オオカミ少年

 摂津市の職員が、税金の還付金166万円を送金するところ、入力を誤って1660万円を送金してしまった。市は受け取った男性に返還を求めたが、色々と返せない言い訳をしてきた。その言い訳がどう聞いても「間違いと分かっていてせしめたことはアホでも分かる」ものだったため、裁判所は男性に全額返還を命じた。

 しかし「生活費に使ってしまって(いったいどんな生活なんだ!)あまり残っていない」という。結局、その時点で市が現実的に回収できそうなのは500万円程度。男性が自己破産を申し立てたため、それ以上の回収は不可能となった。



 皆さんのよく知っているお話に、オオカミ少年の話があるだろう。

「オオカミが来たー!」とウソをついては、駆け付けた大人たちをからかう、ということを繰り返していた。しかしある時ウソではなく本当にオオカミが来て助けを求めても「どうせまたからかうんだろう」と思われ、助けてもらえなかったという話。

 私にも家族がいて友人がいるが、彼らが困った時には何をおいても助けるし、力になる。なぜならば大事だからだ。このように、日頃大事にし大事にされ、という関係が築けていると、いざという時には助けてもらえるのである。

 もし、国(この場合は市)とそこに住まう国民(市民)との関係が良好であれば、今回のように誤送金があった時に「間違ってましたよ」と返してくれるのである。相手を大事に思うからである。じゃあなぜ、この男性に限らず過去にもあった似た事件も含め、国(市)側は間違っても素直に返してもらえないのか?

(注:今回は「そもそも悪いのは国や市じゃなく男性」という視点は封印します)



●よく思われていないからである。



 国や公共というものに、自分がよくしてもらっているという印象がないからである。何なら、自分たちの生活を苦しめている悪の権化とすら思われている場合がある。世を上手くわたり、恵まれた生活を送っている者は、当然国や市に悪い認識などそれほどもっていない。好きというわけではないだろうが、別段自分の生活に脅威ではないからだ。金持ち過ぎると、国税庁(庶民なら税務署)というのが怖いが、それはまた別のお話。

 こういう時にでるんですよ。普段外の世界とどう接しているかが。こういう大失敗の時に素直に返してもらえないのは、相手の中に「もうちょっと生きやすい世にしてくれよ」という不満があって、過剰な振り込みがあった時に「困ってるだろうな。返してあげないと」ではなく、「待ってました」だったのだろう。オレによくしてこなかった国(市)への復讐のいい機会だと。ざまぁ見ろと。

 ラッキーくらいの感想しか持ってない。それどころか、いかに返さないで済むかを全力で考えるほどに、国のことなどこれっぽっちも思っちゃいない。



 国は、オオカミ少年になってはいけない。

 国民をバカにしたような政策を取り続けていると。バカでもそれは「利権のため」と思われる決定や政治活動をやめないと。

 本当に大事な局面で、国民に助けてもらえなくなりますよ。

 笛吹けど誰も踊らないという日が来ますよ。もちろん、軍隊や警察力、兵糧攻めで言うことを聞かせられるかもしれませんが、それでも命がけで盾突かれる日が来るかもしれませんよ。

 もちろん、今生活が苦しいという人は、自業自得・自己責任という側面はあるかもしれません。しかしそれを言い過ぎて放置しておくと、回りまわって国の存亡に関わります。とりあえず直近の問題として、就職氷河期の世代、世の中の決まりや慣習にうまく乗っていけない人への救済を放っておくと、ますます何かの時に協力してもらえない人を増やすことになるでしょう。

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