ワクワクするのが大事くらい悟空でも言える

 久しぶりにしょうもないスピリチュアル記事を見た。



●【宇宙人が教える】ほしいものを手に入れたいなら、「ワクワク」することをしよう!



 なんかアイシスとかいう名前の宇宙人(地球人風の名前なんだね! しかも音声で発音可能なんだ?)が、この記者(本からの抜粋らしいので著者)と会話をする形式になっているのだが、読んでみると大したことは書いていない。



●宇宙人ならではの、我々が驚くようなことは何も言っていない。

 スピリチュアルにあふれている「引き寄せ系」「成功哲学系」の本がだいたい言っているような当たり前のことが書かれている。



 これ、「宇宙人が教える」にしてはしょぼくない? これなら、別に地球人の誰かが教えてくれてもおかしくない。そう、話者が宇宙人でないといけない必然性が乏しいのだ。

 もちろん百歩譲って「なんでもかんでも教えるのはよくなく、ちゃんと相手の程度に合った、悪用したり害になったりするリスクの少ない範囲を教える」という宇宙人側の配慮もあるかもしれない。たとえば、小学校の先生は、知識だけで言えば大学卒業レベルのものがあるが、その全力は小学校で出さないでしょ? 子どもが学ぶ範囲が決まっていて、そこからはみ出て教えることはまずない。

 そう良心的に解釈してもいいのだが……



●人類は、幼稚園児並に見られているということか。

 もし本当なら、貴重な宇宙人と地球人との記念すべき邂逅において伝えられるメッセージが「ワクワクしなさい」だなんて!



 宇宙人が本当に「ワクワクすることが大事」と言ったなら、同時に「ワクワクしないこと」が存在するということが確定する。相手にもその概念があるのだ。

 彼らの世界は我々と同じ相対世界だということ。陰陽、つまり極と極・正反対の比較概念が存在するということ。暑いと寒い、長いと短い、ワクワクすることとしないこと。ならばその地続きで「良いことと良くないこと」という概念もあると考えて然るべきである。



●知的生命体が直面する最大の問題は、自滅である。

 多くの文明が、この問題にしてやられ消滅した。

 相対世界では、我々の世界で言う「善悪」が存在する。良いとされる方向性の勢力があれば、必ずその陰の部分「邪魔をする勢力」が不可避的に生じる。で、最後はそこを克服できず、他の星に移動できるような科学文明ができる前に技術を悪用して自滅する。

 そことの戦いを、どう乗り越えて平和な世界を築けるのか。一番教えて意味があるのは、そこのはず。アホな地球人も、なぜそこを一番聞かないのか?

 ワクワクすれば地球が救われるなんて、皆さん本気で思っているんですか?



 そんな簡単なことで済むなら、この宇宙での人生って楽勝だ。

 でも皆さん、楽勝じゃないでしょ? 単純に考えれば確かにうまくいくように思える話もあるが、現実はもっと複雑でしょ? だから、小説が売れる。無数の映画・ドラマ・漫画作品が生まれる。それらが楽しいのは「人生が複雑怪奇」だからである。

 核兵器を持つ人類は、相互確証破壊という脅威にさらされている。え、言葉の意味が分からない? いい機会だから自分で調べようね!

 もし筆者が宇宙人で、地球人に上から目線で教えられるような高度な文明(精神文明ももちろん含めた)を築けた存在なら、一番の試練だったそこをこそまず教えるね。ワクワクすっぞ、なんてお前は悟空か?



 ちなみに、この私からしたら笑える記事、アメブロのジャンル別ランキング1位なんですってよ。筆者の千倍以上の人気だね! 転じて世の大勢は、ちょうどこういうものに釣り合う精神レベルということですね。

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