神を責める人が分かってないこと
その昔からある、人類の持ちがちな嘆き。
『もし神様がいるなら、なぜこんな世界にしたのか』
世の中には、悲惨なことがたくさんある。残酷な仕打ちもそこら中に転がっている。罪もない子どもや善良な人が、とんでもないことに巻き込まれ不幸になる。
そもそも、そういうことが「起こり得る」可能性をなぜ設定したのか? そういうことが「起きない」設定になぜしなかったのか?
『宝くじはなかなか当たらない。でも買わないとそもそも当たらない』
そんな言葉をどこかで聞いたことはないだろうか。
この世界に光だけだとしたら、それはもう光だと認識できない。認識するためには、対比して「他と違う」と認識できるものでないといけない。違うからこそ、物事に「名前」を付ける意味がはじめてできる。闇(陰)がないと、光は光たり得ない。
皮肉な話だが、闇もまた光がなければ(光をすべて駆逐してしまったら)その存在が消えてしまう。互いにもちつもたれつなのである。
ゆえに、物事すべてに「あらゆる可能性」を含ませるしかなかった。悪い方向性へ行く可能性があるからこそ、逆に「良いもの」と認識する道も生まれる。
宝くじは、「はずれることが多い」という現実を引き受けてなおそこにあきらめないで夢を見るもの。この世界も、幸せであるとか素敵な体験とかいうものが存在するためには、対比できるそうでないことの存在を甘んじて「引き受けていく」しかない。あらゆる可能性が起き得る中で、それでも「自分が良いと思うものを目指してあがく」しかないのが人生である。
親が子どもの知育にと「レゴブロック」を与える。
子どもは一生懸命何かをつくる。
できたものがどこか思ったようなものでなく、気に入らなくても親に文句を言うだろうか?「ママ、こんなのできちゃったじゃないか。どうしてくれるんだよ!」
いかにその言い分がありえないものか、皆さんには分かるだろう。それはどう考えても子どもの責任であり、親はあくまでも材料を提供しただけだ。それで作品の不出来を親のせいにされたのではたまらない。
子どもには「素晴らしい作品ができる」可能性もあれば「納得いかない不十分なものができる」可能性も両方あった。そのどちらになるかは、本人の要因ばかりでないにせよトータル的には本人の責任の範疇だ。
宗教では、神は全知全能と言われる。
イメージ的には自然に思える。なんたって、この世界をクリエイトしたすごい存在だ。この世界の隅から隅まで理解していてもおかしくはないように思える。だが、実はそうでない可能性がある。
●神様が作ったのは、宇宙環境だけ。そこで生命体がどんな営みをするかは、実は知らない。予知もできないし関知もしない。(興味はあっても絶対に干渉はしない)
神は、基本「ネグレクト」だと思っていい。宇宙創世以来、環境整備のためのエネルギー注入(エントロピーのことがあっても宇宙が維持・成長し続ける)以外のことは何もしてない。
ネグレクトというのは行動面だけで、何かの行動的干渉をしないということ。ただ興味津々ではあり、常に観察し続けている。ただ「見るだけ」。
レゴブロックを与えられた私たちに、今の世界の責任がある。人類全体がトータルとして無数の選択をしてきた結果であり、その全体責任を今現役で生きている私たち全員で取っている形である。いつ何時何が起きても、私たちはその都度引き受けていかねばならない。
ゆえに、神様がいるならなぜこんな世界を? という疑問は的外れなのだ。
悪いことが起きる可能性を排除する(起きないようにする)には、良いことまでも捨てないといけない。あくまでも、「良い」と認識し味わうためには、そうでないというものの存在が不可欠なのだ。
悲しみもない世界である代わりに、喜びもない世界がよいか?
悲しも痛みもあるが、賢く選択さえすれば(レゴブロックを上手に組み立てさえすれば)それなりに幸せなことの比率を多くできる世界がいいか?
もちろん、後者であろう。ただ、今の世界を見ていると、確かに「ちょっと作品の出来がまずい」感じはある。組みなおした方がいいような、そもそもの設計自体を考え直したほうがいいような?
あなたがこの世界を生きずらいと感じるなら、それは神様のせいにしてはいけない。あくまでも、人間たちでしてきたことだ。レゴブロックを与えた親に「なんでこんなものを与えたんだ。こんなものくれたから、僕がこんなに苦しむんだ(うまくつくれなくてイヤになるんだ)」と文句を言う?
繰り返し言うが、実はこの世界を作った創造者は、この世界がこの先どうなるかを知らない。知っていたら観察などしない。知らないから興味をもって見続けるのだ。
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