開店休業状態か、閉店開業状態か

 ある人気芸人の経営するカレー屋で、ちょっとしたハプニングがあった。

 開店以来、そこそこには人気で客足が途絶えるということはなかったのだが、ある日は朝からずっと客がゼロという状態となった。

 芸人本人が店にいて、あまりの悲しさに『今日はお客がずっとゼロです!』という嘆きをSNSに上げるほど。しかし、そのあとで驚愕の事実が判明した。

 なんと、『営業中』にひっくり返しているはずの外のプレートが『準備中』にしたままだったのだ! これは飲食店あるあるらしく、「私もその失敗やりましたよ。お互い気を付けましょうね」という同情コメントが寄せられた。

 また、コメントで多かったのは「こういうミスを防ぐためにも、工夫して外のプレートが今どっち表示になっているのか内側からも確認できるような工夫がいるよね」という提案である。


 

『開店休業中』という言葉がある。

 商店が営業しているのに、客が来ないため、休業しているのと同じような状態にあること。また、実質的な活動の伴わないことにもいう。

 しかしこの場合『閉店開業中』という新たな言葉が当てはまる。すなわち実質店を開けていてお客を待ち構えているのに、外では誤って「閉店中」という情報を発しているため人が来ない、という特殊な状態。

 何かのメッセージを発してそれが生活を支える手段になっている人、自分の内側の何かを外に表現することで生計を立てていて、もっと広く知ってほしい、あるいは広めたいという人向けに今から書く。端的にはもっと人気を得たいという人ですな。ちなみに、言ってる自分にはまったく当てはまらないという(笑)。

 あなたは、どちらかに当てはまっていないだろうか。



【開店休業中】


 気持ちはある。やる気はあって、それなりに必要なこともしている。

 でも、見てもらえない、売れない、広まらない。

 きついが、内容自体がつまらないのである。

 その場合、自分の「これぞ」と思う発信の柱を一度破壊すること。あなたがよいと思うものと世間がよいと思うものの間に乖離がある。プライドや思い入れが邪魔してそこを譲れないなら、あなたは一生表舞台では売れないことを覚悟する必要がある。



【閉店開業中】


 客観的に、あなたの表現や発信自体には価値がある。

 しかし、あなたが自覚しないところであなたの実生活上の問題や悩み、ネガティブ要素が発信の端々に滲んでいて、それを敬遠されているということに気付けていない。頑張っているはずなのに、提供しているものは悪くないはずなのに広く受け入れられない、というその原因は「あなた自身が意図していないメッセージを汲み取られてしまっている」こと。

 もう少し落ち着いて、あなたのアウトプットするものを細かく精査してみよう。そうすることで、気付きがあるでしょう。

 また、この手のタイプの人は 得てして売り方が超ドヘタな可能性あり。素晴らしいものを持っているが人として問題があり、せっかくの作品も広がるチャンスを失うという傾向があることも知っておいた方がいいでしょう。



【開店開業中】


 この状態が理想である。

 ただし人間のすることなので波があり、ずっとそういう無敵モードではいられない。どこかで変化が否応なく訪れる。その時には、上記の2パターンのどちらになったのか考えてみる。この状態が長かったせいで天狗さんになり「どこも悪いはずがない」「何が気に入らないのだ」と思ってしまうとドツボです。



 ただし、上記の三つを気にする限りは、一流にはなれますが『超一流』にはなれません。そこそこ幸せな人生ということなら、上記を気にしていたら十分です。

 超一流は、どちらかというと『閉店開業中』に似ていますが、ある一点において違いがあります。それは——



●他人にどう思われようが、基本的にどうでもいい。



 もちろん、多少は気にしますが、自分の軸を失ってまで気にすることはないので、最悪自分の外の世界がどう動いても気にしません。

 なにがあっても、どんなに評価されなくても自分の意志を変えない(いわゆる頑固とは違う)ため、そこは開店休業中とも似ていますが、違うのはやはりこの点。



●開店休業中・閉店開業中のどちらの特性をもはねのけ、その次元を突き抜ける



 起きるすべてのことをものともしない、マグマのように湧き出るインスピーレーション、まるで神がかったようにすべての障害、圧力、他者の意見をはねのけ目的達成までその手をゆるめない。

 そんなことを、人生の最後まであきらめられないでやれるのが真のギフテッド(与えられし者)の特徴です。 

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