　人類皆兄弟、という言葉がある。同じ人間なんだから、必ず話せば分かり合える、とか。私は、立場的にはそういうことを言うべき人間なのだが、私のホンネはそんなことを思ってはいない。

●体の構造が同じ（手足があって目口鼻があって、言語をしゃべる）というだけで、個が違えば別の種の生物と同じ

　同じ人間だから、などと私は思わない。他人は、言葉が通じてコミュニケーションが取れるというだけの異星人であり異次元人である。まったく理解に苦しむ。

　そしてそれはお互い様というやつで、他人には私がとてもおかしな人間に見えることだろう。スピリチュアル畑の人間だと思えないと言われてもいいが、私は「人と人とは分かり合えないのが基本」だと思っている。

　絶対に分かり合えないというのではなく、分かり合えるケースより圧倒的に分かり合えないことのほうが比率として世には多い、という現実を言っているだけである。

　そのことで皆さんがそんなに苦しまないで済んでいるのは、その「分かり合えない」状態でも、普通に暮らす分にはそのままでもそう大きなトラブルは起きないからだ。人には「スルーする」という能力と「見ないことにする」能力、我慢する能力が備わっており、それをちょっと発揮すれは乗り切れる場面がほとんどだからだ。

　今、筆者は『ペントハウス』という韓国ドラマを見ている。連続もので、まだ全部は見切っていない。なので、レビューはムリだが思うところはある。

　金持ち階級のドロドロの人間ドラマで、そこに貧乏だけど声楽の才能のある親子がからんでくる。お金と権力はあるが才能の乏しい金持ちの子どもとの戦いを描いている。庶民である私たちからすると、よくそんなひどいことができるな、同じ人間に対してと思ってしまうが、金持ちと貧乏人は同じ人間じゃないのだ。

　同じ種でなければ、腕にとまった蚊を何の良心の呵責もなくぶっ叩くように。鶏肉や牛肉を食べてもその犠牲に涙を流さないように。おそらくは金持ちに悪気はない。そもそもが、対等の存在として見ていないのだ。

　他人の痛みを知り、思いやるというのは同等の立場の者と認識した対象にしかできないようになっている。だから、こういうドラマで金持ちが貧乏人をいじめても、それは極悪非道とか人間としてクズという視点はちょっと違って、そもそも彼らは牛や鶏を見るのと同じように見ているだけであって、相応の対応をしているに過ぎない。だからそういう連中に命の尊厳とか価値とか、そういう方面で話をしても通じない。

　劇中、『お金と権力のない人間の話なんて誰も聞かない』と子どもが言うシーンがあった。子どもが言うんですよ？すごいと思いませんか。

　才能のない金持ちの子が、才能ある貧乏人の子を陥れるために、中学校の密室でわざと「相手に暴力を振るわれた」演技をして、証拠もないのに一方的に貧乏人の子が疑われる。校長は金持ちの親に多額の寄付をもらっていて、「今全部返せないなら言うことを聞け」と脅されている。笑えるのは、校長が調べもせずに一方的に「躾がなってない」「将来ろくな子にならない」と、本当は悪くない貧乏人の子に罵詈雑言を言えたことである。

　ホント、自分を守るためなら人って何でもするんだな、と思った。

　今、ジャニーズ事務所の一件が、世間で一番騒がれている話題だろう。

　権力をかさに、したいようにできたトップ。世に出たければ我慢するしかなかった所属タレントたち。何が何でも成功するんだ、という意志の強さを持った者は売れ、我慢できなかった（そっちのほうがまとも）者は消えていった。

　今、相当の地位が築けているジャニーズ出身の大物は、口が重い。まさかこんな日が来ると彼らは思ってなかっただろう。東山氏の会見を聞いていたら、「心からのことや真実を言えない」不自由さでがんじがらめで、不謹慎だが笑ってしまうような内容だった。もしかしたら、そのようなことがあったかもしれませんが記憶にありません。ありませんが、あったと言えばあったとも言えるのかもしれません、的な？

　ストーレートにものが言えない。これほど人として不幸なことはない。誠実、ということを貫けないのだから。カネと権力を追う道、とはなんと色々なものを犠牲にするのだろう。

　私などには、芸能界や政治の世界で成功する人物など宇宙人と同じである。別の星の人間くらいに思っている。一生、理解はできないだろう。

　ただ、理解できなくても頑張って思いやることはできる。人間だって、犬猫とかペットを大事にできるだろう。動物愛護だってやる。ならば、金持ちたちは貧乏人を同等の人間と思えなくても、動物愛護だと思えばいい。現に、自分たちの豊かな生活はその底辺の人間の労働が支えていると分かれば、いい犬小屋とエサを与えるはずだ。

　命の重さは同じとか、人としてとかそんな難しいことを金持ちに言うのはあきらめた。まずは、動物愛護週間ということでいいから、よく働けるように十分なエサとまともな住みかをあてがえるようにしてほしい。日本が変わるのはそこからだ。