そんなにいいものなら自分がやってみてはいかがでしょう

●やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ



 戦時中の海軍大将、山本五十六の残した言葉である。

 昔の人の言葉ながら、現代にも通じるリーダーシップ論であることから、未だに

リーダーのあるべき姿・資質を見事に言い当てた言葉として重宝されている。

 先生、と呼ばれる立場の者が大勢の下の者の上にふんぞり返って、偉そうにしていたら。ましてや、下の者が流す汗にははるかに及ばない、楽な労力でその立場が維持でき、居座り続けることができるとしたら? そんなのはもうリーダーとは呼ばない。リーダーとは実際の最前線の苦労はヒラメンバーに任せて、自分は指示だけ出しておればよいというものではない。

 その前線の現実を思いやり、させるばかりではなく「みずからが率先して動く」姿勢を見せてこそ、組織の士気も上がる。そして「この人ならばついていこう」という気にもさせる。



 迷走を極める、政府主導の『マイナカード問題』。

 今朝、面白いニュースがあった。政府は普及に躍起だが、はたして旗振り役の国会議員自身はマイナカードを取得しているのか? という疑問から、FLASHという雑誌が全衆院議員464人にアンケートを実施したらしい。アンケートの内容は、「マイナカードを取得したか否か」「健康保険証や公金受取口座と紐づけているか否か」。

 464人中、回答があったのは206人。まず、この数自体がいただけない。新聞でもない週刊誌の取材と軽く見たのかもしれないが、マイナカードを普及させたかったらこういうことでも面倒がらずに(逃げずに)真正面から堂々と応対すべきと考えるが、彼らはそう考えないのか。

 ここはニュースブログでないため、そのアンケート結果を細かく載せることはしない。細部をはしょってポイントとなる事実だけを挙げると「岸田首相・河野大臣をはじめとする大物議員が回答拒否」「カードを作っていると答えた推進派の議員の中にも、保険証や銀行口座との紐付けはしていない(様子見)人物が少なからずいる」というところである。



 あれだけ推進しておいて、ポイントもバラまいて「実質上の強制」にしておいて。

 この制度のトップにある首相と旗振り役の河野大臣が、モッテイマスカと聞かれて答えない? 一言「もっています」としゃべることに何か損でもあるのだろうか。 

 もうお分かりのことと思うが、日本の為政者たちは、記事の冒頭に挙げた山本五十六の言葉の逆を見事に行っているのである。リーダーシップのリの字もあったものではない。自ら率先していいものであること、やるべきことであることを「身をもって」示していないのだから。

 自分が「ちょっとどうか」とホンネで思うものを他人に堂々と勧めるなんて、そんなことをするのは今ではほぼ見かけない昔の『押し売り』と、『詐欺師』くらいなものです。

 もし、首相と河野大臣の回答拒否の理由が「そんな三流雑誌の取材など相手にしているヒマも義務もない」という考えだとしたら、残念である。

 FLASHという情報誌は、確かにお堅い報道系ではなく大衆娯楽寄りである。ムフフなグラビアだってある雑誌である。しかし、オッサンと呼ばれる人種は結構目を通す雑誌でもあることは間違いない。

 ならば、「もってます」と回答するだけなのだから、そんなに忙しいなら秘書にでも部下にでも「こう答えておけ」と指示すればそう骨の折れる作業でもない。広く普及をというなら、そういう取材はおろそかにせず丁寧に対応すればいいのである。なんぼか普及には有利になる。



●まさかとは思うが、持ってないってことは……ないよね?



 一応、首相と河野大臣には敬意を表して、マイナカードは当然持っていて、保険証も銀行口座も紐づけ済みという前提で話を進めてきた。まさかまさか、その前提が崩れるなんてことがったら、それはもう問題外ですよ??

 ついていきたくなるリーダー像というのは、偉そうに上から指示を飛ばすばかりでなく、自ら「行いや態度で誠意を示す」「先頭に立ってやってみせる」姿である。

 そうしないで、全国民を引っ張るというのはいささか見通しが甘いのではないか。そんなことで、本当に国民が皆動いてくれると思うのか。

「目上の人間の言うことを聞くのは当たり前」「お前らは四の五の言わず言われた通りやりゃあいいんだ」という程度の低い考え方では、きっと手痛いしっぺい返しを食らうことになるだろう。

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