第10話 白くまと黒くま。

 昨日、ママが急に変な事を言ってきた。


「白くまって、白くまって言われるけど、黒くまって黒くまって言わないよね」


 何のことを言っているのかサッパリ分からなかったので聞いてる感じだけ出して、無言でいた。


 そしたら、


「まさしはどうしてだと思う?」


 と答えなければいけない感じになってしまった。

 

 正直、ママのこういう質問は苦手だ。


 だってさ、僕が何を言っても納得しない気がするから。


 でも、無視する訳には行かないのでその場で思った「何となく」で答えてみるしか無かった。



「元々はくまって黒いのが基本で途中から白くまが出てきたんじゃない?」


 ママは黙った。

 あー、やっぱり僕は間違えたんだ〜。


「なるほど。進化の過程で白いのが出てきたってこと?」


「まぁ」


「ママはね、白くまって北極とか南極にしかいないんじゃないかな〜と思ったの。だから森とかでくまが出た時に黒くまが出た〜って言わないのは、そこにいるのは黒くましか考えられないからなんじゃないかなって」


 ママは何を言っているんだろう。

 途中から白くまとか黒くまとか訳が分からなかった。


「でも、まさしが言ってること、確かにそうかもしれないよね!いいね!」


 まさかの展開に僕はびっくりした。だから、


「……でしょ?」


 なんて得意げに言ってみたりした。


 ママはたまにこんなどうでもいいことを言うんだけど、その後で正解を探すとかはしなかった。


 それが良いのか悪いのかは知らないけれど。


「ただ、そうやって考えてみて欲しかっただけ」


 とだけ言っていた。

 

 それは気になるなら正解は自分で探せって言われているようにも思えた。


 ママは僕が学校で書いた作文とか、先生には大して褒められなかった絵とか、僕自身が自分で考えたものが好きなのだ。


 たまに僕でさえ全然いいと思わなかったものを待ち受けにしている時もある。


 実はママが可愛いとかいうものは全然可愛くなくて少し気持ち悪かったりするから、素直に喜べない。


 だって、エクレアが夜空を飛んでいたり、クリームソーダが歩いていたり……訳がわからない。


 それが本当に可愛いのだろうか?



 そして、たまにママは変なことを言う。


 その答えを考えるのって結構大変だ。


 

 あ、この話は内緒だからね。

 

 約束だよ。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

切り株まさしの日常 切り株ねむこ @KB27

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ