目的意識が起こす奇跡

 ガル・ガドット主演の『ハート・オブ・ストーン』という映画がある。これまた、頭をカラッポにして楽しむのがいいタイプの娯楽映画なんで、深い考察して映画評論というほどでもないので、メッセージのカテゴリーで今回も記事書きまっす。

 スパイもので、どっかで見たスパイ映画ヒット作の要素がてんこ盛り。細かく見たら色々ツッコミたくなるんで、もうとにかくド派手アクションを楽しむのが吉。ガル・ガドットのおねーさんはもういつ見てももうワンダーウーマンにしか見えない!



 この映画の敵役というか黒幕は、主人公のエリート諜報部員・ストーン(ガル・ガドット)と長年同僚として苦楽を共にしてきたパーカーという男。実はこの男、もっているホンネというか思想信条がとってもひねくれていて「悪人」なのであるが、信頼し何年もずっと行動を共にしてきたというのに、優秀なストーンをもってしても裏切られるまで相手の本質を見抜くことができなった。

 ここをつっこむ人もいいるだろうが、私はそういうことはあり得ると考える。



 メッキははがれる、どんなに飾っても本質は遅かれ早かれ伝わってしまうもの、という考え方がある。本当は悪人なのに善人ぶっても、本質がそうでないのでボロがでるし、見抜く人は見抜く。「そうじゃない」自分を偽っても、無理があるので長くは人を騙せない、という。

 先ほどの敵役は、過去にひどい経験をしていて、悪人ではあるが「強い目的意識」を持っている。そしてその意志の強固さが、時として「正体は悪人なのに善人として周囲を騙し通せるなんてあり得ない」という現実の壁を越える奇跡を起こしたのだ。



●目的意識の強さが、不可能と言われることを実現することがある。



 だがこのことには、いくつか補足しておくべき点がある。



①善悪関係ないこと。善なる、多くの人のためになる目的意識だけでなく、世を壊そうとか特定の人間を追い詰めよう、とかこの世界の基準で「悪」「良くはないこと」に向かう強い気持ちであっても、善の場合と何ら差別なく発揮される。前者の方が優遇されるとか叶いやすいとかいうことは全くなく、平等である。



②これを言うと「それじゃあ頑張っても意味ないじゃーん!」って言われそうだが、結局自分で意図してもとうとできる程度の強い気持ちではあまり意味がないこと。

 さっきの映画の敵役の場合は、長年尽くし信じていた上司や仲間(もっといえば国家)に見捨てられたという絶望体験が、彼を突き動かしている。そういう、尽きない原動力となる原体験がないと、ほとんどの場合奇跡レベルの現象は起こせない。



 あまり言いたくないが、多くのケースで世で大きなことを成す人は、良い悪いに関わらず「強烈な感情体験」をしている。それがない、生まれてこの方そこまで大きな不幸もなくで比較的恵まれてきた人物は、黒を白に変えてしまえるような力を持つ人間にはならない。だからと言って傷付けとか不幸な目に遭えとかいう気はない。

 ただ、人生シナリオとしてある程度、そういうことのできる人物は「決まっている」のが現実である。だって、強烈な感情体験などというものは、自身で起こせないからである。たいがい、不可抗力で下ってくるものなので、望んで得られる類のものではない。



 だから、たまたま宇宙から選ばれて「ものすごい内的エネルギーを持つに至ってしまった」者に告げたい。できたらそのエネルギー、自他を滅ぼす方向に使わないでくれ。ひどい目に遭ったのは分かる。絶望したのは分かる。でもちょっと待て。

 今は激情に駆られているのでそれでいいだろうが、世界を滅ぼしたあと、大勢の人間を力づくで従わせたそのあとのことまで考えてくれ。

 未来を予測してみてくれ。皆あなたが怖いから言いなりなのであって、誰一人心からあなたを思う人がいない。そんな世界で、きっとあなたは長くて3年、短くて1年程度でいくら最初は王様気分でも我慢がならなくなるだろう。

 だから、恨みを晴らす前に仇をとる前にちょっと立ち止まろう。せめて残りの人生、目的は遂げてもあとあと虚しい人生を生きるより、せめて誰かあなたを良い人と思い慕ってくれる人がいる人生を選択してほしい。

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