心と行動の一致

 東京・池袋のサンシャインシティで『ひろがるスカイ! プリキュア』のファン向けイベントが行われていて、イベントのひとつである「なりきり写真館」に男の子プリキュアであるキュアウィングの衣装だけが用意されていなかった、という投稿が物議を醸している。

 来場者の声として、母親に背中を押されて勇気をもってやってきた男の子が、衣装がないことでがっかりして帰ったという。会場でボロボロ泣きながら塗り絵だけしてして帰った息子の姿を見て、母親は憤った。なぜ対応してくれないのか。作品は「男の子もプリキュアになれる」というコンセプトをうたっているのに、なぜ真逆な現実がイベントであるのか。



 運営側の言い訳として、なりきり写真館で提供している衣装は市販されているもので、キュアウィングの衣装は市販されていないため、用意に至らなかったという説明をしている。それを聞いて改めて「ええっ、キュアウィングのコスって市販されてないんだ……」と知って驚くファンもいる。

 説明としてはそんなところだが、あえて「下衆の勘繰り」をしてみると、運営側に「男の子でプリキュアの格好をしたい子なんておらんのちゃう?」という決めつけがあるのではないか。

 そもそもプリキュア自体が、それまで仮面ライダーや戦隊物など、戦うヒーローといえば男の子向けのものばかりだったのを「女の子だってヒーローに憧れたいし、またなれるものなんだ」というコンセプトから出発してる。そしてそれが大きく支持され共感されて、今日までの歴史がある。

 プリキュアも作品が重なってきて、仮面ライダーみたく「マンネリ化」の危機とは無縁ではない。そこで子ども(中学生や高校生)ではない、二十歳を越えた大人のプリキュアを出してみたり、今回のように男の子のメンバーを出して見たり。

 筆者は、作り手が純粋に「男の子だってプリキュアになれる!」という思いの元で登場させたと思いたい。あくまでも新鮮さを出すためだけが目的で、ホンネではちょっとビミョーかも、まぁ仕事だからね、てんでは悲しすぎる。



 そもそもコスが市販されてない、ってのは他も同じなら分かるけど、男の子プリキュアのものだけない、ってのはそれに携わっている人間の考え方の程度が知れる、というものである。作品のクリエイターと同じレベルでは、作品を愛していないしコンセプトなんか理解しちゃいない、ってことだ。古臭い「心理的抵抗」こそが、そこだけ商品化しないという結果を生んだ。

 このお話を通して私が今回何を言いたいかというと——



●思いと行動が一致していない場面が人生で多い人は、辛い人生になる。



 プリキュアのイベント運営側は、行動としては最新のプリキュアのファンに喜んでもらうための行動をしている。でもその実、男の子向けのコスがない、また用意しないことに「何の疑問も持たず企画をゴーした」わけで、結局心からというより仕事だから、思い入れも愛着もなく、ファンの気持ちもどうでもいいから悲しむ子どもがでることを想像できなかった。

 思いと、実際に出す行動が違う場面の多い人は、他人に信用されない。また、他人に感銘を与えることが出来ない。また、魅力に薄い。

 もちろん人間だから、時には思いとは違う行動によって乗り切らないといけない場面というのはある。だから、私はその点完璧であれとは言わない。だって不可能だからである。でも、人生トータルで「思いと行動が一致する場面のほうが多い」ようにすることは可能だ。

 よほど他者との人間関係や互いの利益を損ないかねない場面でだけ、ホンネを偽ったり心にないことを言うこともあっていい。だが、基本的に思いと行動とを一致させてほしい。

 プリキュアのイベントを運営し手がけるなら、来るお客様のことをもっと考えてほしかった。クリエイターたちと同じ方向を向いて仕事をしてほしかった。それができたなら、男の子向けのコスがないことをもっと事前に自分たちで問題視できたはずなのだ。

 優しさとか愛とか、利他の精神とか助け合いとか。この世で大切なこと、人として大事なことというのは色々なことが言えるが、そのうちのひとつには必ずこの「できるだけ思いと行動が一致した生き様になるように」というのは入ると思う。

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