決められたことをやってなぜ悪いと言うなかれ
北海道のある小学校で、小学二年生の女児が体育の授業後の移動中に倒れて死亡した、というニュースが流れた。死因は熱中症である疑いが濃い。
その日、小学校のある市内では正午に最高気温の33.5度を記録している。もちろん、授業を受ける児童たちには水分補給をさせていて、この女児も水分を取っていたことが確認されている。
熱中症対策には確かに水分補給は重要である。が、それだけをちゃんとやっておけばいい、というものでもない。必要条件ではあるが十分条件ではない、という指摘の声があがっている。
その女児の担任、もしくは体育の授業を請け負う体育教師にとっては、人生最悪の日だっただろう。殺意があって相手を殺したわけでは全然なくとも、一生涯心から消えることのない傷が心に刻まれたはずだ。何かに熱中したり、楽しいことに夢中になったりして束の間忘れることができても、やがて思い出すということを死ぬまで繰り返す人生が確定したのである。
悪気はないのに、意図しないのにこのように自分が他人の生死や人生を左右する局面に関わってしまい、ダメージを受けることが人によってはある。
完全には防げないが、できるだけそういう目に遭わない方法ならある。逆に、こんなことをしているとひどい目に遭う確率が高まりますよ、ということがある。
【予防策】
自分の頭で考えること。その上で、仕事上やると決まっていることや守るべきとされている事柄に問題があると判断するなら、いったん立ち止まって上司であれ教育委員会であれ、疑問をちゃんと突きつける。
納得いくまで危ないと思ったことはやらない。その際、ことなかれ主義で自分の安泰を守る誘惑に負けないことが要求される。
【まずい生き方】
自分の頭で考えることを放棄する。なぜなら、決められたことを大人しくやっておけば基本的に自分の立場は守られるからである。今基本的と言ったのは、さっきのニュースのように、時折それでもあなたやその所属組織の思惑をはるかに超えて何かが起きることがあり、その時には手も足も出ない。
上意下達に無条件に従う生き方では、それさえ守れば安心という何の根拠もない安心にささえられてしまうため、危機予測能力が大幅に低下する。上からの指示や命令は、完璧などでは全然ないからだ。
おそらく教師たちは、その日の時間割に「体育」があるから、その決まりに従って当たり前に授業を行ったのだろう。組織イエスマン教師でも、こんな暑い日には水分補給はしとかなきゃ、程度は考えたようで実際させてはいる。しかし、そんなことくらいではダメだったという結果が、今回の悲劇である。
そもそも、体育の授業などしてはいけなかったのだ。別にこの日体育の授業をやらなかったからといってその子どもたちの体力発達にめちゃ遅れが出る、なんて大げさなことではない。というか、それで命を落としていたらまったく意味がない。
私は今貧乏であるが、誰にも雇われておらず、誰の命令も聞かなくていいい立場だ。それがあまりにも生きやすいので、私はそれがあれば他はなんてことない、と思って甘んじている。だが、この文章を読む人のほとんどが何かの組織に所属している社会人で、言うことを聞くべき会社や上司がいて、いくら納得いかないことがあっても出し方によっては自分の会社生命を握っている上の連中に、いつクビにされるか分からない、という恐れの中生きていると思う。
その立場の辛さが分かる。自分一人ならまだしも、家族を抱えていたり老いた親の面倒を見ていたりなどしたら、自分がもし失業したらどうなる? と考えたら本能的反射的に守りの体勢に入るのは仕方がない。
でも、少し厳しいことを言う。お立場は分かりますが、冒頭で紹介したような出来事は起きるのです。それは残念ながら、言われたことを決められた通りにやっていたのでは防げないことなのです。自分の頭で考えて判断して、どうしてもまずいことや改善したほうがいいことなら、言い方や出し方を考えたうえで上に疑問を呈すべきなのです。
それが上に通じないなら仕方がない。あなたが事件の教師の立場なら、自分の采配で授業を別の活動にして上から勝手なことをしてと怒られ、少々立場が悪くなったところで、生徒に死なれるより千倍も一万倍もマシだとは思いませんか?
自分の頭で考えず事態を分析せず、たとえ危機感が頭をよぎっても、保身のために引っ込めて「まぁ大丈夫だろう」という楽観視のもとそういうことを繰り返していると、いつの日にか「宝くじにあたる」ように、まさかの出来事があなたの身に降りかかることがないとも言えませんよ。
あえて言います。自分の立場を守らなきゃいけない、という気持ちに勝たないといけない瞬間が人生にはあり、そこで流されると一生後悔する時が来ます。
「決められたことをちゃんと守っただけなのに、なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけない」なんて気持ちが湧いてきたら、もう最悪です。その人の心には数年は、平和が訪れないでしょう。
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