キャンディキャンディ事件 ~家に着くまでが遠足~

 伝説の名作少女漫画『キャンディ・キャンディ』。

 マンガもだが、TVアニメ化したものも大人気となった。

 中高年の世代なら、懐かしく思い出せる人も多いだろう。大して作品自体に興味のない人でも、歌詞さえ見ればたいていの人がカラオケを歌えてしまうほどに、その主題歌が浸透するほど。ちなみに筆者は、三番まで何も見ないで歌えてしまう。



 昔この漫画(アニメ)が大好きだったある人が、久しぶりに作品に触れたいと思い漫画を買い求めようとするが「絶版」。またTVアニメの再放映やDVDなどのソフト化も不可能な状態にあり、とにかく今あの名作をゼロから味わうのが難しいのだ。

 若い頃持っていたマンガを捨てずに持っていた運のよい人とか、大昔にちゃんとアニメを録画あるいはVHS時代のビデオソフトを買っていた、などのことでもないと鑑賞できない。あるいはものすごい競争をして、高額払ってネットオークションで漫画を落とすとかでもしないと。


 

 いったいなぜ、こんな事態になってしまったのか。

 それは原作者・水木杏子さんと作画のいがらしゆみこさんとの間で争われた一連の裁判が原因である。これは、原作者と作画者の権利争い、という単純な構図ではない。興味がおありな方は、有志がかなり詳しい事情を記事にしてくれているので、「キャンディキャンディ 事件」というキーワードでネット検索されたし。

 調べる限りでは、原作者に非はほぼなくいがらし氏がかなり暴走した結果起きるべくして起きてしまったものであり、あまりのことに原作者も応じて戦わざるを得なかった、という感じに受け取れる。



 台無し、という言葉がある。

 せっかくのものが、価値のないもの、無意味なものになってしまうということである。台無しの台とは語源では「仏様の座る台座」のことを言ったものらしい。それがないことで、仏様としての威厳がなくなることからできた言葉らしい。

 せっかく熱狂できたあの素晴らしい作品が、原作者と作画者のケンカのゆえに、ファンが普通に味わうことができなくなってしまった。アニメリメイクなどの話もあったようだが、こんな状況なので、それももう夢のまた夢。

「家に着くまでが遠足ですよ!」小学生の頃、よく言われた言葉である。気を抜いて、家に着くまでに事故やケガなどのトラブルが起きないよう戒める言葉である。

 名作を残す作家やマンガ家の皆さんに言いたい。また、何かあれば出演した作品がお蔵入りになり、関わった人の生活を直撃するようなことを起こし得る「有名俳優」にも言いたい。



●人生終わるまでが遠足(お仕事)ですよ!



 最後まで夢を与える、夢を見させるのがお仕事の本懐である。

 私は、生みの親である原作者と作画者の不仲によって(かなりの程度片方に責任があるけれど)キャンディ・キャンディという作品には罪がないのに触れられない現状というものをとても悲しく思っている。

 筆者は男だが、子どもの頃好きだった女の子がキャンディキャンディのファンだったこともあり、私も彼女に気に入られたくてアニメを見、作品の知識を得ようと頑張ったものだ。(結果は散々だったけれど!)だから、思い出深い作品なのだ。

 マンガも買ったのだが、飽きて古本屋などに売らず持ち続けていたら、と思うが後悔先に立たず。考えてももうどうしようもない。(笑)

 だからお願いしますよ。人に夢を与えるお仕事全般をされている方は、ただ素敵な作品を生み出せばいいというだけではないのです。あなたという人間も含めての、作品の評価というものが一生ついてまわるのだという緊張感を持っていただきたい。

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