ウサギとカメ
もう毎度おなじみのニュースとなってしまった(本来なってしまってはいけないのだが)、北朝鮮からのミサイル飛来のニュース。
日本国民の多くは感覚がマヒしてしまったので立ち止まって考えないが、落ち着いて事態を見つめなおしてみたらこれ深刻な話なんである。
●あなたが道を歩いていたら、どこぞの他人がいきなり銃を撃ってきた。(弓矢でもいい)幸い、それは結果としてあなたには当たることなく、けがひとつしなかった。
「ああ、何ともなかったわ」であなたはすべてを終わりにできますか?
できないでしょう? 殺人未遂で、その相手には相応のペナルティが課されて二度と同じようなことができないよう警察にも司法にも頑張ってほしいと思うでしょう。
でも、その「見送り」ができてしまっているのが、北朝鮮問題なのだ。
日本人の感覚が狂ってしまったことを実感できる実例として、あるふたつ言葉のせいで北朝鮮からのミサイルが何でもないもののように幻想化されてしまっている。
①日本の排他的経済水域(EEZ)外へ落下した
②航空機や船舶の被害は確認されていない
要するに、結果として被害はないのだからこの件はもういいだろう、と言っているのと同じ。先ほどの例えで言うと、銃を撃たれたが当たらなかったのでおとがめなしで、そもそも殺意があったことやまかり間違えば死人が出たかもしれないという部分は一切スルーするようなものだ。
感覚がズレた私たちは「ああまたか」と、朝食のトーストをかじりながら歯磨きをしながら、テレビやラジオから流れてくるニュースを聞き流す。筆者が自分でも苦笑したのが、少し前の話になるが北朝鮮からの飛翔体(ミサイル)が飛んできたことが、スマホの緊急警報みたいなことで鳴らされたことがあった。警報ゆえに大きく不快な音で、しかも明け方だか早朝だったか生活スタイルによってはかなり迷惑な時間に鳴ったので、「うるさいなぁ、ぐっすり寝かせろよ」と思ってしまった。
そう思った自分に気付いて、あとで笑いましたよ。戦争の危機の萌芽を憂慮するよりも、自分の今の生活(睡眠の質や体調)のほうがもっと大事なんだなぁ、って。大いに反省しましたよ!
もちろん、憂慮したからって一国民に何ができるというわけではないよ。でもさ、どうせ何もできないから憂慮しないでいい、って理屈もどうなんだろうと思うよ。
今朝も、NHKのニュースキャスターがクールな表情で「EEZに落下」「被害は確認されず」と告げていた。まるで、結果何も問題なかったので皆さん安心ですよ、とでも言うように。
防衛省の「関係各所に速やかな情報共有を行いました」って言葉にも笑った。えっと、情報共有しました、でその先は? まさかとは思いますが、情報を共有してそれでこの件は終わり?
「ウサギとカメ」という誰もが知っている童話があるでしょう。
ウサギは自分の足の速さに自信があって、カメになんか負けないと思っている。
用意ドンでウサギはめっちゃ走って、カメを引き離す。しばらく休憩しても余裕で勝てる、と思って寝過ごしてしまったウサギを抜いて、のろまなカメが最後に勝つ。
次の二点において日本人への洗脳が成功してしまっている。
①北朝鮮はしょせん三流国。いつまでも当たらないミサイルを撃ち続けるだけ
②なんのかのいっても、普通のアタマがあればミサイルが本当に被害を出してしまったら北朝鮮はただでは済まない。そこで起きることのリスクを考えたら、北朝鮮は今後も外したミサイルしか撃ってこないのであまり気にしなくていい
①に関して。当たり前のことだが、当てるときは唯一本番である。本番以外は当てる必要がない。性能を見るだけなんだから。99の当たらないを見て次の1も当たらないという予想は、頭のいい人のする思考ではない。99は最後の1のためにあったのだったら、どうするのか。
ここまで懲りずにミサイル実験を続ける北朝鮮は、実は非常なる努力家であると言える。日夜アンパンマン打倒のために科学を極めるバイキンマンのようなもので、いつかは本当に当ててしまえる域にまで達するだろう。その時、ウサギはカメに抜かれたことを知って、とりかえしのつかないところまで傍観してしまったことを悔いるのだろうか?
②に関して。ロシアのウクライナ侵攻という事件も私たちは目の当たりにしているはずである。プーチン大統領の頭の中がどうなっているのか、もう私たちには分かり得ない。
私たちが聞いたら眉をひそめてしまうような殺人・性犯罪の事件が世にはあふれていて、普通人は「なぜそんなことをするのだろう?」と首をかしげる。そういう、価値観や人生観が違えばあなたが信じられない行為でもできてしまうのだということを散々見てきたでしょう? オウムのサリン事件など思い出してみたらいい。
●テロリストや宗教原理主義、ある政治的思想に染まった人間は、一般人の損得感覚でなど動かない。
本当に当てちゃったらタイヘンなことになる(不利になる・自分が破滅する)のだから、まぁやらないんじゃね? というのは最低の愚かさを露呈した発想である。
相手は、こちらが「損だからやめとこ!」という次元に生きてない可能性が大。
いつ、どう事態が転ぶのか分からない状況なのだということを、心の片隅にでもいいから意識していてほしい。彼らは、やるときにはやるやつだ。
北朝鮮を「どうせカネも国力もないし、当たらないヘボミサイルを撃ち続ける三流国家」と見続けたその先に、日本に待ち受けている運命は何か?
憂慮したからって何を変えられるというわけではなくとも、一国民である私にできるのがその「憂慮する」ことなので、しっかりやるだけだ。
あとは、本当に対処する権限をもった者たちの動きに期待したいところである。少なくとも筆者は夜中に鳴ったミサイル警報を迷惑と思うのではなく「お知らせご苦労様」と言える自分でいたいかな。
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