情報との接し方
今朝のネット記事で『頑張らなくていい、を真に受けた結果』という内容のものがあった。
精神を病むようなレベルで働かすブラックな職場がまだはびこる現代社会で、真面目であるがゆえに無理をして頑張ってしまい、行き過ぎると自殺にまでなるような若者に対して発されたメッセージである。
アナ雪の「ありのままの自分」→自己肯定・SMAPのヒットソング「世界に一つだけの花」→「ナンバーワンでなくていいオンリーワン」の流れの中にあって、スピリチュアルや自己啓発の世界でも「好きなことだけする」「心地よさを選ぶ」というフレーズが大流行した。
冒頭に紹介したネット記事では、その記事の筆者が若い頃を振り返って「頑張らなくていいというメッセージを単純に受け取って実践してしまったことを後悔している。もっと頑張っておけばよかった」と述懐している。
そして、自分の失敗を通して、記事の読者に次のように訴える。
●がむしゃらに頑張ることも必要なことってあるんだと思うんですよ。そうしないと成長できないことだってありますよ。
「頑張らなくていい」というのは、それ以上頑張ったら心や体を壊すレベルにある人に対して、それで自殺とか普通の生活ができなくなるとかなるくらいだったら、頑張るのをやめたほうがいいよ、ということ。つまりはそういう人向け。
そこまででない、特に問題がない人まで「頑張らなくていい」を自分に適用したら、それをダシに手を抜く甘えた大人をこしらえるだけ。それで私は失敗した。ああ、あの時もっと頑張っておけば違ったのかも、って。
今のお話で大事なのは、この世界における生き方や人としてのあり方に関するメッセージというものは、その多くが「決してすべての人に当てはまるのではなく、ある状況下に置かれた人やある性格の傾向がある人向け」であるということだ。そこを分からないで単純に「これいいね!」と採用してしまう人が少なくない。
私たちは、ひとつ勘違いしていることがある。
●新聞やTVなど、公式なメディアに載せられるものは「万民向け」であるという無条件の前提で情報に向き合う人が多い。
世が「バッシング社会」と言われるほどに、メディアや他人の発信に賛否のコメントが無数に踊るようになったのは、前提に「すべて公に発信される情報は正しくあるべき(方法論や生き方指南なら、すべての人にとって当てはまることであるべき)」という前提があるから、読んで「これ自分にはあてはまらんぞ!」となると異常に腹が立つのだ。
その逆もあって、人間は楽をしたい生き物でもあるので、別に職場にも上司にも問題ないし勤務条件もユルいのに「頑張らなくていい」という世のメッセージをずるく受け取ってさらにだらける、という人種もいる。頑張らなくていいのはアンタじゃないんだよ! むしろあんたはもっと汗をかけよ!
筆者の書く記事や配信する動画の内容に対しても、一部の「気に入らない」人たちが汚い言葉で罵って批判してきたりする。それも、「自分が目にする情報はすべて正しくあるべきだ(ホンネは、自分が目にする情報は自分の正しさをより自覚させてくれていい気分にさせてくれるものであるべきだ)」という無意識下の前提があるからこそ怒りが湧いてくるのだ。あなたは、大作映画のキャスティングオーディションの審査員か何かか?
ゆえに、筆者は単純にこうオススメする。
●今後、何かを読んだり見たり聞いたりする時は、「すべての情報が自分の役に立つわけでも、自分の正しさを証明してくれるわけでもない」と思ったらどう?
最初から、あなたの基準で「正しくあるべき」だなんていう厳しい視点で情報にかじりつくから、要らぬイライラが生じるのだ。この情報は、自分の人生にはさして役に立たない可能性がある、と思って接するのだ。
そうしてみると、驚くほどおだやかな日常を取り戻せますよ?
冒頭に紹介したのは、本来「頑張らなくていい」というメッセージを真に受けるには向かない人がそれを「万民向け」と勘違いし取り入れて、あとあとで後悔した話だった。宗教やスピリチュアル・自己啓発の世界においても、その間違いが頻繁に起きているので、筆者は今回この話をしておきたいと思ったのである。
成功本・なんてのはかなり罪深い。書店に平積みされて置かれたら、それは「すべての人向けですよ! そこのあなたも、これを実践すれば結果が得られますよ!」というメッセージだと受け取っても仕方がない。スピリチュアルの指導者や成功本を出した著者に寄せられる苦情の多くは「あなたの言う通りやっても結果が出ない」という気持ちからのものであろう。
本書なども、正しいことが描いてあるはずだ(あなたにとって)と思えばこそ、ここはおかしい! と許せない気持ちが生じるのだろう。そんな人物の心の健康のためにも、本書は「正しいことが描いていないどころか、間違いだらけ」と思っていただくほうがいいだろう。
賢者テラは多くの人を救うメッセージを発信しているのではなく、ニッチなところを狙っている(かなり特殊な事情下にある僅かな人数でも救われればそれでいい)のだから!
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