0はダメでも1なら

 皆さんは『綾小路麗華』というキャラクターをご存知だろうか。

 USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)内の「ターミネータ2」のアトラクションに出てくるので有名な毒舌お姉さまキャラである。

 実は筆者、たった1年ではあるがUSJで働いていたことがあり、お客が見るスイッチの入った麗華様ではなく、役柄名ではない誰誰さんとして振舞っている舞台裏を、素顔の彼女たちを見るチャンスがあった。いま「たち」と複数形にしたが、麗華様はひとりではない。(そんなの身が持たないし、体調を壊したら替えがいないではないか)シフトによって、その役をできる女性が常に何人かいたのだ。メークをしたら遠目には判別できないが。



 そのターミネーターのアトラクションの終了がニュースとして報じられ、「あの麗華様がもう見れなくなるのか」と惜しむ声が上がる中、当の麗華様が「私はやめないわよ!」とさらなる活躍の可能性を自ら宣言した。今後も麗華様は何らかの形で生き続け、パークからその姿が消えてしまうことはないと分かり、ファンはひとまずほっとした形だ。



 筆者は、一時スピリチュアルメッセンジャーとしてその世界で少しは知られる活動をしてきた。そこまで有名人になったわけではないが、筆者には十分すぎるほどの体験であった。

 自分流を貫いてブレないでいると、常にその流行でそのフォーカスターゲットが変動するその世界では「賞味期限」が来たようで、私は急速に仕事を失った。私の周りにいた人はほとんど消えた。

 でも私はずっと言ってきたように「やりたいからやっているのであり、たとえ誰も理解してくれなくても、誰も応援してくれなくても1円にもならなくても、メッセージを発信し続ける」のである。それが私の信条である。

 ただ最近は、そこまでガチガチに自分を貫かなくてもいいかな、と思い始めている。たとえば、YouTubeでの動画配信だと、視聴数が1(自分以外で)なら続けるが、ゼロなら「やめる」ということだ。



●やはりこの世界では、人に求められてなんぼだ。

 いくら信念が立派でも、求める人がゼロなのにしがみつくことに意味はない。



 悟り系の世界は、確かにその他のスピリチュアルジャンルより理解が難しく、敷居は決して低くはない。こちらからしたら、多くの人が誤解・あるいはいい側面しか見れていないという感想である。

 だから、たとえ人気を博さずとも「分かっていないのはお前たちのほうだ」という視点が、その人物の活動継続の原動力となる場合がある。

 言い方はいやらしいが、確かにそういう側面はなくはない。でも、「ゼロ」はいただけない。本人がやりたくとも、一切求められないものは引っ込めるべきだ。その人物にしても、空回りするそれより、もっと他のことにその時間を使ったほうが絶対にいいはずだ。

 ゼロではいけない。最低「1」以上だ。

 誰かには求められ、感謝され、楽しみにされる——

 その「1」以上のある限り、ゼロでさえなければどんなに低い数字の読者数や視聴者数でも、私はブログを書き続け配信を続けるつもりである。命あるかぎり頭がまともな限り電気代とネット代が払える限り。



 筆者はUSJ勤務時代、ターミネーター2は担当外だったから、麗華様と頻繁に交流があったわけではない。ただ、T2の建物には別の用事で何度もお邪魔した。

 その際、控室でカップヌードルのカレー味を、大急ぎですすっている姿が今でも印象に残っている。きっと、舞台と舞台の間の時間が短く、昼食を落ち着いてとる時間もなかったのだろう。あんなすごいパフォーマンスをする麗華様にはもっといいものを食べて元気をつけてもらいたいが、舞台裏なんてそんなものだろう。

 アトラクションがなくなる際には「もう見れないのか」と残念に思ってもらえる彼女は、ある意味偉業を成し遂げたと言える。そして「やめないわよ」というお馴染みの毒舌チックな声での復活宣言。ファンを安堵させたその相変わらずのしゃべくりには、本当に脱帽である。

 私も今、細々と活動しているが、その原動力は「ゼロじゃない」ことである。数字の低いのはモチベーションの低下にはまったくつながらない。私が「潮時かな」と姿を消すとすれば。発信をやめるとしたら、ある日のブログ閲覧数が自分以外がゼロになった日だ。また、動画の閲覧数が1とか2になった日だ。

 その日が来ない限り、麗華様ではないが「まだまだやめませんわよ」。

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