞬で消し去る陣を四方八方に展開して、発動させそうになったのは……。
…………まぁ、ミフィに――――。
『それ発動したら姉さんのこと嫌いになるから』
って。
私に抱き着いたまま、無感情な声で言われたんだもの……。
慌てて消したわよ…………。
………………私、ミフィに嫌われたくないもの……。
まぁ。
そのせいで継続して厄介で誰もなり手も、引き取り手なかった侯爵家の領地だけでなく。
厄介な生徒(過多)と、まともな生徒(ごくごく少数)が入り乱れる最高峰とは名ばかりの学園の教師を押し付けられたのよ…………。
――――こうして。
私。
セフィニエラ・サティ・ローダンは、侯爵にして領地を預かるだけでなく、アヴィオルド学園の教師としての職までも押し付けられたのだった。
この結果に。
私がしばらく落ち込んでいたのは言うまでもなく。
いつの間にか和解していたミフィとローダン伯、使用人たちに慰められたのだった……。
――ついでに。
ミフィは八年前に憔悴しきったローダン伯とバッタリ出会い。
和解して、『お父様』と呼んでいたそうです……。
知らなかったわ…………。
あと、ミフィとローダン伯と席を共にしていた魔術師は、私の家(店)に書類を持って現れた、あの男(会ったこともなかった兄弟子)だったわ。
おまけに私がずっと見ていたミフィの夢。
あれは私の願望ではなく、ミフィ自身の(見ているものを見せる)能力だと判明。
私の体の不調はその副作用。
さらにミフィは道具も魔術も使わず、他者の記憶を書き換えたり、他者の考えていることが見え、遠く離れた場所に居る他者を観察することができるそうよ……。
…………それを知らされて。
魔獣退治をしていたのがあの子に筒抜けだった理由が分かって、ますます落ち込んだのは言うまでもないわね…………。
ちなみに、ミフィが私の家を出たあの日。
あの出来事は全てでたらめ。
と言っても、私にはどこまでが本当で偽物なのかわからない。
でも。
ふふ。
ミフィが幸せなら、良いわ……。
あの子が幸せなら。
私も幸せだもの。
それに、ミフィがローダン伯と和解してほしそうにしているから…………、
そうね……。
少し。
ほんの少しだけ……。
ローダン伯――――お父様を許そうと、思うわ……。
私の天使はいずこ? 双葉小鳥 @kurohuji
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