たとえ良いものでも矜持を持ちすぎない

 演歌歌手の大御所、小林幸子さんが主人公として登場する漫画の連載が開始された。これはいきなり決まったことではなく、そもそも小林さんが自身の活躍や興味の場を広く柔軟に求めてきたことが実を結んだ形だ。ニコニコ動画やネットの世界に活路を見出し、若者文化を理解するためコミケなどにも積極的に参加。そうして若者との接点を持ち支持があったことも、今回の異世界モノのマンガにラスボスとして小林さんを登場させよう、となった流れを作った。

 演歌というと、重厚なある「固まった」イメージが見る側にあり、今でこそ別だが40年も前ならば大御所の演歌歌手がはっちゃけるのは想像ができなかった。

 北島三郎がおじゃる丸の主題歌を歌い、細川たかしが一世代前の「おそ松くん」の歌を歌い、八代亜紀が「ラッキーマン」というヘンなギャクマンガ原作のアニメの主題歌を歌い。五木ひろしが紅白で、バックにAKBや坂道グループの若い女の子をたくさんはべらせてニヤけて歌っていた(そんなふうに見えた)のも、これがもし彼彼女らの全盛期に起きたことだったら、本当にびっくりしたことだろう。

 小林幸子といえばひと昔前紅白歌合戦では名物だった人。出なくなってからどうしているのだろうとは思っていたが、その期間も彼女なりにチャレンジし充実していたのだと分かって、なぜかほっとした。



 そのニュースと対照的だと思ったのが、宝塚歌劇団のファン対応に関するニュースだ。昔からここは格式とか伝統とか、そういうものが色濃いところではある。またそれが良さであったりする。だが、時代は変化しているのだということを、格式を重んじすぎて「無視する」のはどうかと思う。

 ファンが宝塚の役者さんの似顔絵(イラスト)をファンサイトに投稿したり公に発表したりするのを禁じたらしいのだ。ジャニーズの例もあり、歌劇団自身の権利やイメージを守り抜りぬこうとすることは理解できるものの、このネットの時代にあってそれを認めないのは、人気商売としてはあまりにどうかと思う。

 悪意を持っておかしなふうに描いてくるのは論外だが、たいていはファン愛からにじみ出るもの。私としては表現させてあげてもいいんじゃないか、と思う。



 悟りとかいう世界も、そのルーツをたどってみれば敷居の高い世界である。

 今でこそ、山に籠って修行して瞑想しまくりで、肉食べず異性抱かず結婚せず子ども作らず財産持たず増やさず、一般的な娯楽とは無縁で精神世界における喜び三昧。悟り人(覚醒者)とはそうしたものだという先入観が人類歴史的にあった。一番分かりやすい例が、パラマハンサ・ヨガナンダやラマナ・マハルシみたいな人である。ヨガナンダに関しては、本人よりもその師匠が、輪をかけてクソ真面目だったようだ。

 筆者が知る限り、最初にその固いイメージを破壊したのがイエス・キリストであり、日本では一休宗純(アニメ一休さんのモデル)である。彼らは酒を飲みけっこうしたい放題し、女も抱いた。(キリスト教信者は認めないだろうが、筆者はそう考えている)



●いくら素晴らしいものでも、一カ所にとどまり続けることで良さを維持しようとするには限界が生じる。

 賢い者は、その限界をきちんと知ることで、柔軟に変化に対応できおかしなプライドで価値のあるチャンスを逃すということがない。



 先ほど名をあげた大御所演歌歌手たちは、見事にそれまで築き上げてきたイメージを守ることに執着せず、流れに身を任せることで再度花開いた人たちである。

 逆に心配なのが宝塚で、守るべきものが大きいのだとは理解してあげられるが、それでも時代に逆行している感が否めない。

 ここも、一応形だけではあるが「悟り系スピリチュアル」の枠組みである。だが、日々書いているのは格調低いありふれた話である。マンガやアニメの話も多い。

 悟り系の深い話や、宇宙の仕組み的なあっと驚くような事実を知りたいという人は右へ回れ、です。私は、なんでもかんでも見たいものは見て、興味のあるものは遠慮なく見ます。それがおおよそ悟り人らしくない、というならその方は悟りが分かってるんではなく、イメージが刷り込まれ固定概念にとらわれているだけの人です。

 きっとこれからも変わらず世間のニュースをはじめとした「ゆるい話」を綴っていくことになると思うので、どうか肩の力を抜いて、この変態紳士倶楽部(?)をお楽しみください。 

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