困ったことが起きるのはよいこと
ある経済学者がネット記事で「労働力不足はよいことだ」という趣旨のことを述べていた。自分さえよければいいような経営者は困るだろうが、労働者や大きくは日本経済全体にとっては、そのことを是正しようとする動きがプラスに働くからだ。
賃金を挙げないと労働力が確保できなくなるし、待遇が悪ければ他社へ移ってしまわれるのでホワイト化せざるを得ない。賃上げを満足にできない非効率な企業が縮小・淘汰されていくことで日本全体の平均値としての生産性が向上もする。
通常、問題など起きないですめば起きないほうがいいと考える。
ただ、それは——
●その状況に致命的な問題が一切なく、現状維持あるいはよりよいほうへ発展していく以外の方向性しかない(高確率でそうなると見込まれる)場合のみである。
完璧な状況なら問題など起きる必要ないが、「問題のある」状況において平和が保たれてしまうと、その問題のある状況が保存され継続されることになる。そのような平和にあまり意味はない。
ならば、問題が起きる方がいい。それによってその問題な点が刺激され、なんらかの対策行為も生まれてくるのだから。
皆さんは、今生きている日本において、日々耳に入ってくる情報を聞いてどう思うだろう。「日本ワンダホー。もう完璧! アガっていく以外ないよね」と思う人がいたら、びっくりである。
問題だらけでしょう。政治も経済も教育も。現代社会のカースト制度で上位を占める者だけが、この社会が保存され長く続くことを切望している。悪いことに、その少数がかなりの力を持っているため、その思い通りになっている。そしてそれに立ち向かおうにも、すでに確立されている状況が彼らにたいへん「有利」すぎるので、弱者に立ち向かおうという気にすらさせない。はなからあきらめるしかなく、よほどの英傑でも誕生しないと革命はまず起きない。
ゆえに、筆者は覚者らしからぬことを言ってみる。
●この世界で問題が起きまくるのはよいことだ。
皆さんは基本怠け者であるので、問題がない(あるけどないと思えてしまう)とまず動こうとしない。問題が起きるからこそ、何とかしないと先に進まないので重い腰を上げる。そうして対処する過程で学ぶこともあり、その機会にしか味わえない感情体験もある。
成功哲学の問題点は、この世界を肯定している点である。その社会を固定的に維持する前提で話が進むからだ。その枠内の椅子取りゲームで他者に勝つ方法を教えているだけなので、結局成功者が出ても世界全体としては良くはならない。
だから、問題が起きる方がいいのだ。もちろん、その結果人類が問題の重みに負け潰れる恐れはゼロではない。でもそのリスクを負ってでも、賭けに出てでも今の社会構造から脱皮していく必要が人類にはある。
いくら正しいとはいえ、成功の正当な報酬が与えられる点で理にかなっている(働かざる者食うべからず)とはいえ、落ち着いて考えてもおかしいいでしょう。何十億、いや国家予算並みのお金を持っている人間と今食べる者がなく明日首をくくろうか、その方が楽かもと考える人間が、おなじ世界で繋がった空気を吸っている。
なぜ皆落ちついていられるのか。
もちろん、今の日本人たちが置かれた状況を考えれば、日々の生活で手いっぱいでそれ以上のことを考えることは難しいし、要求するものでもないだろう。だから、皆さんの自発的な行為に期待できないからこそ、問題というものが起きてくれて皆が対処したり改善を考えなくてはいけなくなることが歓迎されるのだ。
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