ポーカー
最近、支持率が上がり気味というホンマカイナという話題に事欠かない岸田首相であるが、その息子が「やらかして」しまったので、せっかくお父さんに便宜を図ってもらった秘書官の仕事を、責任を問われ辞職するという報道がなされた。
せっかく色々追い風要素があったのに、それを台無しにしかねない絶妙なタイミングでの不祥事である。ただ、その辞職のタイミングが「6月1日付けで」と報じられたため、あのひろゆき氏がツッコミを入れた。
「今すぐ辞職ではなく6月1日まで在籍するのは、ボーナスを満額貰って辞職するためのようです」という内容のことをツィートした。もちろんネット民も反応して、あまりにもセコいと非難の嵐。ちなみに具体的な額は、252万円だそうで。
ただし、その一方で世間が混乱する真反対の報道もあった。
「首相の息子は、退職金をはじめボーナスに当たる手当の類を一切受け取らない意向である」ことが発表された、という報道がある。このふたつに同時に触れてしまった人は、あれっ? となる。
これは一体、どっちが本当なのか? と。
正しいという保証は出せないが、ある調査によれば「よくコメントを求められ意見が取り上げられるある経済学者が、退職が6月1日付けという点に注目してひろゆき氏と同じ発想に至り非難し、それを大勢が参考にしてしまった。しかしあとのタイミングで退職金やボーナスは受け取らないという情報が出たため、その経済学者もトーンが下がり、コメントを差し替えたらしい」。
受け取らない報道がフェイクニュースでない限りは、ひろゆき氏(あるいは大勢を誤解させるに至った某経済学者)のフライングということになるだろう。最近、関西人の「~らしいで、知らんけど」という言葉をよく聞くが、その言葉がぴったりな今回の事例である。
某経済学者もひろゆき氏も、間違いたくて間違ってはいない。
ただ、手持ちのカードで一番ベストと思うことを判断して言っているだけ。
言い換えると、手持ちのカードについてよく吟味し慎重を期さないと、失敗したり恥をかいたりする恐れがあるということだ。
ポーカーというトランプゲームがある。洋画では、粋なギャンブル勝負でよく使われる。あとで取り換える枚数や勝負度胸、相手の表情を読むなどのテクはあるものの、なによりものを言うのはやはり最初に配られたカードが何かである。
そして最終、自分の持ち札で勝負に勝てるかどうか判断するのである。世の中に自分の意見が伝わるように出すという行為は、ポーカーで勝負をかける時と同じである。それが勝っている(正しい)ことを信じて、手札を開示するのだ。
私たちがこの瞬間に持っている人生観世界観宇宙観は、確かに今を切り取ったこの時点では精一杯の「最高到達点」であり、その人の最高境地のものだろう。
でも、時間というものは様々な変化をもたらす。あなたの思想・信条を構成する元となる情報はどんどん更新・アップデートされ徐々に考え方も変化していく。
自分の考えに自信をもつのはいいことである。でも、そこに「自分が知らない情報があったなら、それを加えた時成り立たなくなる可能性がある」という謙虚さは常にもっておいたほうがいい。その落ち着きがあれば、「受け取らない」報道の前に「受け取る気でセコい」と言ってしまう愚は避けられるはずだ。
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