魂を削る行為

 これをすると、現実面では得をしても霊的価値を削るよ、という行為がある。

 ご注意いただきたいが、究極視点では人の命や意識状態に価値の差はない。ないが、私たち人間は色々な知的情報や感覚情報を踏まえた「善悪」や「正誤」という基準を生み出し前提として据えてしまったので、幻想だがその意味で「霊的価値を削る行為」と私が名付けるものである。



●自分を守るためにつくウソ



 ただ、これにもピンキリまでレベルのい違いがあって、マシなのは



●自分がウソをついていることを多少なりとも自覚していて、その申し訳なさ(あるいは罪悪感)から他で何か人の役に立とう、と埋め合わせをしようとしたりする



 そして末期的なのは



●もうウソを言うのが息を吐くように自然で、自分がよくないことをしているという自覚すらない



 ジャニーズ事務所の問題の件で、大企業が次々と所属タレントとの契約を切る現象が話題となっている。CMだけでなく、あとあと出演が予定されていたドラマまで役者を替えるか制作自体を見直すというような流れまで起きている。

 たとえば、キムタクが主演の『教場』の続編も、制作延期になった。制作サイドは「取りやめとか、(世間で言われているような)報道のせいではなく、単に制作上の問題で、あくまでもよりよいものを作るための措置」ということをコメントした。

 その他でも「制作上の都合」などと言ってどこも正直に「イメージ悪くなったんで使いません」と言うところがない。



●ウソこけ!



 あくまでも「体裁」であろう。自分の被るダメージを最小限にするための、仕方なしとする「ウソ」だろう。

 確かに世の流れはジャニーズのタレントを使わないということに好意的であるが、そうはいってもまだまだ業界においては、その力は消え去ったわけではない。縁のない庶民はそういうのはすぐ切れよ、と思うが関係者たちはそう軽くは動けないだろう。あえて切る選択に踏み切ったところでも、「不祥事のあったところは使わん」とストレートには表明しにくく、「あくまでも制作上の都合です」とワンクッション置いた表現にしてしまうのだろう。

 延期です、中止は(あるいは役の変更は)ありませんと言っておいて、あとあとほとぼりがさめたらやっぱり中止や首のすげ替えがあったことはこれまでにもある。実は最初からそうだったがとりあえず「違う」と言っておくのだ。



 私も、ウソをつくことはある。

 友人の作った料理。「おいしい?」と聞かれて、ちょっと微妙でも「おいしい」と言うことがある。私は基本ウソが嫌いなので、食べられないレベルなら正直においしくないと言う。でも、それが食べれるし料理自体としては成立しているけれど、あえて「おいしい」と褒めるほどではない、というギリギリのラインなら、作ってくれたことへの感謝も込めて「おいしい」と言うだろう。もちろん、自分個人はそううまくもないと思っても、味覚の違いという個人差はあるはずなので、他の大勢にはおいしいのかもしれないという謙虚さも込みでの判断である。

 でもそれは、相手を思ってのウソであり、自分を守るためにつくウソではない。でも中には、それだって「友人に嫌われたくないからつくのなら、やっぱり自分を守るためなんじゃ?」とつっこむ人もいるだろう。

 これはもう、絶対な基準などなくその人が決めることである。心の中の天秤で——



●自分を守りたい・嫌われたくない気持ち ≧ 相手を思う気持ち



 これが成立するなら、自分のつくウソはまずいと思ったらいい。成立しないなら、安心してそのウソをつきなさい。

 レ・ミゼラブルで銀の食器を盗んで逃げたジャン・バルジャン。盗まれた教会の神父は警察に事情を聴かれて「ああ、あれはあげたのです。なぜ銀の燭台も持って行かなかったんです? これもあげたのに」とウソをついた。

 どんなウソならいいのかがよく分かる一例である。それに比べて、TV制作側の「あの件は関係なく、あくまでも制作の進行上の問題」と言うのは、いかに軽く空疎に、しらけて聞こえることか。

 申し訳ないが、心からタレントを守ってのコメントには聞こえない。あくまでも、切るための本当の理由を立場上言いにくいからこその言い方になっているとしか思えない。

 そんな言葉ばかり吐いていると、リアルな生活は良い水準を保てても、霊性はモノクロームで色のつかない人生になっていくよ。

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