面倒くさい方を選ぶと吉
お寿司のテイクアウトで「髪の毛が入っていた」と苦情を言い、五千円あまりをお店からせしめていた20代の男性が逮捕された。その男性はレシートを残しておらず、現物もなかった。後の調査により男性側の苦情が虚偽によるものだったと判明した。
この一件に関して、世間の評価はふたつに分かれる。ひとつは、関わり合うと面倒でお金を払ってしまったほうが楽だからと、レシートも現物も入っていたという髪の毛も持ってこないようなやつに簡単にお金を払ってはいけない、そんな対応するから味を占めてそんなことをする模倣犯が出てくるのだ、という意見。
もうひとつは、正しくはないけど気持ちは分かるわ、というもの。そんなことで対応に人手を取られ、関わった従業員だっておかしな消耗をして、結果得られるものもそうない。それなら、時と労働はカネなりで(もちろんいきなりではなく多少の確認はせねばならないが)商品代を渡してしまって本来の業務に専念する選択も、外野ではなく当事者の立場に立ってみればそこまで責められない、というもの。
このことに限らず、私たちの人生においても、ある選択を迫られる場面がある。
①良いか悪いかでいえば良くはないが、労力は少なく事を穏便に進められる選択
②正しいし筋が通るやり方だが、面倒も多く労力もかかり、それを不服とする誰かを不快にしたり敵に回す可能性もある選択
たいていの人は、①を選びたい誘惑に駆られる。駆られるだけでなく、たいがい実行する。②を選ぶのには、ただ「正しい」というだけではなかなか選びにくい。大気圏を抜けるまでのロケットのように、ものすごい推進力がないと(強い動機と信念が燃料ブースターに当たる)選べない。
現代人は、疲れている。だから、よほどしっかりしていないとほとんどの場面で②に流される。それで確かに当面はしのげるが、そういう応急処置ばかりしていると、いつか大きく人生を損なうことになる。
もし、あなたが人生でラくなほう、波風が立たず安全圏にいられるほうの選択ばかりをしてきて、そのことによって得や喜びを感じられなくなってきたら。どこかで「これじゃいけない」というシグナルが出始めたら。
●とにかくなんでも、面倒なほうを選びなさい。
私が請け合おう。どんなケースでも、ラクなほうより労力がかかるほう、より勇気や思い切りを必要とするほうの選択ばかりしておけば間違いない。
そうは言っても、いきなりそうもできないだろう。水泳だって、準備体操をして水を体にかけてから、初めてプールに入る。選択の場面が5あったら、そのうちのせめて1だけでも、面倒だが筋を通す選択を選ぼう。そのうちに、5つにひとつが4つにひとつ、3つにひとつとなっていく。
インスタントに自分の身の安全を保てる選択の中に、学びや成長などほぼない。逆に自分を守ってくれるはずのその選択が、実は脆弱で頼りなく本当の意味では自分を守ってなどなかったんだ、と気付く時にはすでに手遅れになっていたりするので、要注意。
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